「極彩/ムック」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「最近ブックオフで大きな収穫をしました、これだらブックオフ巡りは止められないんですよね。最近は駿河屋なども利用してたりしてます。」

 

皆様、お疲れ様です。今回はムックの7thアルバム「極彩」をレビューしていく回でございます、よろしくお願いします。2006年に発売された今作は「鵬翼」からちょうど1年を越えた辺りでのリリース。一年のうちに3枚もアルバムをリリースして、海外公演を行い、ライブも頻繁に行うという、カツカツのスケジュールの中で制作された今作は、彼らの最新の姿がこのアルバムに投影されています。果たしてどのような世界が広がっているのでしょうか?

 

アルバム「極彩」のポイント

 

・まさに極彩色に輝く世界。ジャンル問わずにさまざまな楽曲が集合したバラエティーなアルバムです。前作「6」を持って完全に負の世界から脱した彼らが新しい姿を探しにさまざまな世界にチャレンジしている感じがします。この作風は現在のアルバムにも引き継がれているコンセプトでもありますよね。

 

・さらに今回は、バンドのこれからを歌う決意表明を込めたリリックが多いように感じます。特に前作「夕紅」を境に、本格的にミヤがポジティブな歌詞を書くようになったのが大きな変化なのではないかと思います。完全にバンド全体が陽の方向へ動き始めたように思えます。

 

それでは参りましょう。

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青→シングル曲、黒→アルバム曲)

 

1.「レイブサーカス」(作曲:ミヤ)

 

恒例のインスト。モータウンサウンドを下地にしたビートにアコギがPOPに彩ったと思いきや、一転してサウンドが一気にヘヴィに。しかしながら、その後もモータウンサウンドの線路の上でメロディラインを奏でるギターも楽しそうなナンバー。ここまでウキウキするインストも珍しいですね。音色的に、ベースはアップライトベースを使っているのでしょうか。

 

2.「極彩」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

ヘヴィなタイトルナンバー。ゴリッゴリのギターとベースのリフのユニゾンにしっかり共存するドラムが生み出す迫力に圧倒されます。しかしながら、一転して静かになったり変拍子になったりと展開に展開を重ねる感じがミヤっぽさ全開です。また、サビ前にはシャウトを交えたミクスチャー要素、さらにはデスボイスを使った部分も存在しており、達瑯の様々な表現力をこの曲で堪能することができますよ。歌詞は負から解き放たれて雄叫びを上げるムックの決意表明です。

 

3.「嘆きの鐘」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

いきなりデスボから始まりビクッとさせてから、ハードコアの要素を取り入れゴリッゴリと駆け抜けます。ギターソロに「ミザルー」のメロをオマージュとして取り入れているのがポイントですね。Aメロとか少しでも噛んだら置いて行かれそうな複雑なメロを完璧にこなす達瑯のボーカルも見逃せません。歌詞は足下に転がり落ちた、初期ムックの抜け殻へ向かってのメッセージなのではと推測しています。

 

4.「謳声(ウタゴエ)」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ・SATOち)

 

14thシングル。初めてシングルに採用されたSATOちの楽曲ですね。完全にバンド全体が明るい方向性が定まった事により、初期ムック時代から明るい曲を得意としてきたSATOちの楽曲がさらに煌めいたということなのか、今回はSATOちの楽曲が3曲収録されております。ヘヴィな楽曲が続いた混沌から光が差し込むという瞬間、明るくエネルギッシュなポップロックナンバーです。

 

「優しい歌が聞こえてこないなら歌えばいい、そうだろ?」「生きる価値もないような世界を愛してる」といった部分から判るように、これからのムックの決意表明のように思える歌詞が特徴です。まるで、自分が育ってきた負の世界を抜けた先にある光り輝く世界を見て、瞳を輝かせる少年のような初々しさがいいですね。

 

5.「月光」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

この曲は「初期ムックとの決別」が歌われており、中期ムックの歴史に於いての重要な楽曲の1曲に入ると思っています。メロやコードから漂う切なさを醸しつつも、音色面で全力で疾走するハードさも兼ね備えた不思議なナンバー。深い森林の中で神秘の湖に映る月の光を浴びる幻想的な光景が浮かびます。サビのファルセットを多様する高音中心の表現も新しいですね。

 

「悲しい歌達、忘れなくちゃいけねぇ事だってあるだろ、生きれるのなら、涙流せるのなら」

 

初期ムックの世界観の中核を担っていたミヤからこの歌詞が出てくる日が来るなんて、きっとデビューした直後の彼らに言っても信じてくれないでしょうね。確実に新しい道を歩み始めた証でもあります。

 

6.「パノラマ」(作詞:達瑯 作曲:SATOち・ミヤ)

 

ギターの輝きに包まれながらゆったりと進行する3拍子のアコースティック・バラード。これまた新しい引き出し口の楽曲ですが、夜空に舞い上がるような「優しさ」はやはり、SATOちだから生み出せるものだと思います。シンセサイザーのシーケンスと途中のコーラスパッドが良い味出してる。

 

歌詞は先輩バンド「ラヴィアンローズ」の解散を受け、現在の自分の現在地、そしてこれからのバンドに在るべき姿を綴っています。ミヤと達瑯、それぞれが(ほぼ)同じテーマを描いた楽曲が2曲続くことによって、メッセージ性はかなり強まりますよね。

 

個人的に「ラヴィアンローズ」はcali≠gariの第3実験室に収録されたドラマ「リンチ」にて、いちじくを持ってこなかった禿をフルボッコにしてたイメージが強いですね。まだ曲は聴いたことが無いので、機会があればアルバムを聴いてみようと思います。

 

7.「ガーベラ」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

12thシングル。「ネオフォーク」を掲げ世に放たれたシングル。確かに、メロは要所要所にフォーキーさを残しながらもが現代風なロックで味付け。激しくて、でも、情熱的で超カッコいい!このテイストのメロディーラインは次回作「志恩」の楽曲の伏線にもなっている気がしました。

 

この世界観に乗るのは勿論、ロマンチックなラブソングですよね。赤いガーベラの花言葉は「燃えるようで神秘な愛」、ガーベラを片手に想いを詩に乗せて届ける主人公が映ります。男女のラブソングにも取ることが出来ますし、ムックからファンへのラブソングとも解釈できますよね。 

 

8.「リスキードライブ」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

メロディラインを無視してしゃべり倒すような表現が、かなり新しい楽曲。「コレまで得意としてたミクスチャー要素を更にこねくり回して、ムック流に進化させた感じ」という表現が1番適切でしょうか。バンドサウンドがキメを意識して殴りかかる感じも懐かしいです。歌詞は街で見かける背伸びした人間をおちょくるリリックとなっています。サビの「リスキードライブ、クレイジーベイビー」の絶叫が妙にクセになるんですよね。ライブでも盛り上がるナンバーだと思います。

 

9.「キンセンカ」(作詞:SATOち・ミヤ 作曲:SATOち)

 

そしてここでSATOち初作詞楽曲が登場。「ホリゾント」のカップリング曲の「心色」にてYUKKEも初作詞に挑戦したため、これにてメンバー全員作詞作曲を担当したことになります。シャッフルビートの歌謡ナンバーということで、クセになるメロディラインと足踏みを刻むベース、さらには裏泊を刻むギターの音色が気持ち良いですね。

 

果たしてどんな歌詞を書いたのだろうと、歌詞を見てみると、まさかの生きる意味をめぐっての大人との対立。SATOちがこの手の歌詞を書くのは、正直かなり意外でした。さらに初期ムックにおいて、このような歌詞をたくさん手掛けてきたミヤが合いの手を加たことにより、かなり毒の強いリリックが炸裂します。

 

10.「ディーオージー」(作詞:達瑯 作曲:達瑯・ミヤ)

 

パンクロックを核に、ヘヴィ要素、ポップロック要素といったさまざま要素を取り入れて展開されるナンバー。終盤への橋渡し的な役割という立ち位置という事で収録された楽曲なのかもしれませんが、沢山のジャンルを取り入れた割には、全体が3分と短めなので要素を回収しきれず、若干の中途半端感も感じてしまいます。タイトルにもなっている「DOG」は犬以外にも、魅力のない人間という意味合いもあるようです。歌詞は自分は魅力は無いということを自覚しながらも前向きに生きていこうとする人間が映ります。

 

11.「25時の憂鬱」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

同じメロディーをクセのある2つの展開が行き交うコレまた実験色が強いナンバー。1つめは、アップライトベースをメインに、そこに無機質なドラムと歪ませたギターが乱入。コレがループする状態。2つ目は、シャッフルビートに一変してジャジーなアレンジ。タイトルが25時の憂鬱という事で、眠気が頭を支配してる状態と急に眠気が覚めてはっちゃける状態を音楽で表現している感じがします。

 

歌詞は女性目線で進行。別れたのか捨てられたのか分かりませんが、恋人がいなくなってしまった女性が深夜に彼の残像を思い出して感傷に浸る姿が映ります。浸りがピークに達したのでしょう、ジャジーになる部分にはかなりの未練が感じられます。

 

12.「ホリゾント」(作詞:達瑯・ミヤ 作曲:YUKKE・ミヤ)

 

15thシングル。YUKKEお得意の歌謡曲ナンバー。哀愁さを醸し出すフルートの音色とか、バンドのフレーズとか、めっちゃサザンっぽい感じがするのですが私だけでしょうか?、江ノ島と夕焼けの景色が浮かびます。Bメロでイントロの高音フレーズを刻むベースや感想でのふわふわしたギタの粒が個人的に好きです。タイトルの「ホリゾント」とは、舞台を照らす照明のことであり、歌詞は人生を舞台に例えて、続いていく物語を歩いて行く主人公が描かれます。

 

13.「優しい歌」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

出ました、「ラララ」の部分をみんなで合唱するライブの定番曲。楽曲はのんびりとしたレゲエなサウンドに三線が乗ることによって、生まれる沖縄な世界観。歌詞は辛い事件が起こって毎日が大変だけど、それでも一緒に乗り越えていこう!と語りかける応援ソング。「悲しい歌も優しい歌もきっと形ある何かに変わっていく」って部分が現在のムックの姿を表現して、ファンに語りかけている感じがして、好きなんですよね。

 

14.「流星」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

13thシングル。アルバムのフィナーレを飾るのは幻想的な星空をイメージさせるキラキラしたキーボード達の下をバンドサウンドが全力疾走する王道V系ナンバー。かつては「赤線」などでダークなV系サウンドにはチャレンジしていたものの、この手の幻想的なV系サウンドにチャレンジするのは初めてじゃないですかね。

 

歌詞は夏の夜、線路を歩くカップルを映す甘酸っぱいシーンから始まるのですが、それは主人公の回想であった。今は2人離れ離れになってしまっているようですが、心は繋がっているとのことで、上京した主人公と故郷に残った彼女という状況の下、主人公が彼女のことを想うシチュエーションとなっております。幻想的な世界観、しかもタイトルが流星という事で、7月7日に再開するとか、歌詞にないアフターストーリーを勝手に妄想してしまいますね。

 

 

完全に負から抜け出したムックは、先行シングルの時点で、ネオフォークを掲げた「ガーベラ」、王道V系にチャレンジした「流星」、元気なポップロックの「謳声(ウタゴエ)」そして自身の歌謡性をさらに追求した「ホリゾント」という毛色の違う4枚をリリース。逹瑯作詞の元、ミヤ、YUKKE、SATOちそれぞれが手がけた楽曲をシングルカットして、メンバーの特色を活かしたムックの音楽性の広さをアピールしました。この4曲の世界観はJ−POP界では当たり前のように蔓延るサウンド達ですが、あのムックがコレらの音楽をやるという意外性、そしてしっかりモノにして、ムックと世界観して構築してしまってるのが素晴らしいですね。

 

更に、アルバムではみんなが求めているであろうヘヴィなナンバーやマニアックなナンバーまで勢揃い。中期ムックに入り自身のフォーク性、歌謡性を再構築した「鵬翼」、ヘヴィさを追求した「6」を越えて、放たれたオムニバスな今作「極彩」。2005ー2006年の1年間でこれら3枚のアルバムを立て続けにリリースしてコレが今のムックの姿なのだと、リスナーに示しました。

 

次回は「志恩」をレビューします。コレからムックはどんな進化を重ね、現在に至るのか、楽しみです!