「志恩/MUCC」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「先日駿河屋の店で、お目当ての商品を見つけたのですが、マーケットで売されている奴に比べて、店の方が2倍ぐらい高くコレナンデ商会案件だと思いました。逆やろと笑いましたね。」

 

どうもです、最近は何を血迷ったのか、駿河屋のタイムセールの規則性を調べ始めた私です。今回は2008年に発売されたMUCCの8thシングル「志恩」についてレビューしようと思います。完全に負の世界から抜け出したムックは前作「極彩」にて、様々な音楽にチャレンジして経験値を吸収し、バンドの音楽性をさらに広げることに成功しました。しかしながら、まだまだ新しい世界を求めているようで、今回も新しい音楽性に挑戦するようです。果たしてどのような世界が広がっているのでしょうか!

 

アルバム「志恩」のポイント

 

・更に自分たちの新しい姿を探し求めるムックは今回、「民族音楽」と「ダンスミュージック」にスポットライトを当てました。今作では前作のキーボードの音色の打ち込みでは無く、シーケンスやシンセといったデジタルな打ち込みを多用しています。まだ見ぬ世界に果敢に攻める姿勢を貫く姿は、音楽性の多様性を求める中期ムックの強みでもありますが、果てしない所まで行ってしまう辺りはある意味、後の問題作「カルマ」への伏線だったともいえるでしょう。

 

・今作に収録されたミヤの曲のメロは「ガーベラ」のような、特有の中毒性があるように思えます。おそらく、民族音楽と融合した結果なのでしょうが、その独特感に塗れてもなお、「ネオフォーク」の要素が溶け込んでおり、核を支える元素のような性質を顕にしました。「ネオフォーク」の核をここで知ることになるとは…意外ですね。

 

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青→シングル曲 黒→アルバム曲)

 

1.「水恩 Instrumental」(作曲:ミヤ)

 

インストゥメンタル。水がポツリポツリとこぼれ落ちる音に、割とガッツリとしたな民族音楽が流れ、更にはダンスサウンドも入り混じるというマニアックさは今作の世界観を物語ます。なんとなく、ディズニーシーに行きたくなるサウンドです。

 

2.「梟の揺り篭」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

裏にシタールもいるのでしょうか。 イントロのギターメロから完全にインディアン。しかもそのインディアン要素を自信が持つヘヴィメタル要素と融合を図ります。バックではデジタル要素も鳴り響き、世界観はかなりマニアックなのに対して、歌メロはかなり中毒性があるのですよね。マリオカートの「カラカラさばく」を思い出しました。

 

歌詞は人間が孤独感に塗れる姿を、水槽の中から梟のようになりたい今にも溺れそうは熱帯魚に例えて進行していきます。一見、あの頃を思い出しそうなダークなシチュエーションですが、熱帯魚に寄り添うリリックが中心となるため、あの頃は復活ならずです。

 

ぶっちゃけ、この曲が好きになれるかどうかで、このアルバムを好きになれるかどうかが決まると思います。なんか、無性にカレーを食いたくなってきました。今夜はゴーゴーカレーにしようかなと思います。

 

 

3.「塗り潰すなら臙脂」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ・SATOち)

 

みんな大好き音の重圧で殴りかかるヘヴィメタルナンバー。しかしながら、メロを中心に民族音楽要素が注がれており、一筋縄ではいかない奥深さを堪能できます。一方で、サビのメロには早くもエンディングを迎えたかのようなラストスパート感がありますよね。

 

タイトルの「臙脂」はえんじと読み、黒みを増した赤色を指します。歌詞は世界の不条理に飲み込まれかけた主人公が燕脂色の血を流しながらも、力を振り絞り最後の咆哮をする姿が描かれています。

 

ちなみにこの曲、日本の音楽では、かなり稀となる「ぬ」から始まるタイトルを持つ楽曲です。

 

4.「ファズ」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

18thシングル。楽曲の雰囲気を出すためか、やはり、現代の若者が思い浮かべる「夜」をテーマにした曲といえば、このような世界観だと思います。この曲をまだ聴いたことが無いよ、という方は、GLAYの「HIGH COMMUNICATIONS」や「華よ嵐よ」辺りの世界観を連想してみてください。ネオン輝く夜の大都会の景色をそのまんま音楽にしたような気がしますね。シンセがバックで彩るダンスサウンドですが、やはり要は音を"ファズ"したギターを中心にしたバンドサウンド、イントロにハーモニカを採用する辺りに早速「ネオ・フォーク」の要素も感じられます。歌詞は夜の大都会・東京を舞台にカップルの愛がさらに深まる経過を描くラブソングです。

 

5.「ゲーム」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

一見このタイトルならば、デジタル要素全開のダンスナンバーが来るかと思わせておいて、現れたのは逹瑯の1人オペラが響き渡るおどろおどろしいミディアムテンポのナンバー。一転して、サビは「ネオ・フォーク」の要素が強い世界観に変貌します。

 

歌詞はゲームという名の夜の営みを経験して、初めて出会った女性を好きになってしまう"禁忌''を犯してしまった主人公。おそらくマッチングかデリヘルで出逢ったお金を払って得た関係なのでしょう。

 

6.「フライト−Album ver.–」(作詞:達瑯・ミヤ 作曲:SATOち・ミヤ)

 

17thシングル。いきなり歌メロから一気に引き込まれるポップロックナンバー。恐らく、一番人気のSATOちの曲といえば、真っ先にこの曲が浮かべる人も多いでしょう、明るさと爽やかさの突き抜け具合は歴代のムックの楽曲の中でもトップレベルだと思います。歌詞はタイトルの空を飛ぶという表現を使った、走り出すことと笑うことが出来ることを称える応援ソングです。

 

この手のリリックには、以前だと「負」」があってそこからどう抜け出すかを提示というシチュエーションが多かったのですが、今回はそんな負はどこにも無く、シンプルに背中を押してくれる歌詞。応援歌の表現もどんどん突き抜けるようになったなぁと思う今日この頃です。

 

7.「アンジャベル」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

デジタルサウンドを織り込んだダンスサウンドに民族音楽のエキスを注ぎ込んだ、中毒性のある摩訶不思議なナンバー。一歩間違えれば、ハロウィンソングになってしまう部分を、スレスレでかわして本来の世界観を保っているのが凄い、個人的にはココが一番なポイントだと思いました。A・Bメロではいつも通りの低音で聴かせますが、サビになると一転して逹瑯のファルセットを使った限界寸前まで行く高音が響き渡ります。逹瑯の現時点における音域をフルスロットルで使っている感じがして、かなりチャレンジした楽曲なのではないでしょうか。今作の中では一番ハマりました。

 

タイトルの「アンジャベル」はカーネーションの意味。歌詞は、カーネーションの花言葉の通り、母への愛情と感謝を綴っております。

 

8.「小さな窓」(作詞:ミヤ 作曲:YUKKE)

 

今作において唯一ミヤが作曲に携わっていない曲。YUKKEのさらなる歌謡曲感を更に追求したサウンド。ストリングス隊以外にもティンパニーが轟いたとオーケストラ要素を強く感じられ、楽曲に更なる哀愁さを生み出すことに成功しました。

 

歌詞は一見、失恋ソングにも見えますが、ミヤの実話を元に制作したとのこと。となると、過去にもミヤが実話を元に生まれた楽曲のように、亡き父との思い出の可能性が高いです。誰もいない部屋は父が入院していた病室、あの日は「断絶」の日。ミヤから父への想いが綴られています。

 

9.「蝉時雨」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

タイトルとは正反対な、小雨が降る自然の景色が似合うしっとりとしたミディアムテンポのロックナンバー。本作に於ける独特な要素が織り込まれていないバンドサウンドが中心となって進行するナンバーとなりますね。歌詞に「極彩色の素晴らしき世界」が登場することから、「極彩」に収録する予定だったのか、「極彩」の延長線上の世界観なのかが気になります。大人になるにつれて忘れる宝物が多くなりつつも、それでも生きてゆけという応援歌です。最初こそ、ミヤがこの系統の歌詞を書いたことに意外性を感じられましたが(かつての「夕紅」のレビューより)、その意外性も無くなり馴染んできましたね。

 

10.「志恩」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

本作のタイトルナンバー。いきなり民族音楽要素を強く押し出し、その後はヘヴィメタルと融合させようと試みて右往左往し、中毒性があるメロもサビでは5拍子になったりと実験的且つ破茶滅茶状態、なのに1曲として完成させてしまっているのが凄いです。タイトルの「志恩」は師匠の恩とのこと、しかしながら、実は花の「シオン」の歌詞だったというかなりのギャップも印象的です。

 

11.「空忘れ」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ・SATOち)

 

今度は、武器でもある「ネオ・フォーク」を核に、ストリングスの音色が鳴り響く情熱的なダンスナンバー。ミヤとSATOちの共作ですが、サビを境にマイナーキーからメジャーキーへの転調が起こるので、誰がどこを作曲したのかが、割とはっきり分かります。

 

歌詞には失恋した主人公が描かれています。傷口が塞がらない様を「春はまだ浅い」と表現するのが素敵です。また、「2月の日曜日」という具体的な表現も登場する為、この時期になるとこの曲を連想するという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

12.「シヴァ」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

ここで、本作の独特な要素が一切なしのロックな楽曲が登場です。神をテーマにした為かストリングスやアコーディオン入り乱れ、「ネオフォーク」から咲き乱れる荘厳かつ哀愁のある世界観。しかしながらメロがポップな為、スッと曲が入ってきますね。まさに物語がラストスパートへ向かうような疾走感のあるナンバーに仕上がっています。

 

モンストやパズドラをやっている人にはお馴染みの「シヴァ」。宇宙を再創作する破壊を司る神様のことを指しております。今回は、不安になってしまうならその感情を捨てて、笑うために新しく一から作り直せという意味での「破壊」でした。背中を押してくれる応援ソングです。

 

13.「リブラ−Album ver.–」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

16thシングル。今作のフィナーレを飾るのは、ミクスチャーを超えてついに挑戦したヒップホップ要素を核に、ヘヴィな要素、そして荘厳なバロック要素まで入り乱れたムックの音楽性が入り乱れた壮大なナンバー。静かに進行するところと激しくなるところの展開のメリハリがしっかりとされているところがポイントですね。歌詞は毎日辛いことばっかりだけど、君がいるから生きていけるんだというラブソングとなっております。

 


全13曲レビューが終わりましたが、「民族音楽」と「ダンスミュージック」を織り込んだ新しい楽曲達はいかがだったでしょうか。実験的でマニアックな楽曲が多く、デジタルや民族楽器が大半の楽曲に浸食していますが、ちゃんと下地には「ネオ・フォーク」があって、MUCCの核は失われていないアルバムだなと思います。少なくとも、「鵬翼」「6」「極彩」を聴いた上での作品だと思っているので、初心者向けではありませんが、幾つかのアルバムを聴いた上でこのアルバムに辿り着き、この独特さと中毒性にハマることができたのならば、一気にMUCCの沼にハマることができるでしょう。

 

次回は9thアルバム「球体」のレビューです。今回もありがとうございました!