「カップリング・ベスト/MUCC」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「アイスボックスにスミノフフレープ入れたらめっちゃ美味しかったです、今度皆様もお試しくださいね。」

 

どうもお疲れ様です、今回は2009年に発売されたMUCCのカップリング集ともいえるベストアルバム「カップリング・ベスト」をレビューする回でございます。中期ムックということで、音楽性を広げていた時期に当たるMUCCですが、他のバンドがマニアックなことに挑みまくるカップリングの世界で、MUCCはどのような音楽を制作していたのでしょうか。

 

アルバム「カップリング・ベスト」のポイント

 

・中期ムックに入った11stシングル「最終列車」から20thシングル「空と糸」までのカップリング曲を収録。さらにシングルのバージョン限定のカップリングやアルバムの初回盤のみに収録されているボーナストラックまで収録してくれてるのだから太っ腹、楽曲コレクターなら見逃すことのできないベストとなっています。曲順は時系列順ではなく、ランダムになっていて、この曲達でオリジナルアルバムを作ったらこうなるよと思わせる曲順になったいるのも特徴です。

 

・音楽性を広げてた時期ということもあって、それぞれのメンバーがやりたい事やっている印象です。ミヤ以外のメンバーも収録されています。特筆すべき点はSATOち曲の採用率。共作も含めると全体の3分の1を占めています。中期ムックに入ってからアルバムの中でも常に2、3曲採用されており、楽曲の爽やかさとメロディアスやそしてさの意表を突いた驚きの楽曲などが重宝されていたのでしょう。

 

それでは参りましょう。

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赤→カップリング曲 黒→アルバム曲)

 

1.「チェインリング」(作詞:達瑯 作曲:SATOち)

 

18thシングル「ファズ」のカップリング曲。

 

なんとこの曲、カップリング曲にも関わらずアニメ「ZOMBIE-LOAN」のOPに抜擢されるという偉業を成し遂げた楽曲となっています。MUCCのキャリアの中でも初めてのアニソンです。楽曲はSATOちらしいまっすぐなメロディラインとサビの坂道を駆け上がるようなコード進行が特徴のポップロックナンバーで、爽やかに駆け抜けていきます。

 

歌詞は自分の殻を破ってミライを造ってしまえばいい、という応援ソングに仕上がっていますが、タイトルからしてタイアップ先のアニメ「ZOMBIE-LOAN」の内容を意識して書かれたように思います。

 

「死神の目」を持つ女子高生・紀多みちるはある日、半年前の陸橋陥没事故から奇跡の生還を果たしたことで有名なクラスメイト・赤月知佳と橘思徒の首に死を予兆する黒い輪(リング)を見つける。実は、2人は一度死亡するもローンを組んでゾンビとして生還していたのだった。みちるは、自分の能力「死神の目」に目を付けた2人の借金返済のためにゾンビ狩りに協力することになる。少女と2人の少年が紡ぐ、死と再生……魂の物語(wikiより引用)

 

それを踏まえると、これから借金返済のためにゾンビ狩りを行う3人へむけて、達瑯からのメッセージなのではないかと感じますよね。

 

2.「どしゃぶりの勝者」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

14thシングル「謳声(ウタゴエ)」のカップリング曲。

 

カッコいいバンドサウンドのぶつかり合いを聴ける王道歌謡ロックナンバーで、AメロBメロでは明るくも少し曇った感じに進行して、そこから一気に広がるサビではとてつもない哀愁さを感じることができます。

 

タイトルから「どしゃぶり」という暗と「勝者」という明という対の意味合いを持つ2つのワードを並べることで生まれる摩擦、歌詞は、何かに勝利したのにもかかわらず、どこか暗い顔をするバディーへ語りかける主人公が映ります。「何か」が分からないことで、様々な考察を生み出させる面白い仕掛けが面白いです。私は、現実に耐えきれなく無った主人公がバディー(友達)と共に家出して、敵から目の届かない遙か彼方まで歩いてきたという意味での「勝者」、そしてそこで(金銭面やこれからのこと)現実的な問題がまとわりついてきて、暗い顔をしてしまう友達という考察です。

 

3.「遮断」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

アルバム「鵬翼」の通常版初回プレスのみに付いてきたボーナスCDに収録されている楽曲。アルバム「鵬翼」本編は初期ムックの「負」からは完全に抜け出せては無いものの、70%の負からは抜け出すことに成功したとレビューしましたが、このボーナストラックにて、私達はとんでもない世界観を目の当たりにします。

 

世界観は「モンスター」のように、破壊力が抑えられてしまったので、抉られる感覚はないものの、荒々しいサウンドに心が締め付けられるようなダークな世界観は完全に初期ムック、「密室系時代」を思い出させます。ボーナストラックにて姿を現した惨状は「鵬翼」で路線変更をしたことによって、本来吐き出す予定だった「歌になれなかった大量の負達の廃棄処分所」といってもいいでしょう。鵬翼本編でも歌詞の割合を観てみると、主に前向きな作詞を手掛けているのは達瑯で、ミヤは作曲の世界観は明るくなったものの、手掛けた歌詞からは闇を感じることが多かったので、ここで大爆発という感じでしょうか。

 

歌詞は、現実世界での光を遮断して、心に闇を抱えながらも作り笑顔で生きていく壊れた人類達を歌っています。現代ではSNSが発達したことによって、その闇達がSNSの世界に土砂降りのように降り注ぐという現状なんですよね。

 

4.「青い森」(作詞:ミヤ 作曲:SATOち・ミヤ)

 

19thシングル「アゲハ」の初回限定版カップリング曲。kenちゃんプロデュース。このアルバム発売時において、達瑯は「アゲハ」、ミヤは「空と糸」、YUKKEは「浮游」、そしてSATOちはこの「青い森」で、全員の楽曲がkenちゃんによってプロデュースされました。

 

「志恩」の民族音楽とSATOちのメロディアスさの融合を試みた楽曲。ラルクでも多くのアングラな楽曲を手掛けてきたkenちゃんが編曲に参加したこともあり、宗教観の漂う妖しい楽曲が生まれました。霧が掛かる深い迷いの中を彷徨う人間の映像を連想できますね。

 

歌詞は絶望のどん底に叩き落とされた主人公が、再び旅立つまでを描いた内容なのですが、宗教的な世界観や「空は青く高く君が来るのを待っている」という分も意味深に捉えることが出来、もしかしたら「天国への旅立ち」を描いているのかもしれません。となると、タイトルの青い森も自殺をする為に訪れたと考察することができます。

 

ラルクの楽曲の中で、「the silver shining」や「真実と幻想と」辺りの楽曲が好きなドエルさんは確実のハマるがっきょくとなっています。

 

5.「燈映」(作詞:ミヤ 作曲:達瑯・ミヤ)

 

16thシングル「リブラ」のカップリング曲。

 

達瑯作曲のミディアムロックナンバーで、要所要所に歌謡曲の要素も感じられます。出だしのサビの美しさから一気に聴き手を掴む感じが素晴らしく、バックの舞うようなバンドサウンドは歌詞にある「桃色の雪」を再現しているように思えます。歌詞は失恋してしまった主人公が感傷に浸る姿とそれでも容赦なく訪れる明日という内容です。

 

6.「メディアの銃声」(作詞:達瑯 作曲:SATOち)

 

12thシングル「ガーベラ」のカップリング曲。

 

SATOち作曲の歌謡フォークナンバー。どこか闇を抱えていそうなピアノの音色に導かれた先で、バンドサウンドのグルーヴ感を堪能することができます。シャッフルビートということを活かした暴走もポイントですね。

 

歌詞は不幸だらけの世の中なのに、ありえない幸せな情報ばかり流すワイドショーと、ニュース番組で報道される情報よりも自分の身に映る物が真実さというマスメディアへの皮肉。さらに、情報よりもこの目で真実を確かめろという教訓も綴られていて、今を何事も鵜呑みにしがちな私達の生態性にも一石投じる内容となっております。SNSが発達して、よりデマを流す媒体が多くなった2024年現代にも重く響くリリックです。

 

7.「コンクリート082」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

19thシングル「アゲハ」の通常版カップリング曲。

 

曰く「ベースが目立つ曲を作りたい」とのことで、スラップをまじえたYUKKEのベースリフが光るファンクナンバーです。歴代のYUKKE作曲の楽曲でもここまで、YUKKEのベースプレイを表に出すことは無かったですし、MUCCのファンクナンバーというのが、なによりも新鮮でした。間奏のハーモニカソロや、シャッフルビートを交えた展開が現れ、「ネオ・フォーク」要素を難じることが出来ます。

 

一見意味不明なタイトルに見えますが、「コンクリート」は歌詞にも出ているジャングルも合わせて都会の林立する様を現す「コンクリートジャングル」、そして「082」はエンジェルナンバーから取られている可能性が高いです。従ってURLを参考に「近いうちに報われる」という示しとなります。しかしながら、歌詞は冷酷な世界にキレ散らかす内容となっているので、実はここまで考察したタイトルとはあまり関係ないのですよね笑。

 

8.「悲しい話」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

17thシングル「フライト」のカップリング曲。

 

歪ませたベースラインから本編に突入。シリアスな歌謡ロックナンバーでございます。歌詞に出てくる「ジュリー」はフランス語で「女性」をさすとのことで、意外にも歌詞の中に人の名前が出てくるのも初なのでは無いのでは...?。それにしても表題曲のあの爽やかさの後にこのシリアスさを持ってくるとはなかなかのチャレンジャーですよね。歌詞は絵本のお伽話のジュリーに恋してしまう主人公と言う内容です。

 

9.「カナリア」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

20th「空と糸」の通常盤のみに収録されたカップリング曲。

 

シャッフルビートを活かした洒落たジャズナンバーです。音的にYUKKEはアップライトベースを使用しますね。Aメロではジャズ全開のバンドサウンドで展開していきますが、サビでは一転して、一気に幅広く展開するメロディアスなメロディライン、乗ってくる重厚なシンセパッドとシンセピアノの音色が妖艶さを生み出すのに良い仕事しています。

 

歌詞はおそらく出会い系やナンパで出逢い、一夜のみの関係を築く2人。恋愛感情を求めてきた相手側を突っぱねて、荒々しく欲求を求め続けるドSな主人公のお話です。ある意味私が思う、「ジャジーな曲=夜の街を映したエロス」というV系あるあるを体現したような楽曲で、見事にハマりました。

 

10.「白日」(作詞:ミヤ 作曲:SATOち・ミヤ)

 

12thシングル「ガーベラ」通常版のカップリング曲。先程の「メディアの銃声」は共通のカップリング曲ですが、この曲は通常版のみで、初回限定版はこの曲の代わりに「ガーベラ」のMVとメイキング映像を収録したDVDが付いてきます。

 

バンドサウンドの「キメ」を意識したハードでおどろおどろしいナンバー。展開に展開を重ねるのが特徴で、基本バンドサウンド中心ですが、要所要所に効果音が入ったり、一部の箇所では、早速、表題曲で掲げた「ネオ・フォーク」の要素を感じられる箇所を感じられるのもポイント。先程の言ったように目まぐるしく展開を重ねるので、1回聴いただけでは分からない、何回も聴くことで沼るスルメ曲です。

 

さて、今では某バンドの方を連想してしまうタイトルの「白日」ですが、「雲一つも無い太陽」、「真昼」、「身の潔白」と様々な意味を持つ言葉のようです。そしてこの曲は勿論「身の潔白」にスポットライトをあてていますね。歌詞は、何も罪を犯してないのにもかかわらず、絶望に堕とされてしまった主人公に、耐え続けてまた歩き出せと無茶を…声援を送る応援歌となっております。

 

11.「僕らの影」(作詞:達瑯 作曲:達瑯)

 

13thシングル「流星」のカップリング曲。

 

表題曲の星が煌めく素敵な夜空の先に待ち受けていたのは、荒れに狂う暁雨でした。達瑯作詞作曲の3連歌謡フォークナンバー。楽器陣による暴風雨に打たれながら、未練全開に達瑯が歌います。終盤の転調後は特に狂いながら歌う表現力が半端ないので注目してほしいですね。僅かながらに初期ムックの片鱗が見えます。

 

歌詞は未だに恋人関係であるものの、別れる寸前に冷え切った関係。しかしながら最後の感情が邪魔をして別れを切り出せなくて抱きしめてその感情を押し殺しているというもの。爽やかさ全開な表題曲の後にこの曲ぶっ込むチャレンジャーなことをしていますが、仮にもしもこの歌詞が「流星」の遠距離恋愛をするカップルのその後だとするならば、余りに辛いです。

 

12.「心色」(作詞:YUKKE 作曲:YUKKE)

 

15thシングル「ホリゾント」のカップリング曲。「ココイロ」と読みます。

 

YUKKEが初めて作詞を手掛けた楽曲。前作「球体」の「浮游」にて「YUKKE曲初のネオ・フォーク」とレビューしましたがごめんなさい、訂正させてください。「YUKKE曲初のネオ・フォーク」はこの曲です。YUKKEの持つ歌謡性に「ネオ・フォーク」の地を注ぎ込んだ生まれたお洒落なナンバー。全体的にギターのカッティングの音が気持ちよく、サビではその良さを活かしたままダンスビートに変貌するのが素敵です。

 

歌詞はタイトルの「心色」を地球に例え、夢に溢れてた人間の夢が散って無になる度に、地球全体の色が失われていく様を描いています。

 

13.「気化熱」(作詞:達瑯 作曲:SATOち)

 

20th「空と糸」の初回盤のみに収録されたカップリング曲、kenちゃんプロデュースです。

 

SATOちの爽やかさを全面に押し出した正統派ポップロックナンバー。スカの要素を織り込んだナンバーということで、裏拍を刻むギターのカッティングの音色が気持ち良いですね。また、この曲では逹瑯の高音も堪能できるのですが、終盤はほぼ高音なので少し辛そうに聴こえます。

 

歌詞はこの辛くて報われない現実に耐えきれなくなって、「半ダースの思い出」と「猫」を連れて夜逃げする主人公が描かれています。

 

14.「ガーベラ-Surf ver-」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

アルバム「極彩」の通常版初回プレスのみに付いてきたボーナスCDに収録されている楽曲。

 

12thシングル「ガーベラ」をサーフ音楽風にアレンジ。「ネオ・フォーク」とサーフ音楽の意外な融合を見ることができます。海岸通りをワンボックスカーに乗って爆走しているような気分になります。それにしても、ギターソロは、やはりミザルーのオマージュを加えていましたね。

 

15.「茜空」(作詞:ミヤ 作曲:SATOち)

 

11thシングル「最終列車」のカップリング曲。

 

このアルバムの中では1番古い楽曲であり、初期ムックからの病み上がり直後であることから、バンドサウンドは荒々しいものの、SATOちらしい爽やさを押し出した夕焼け空を思わせる少し切ないミディアムロックナンバー。歌詞は、どんなに辛いことがあっても、立ち上がり生きてゆけという応援歌となっており、後の「夕紅」を予感させるような世界観です。(奇しくも、作詞作曲者は同じ。)

 

16.「最終列車~70's Ver~」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

アルバム「鵬翼」の通常版初回プレスのみに付いてきたボーナスCDに収録されている楽曲。

 

11thシングル「最終列車」をフォークソング風にアレンジ。アコースティックギターとボーカルのみで進行していき、終盤にはストリングスが入り乱れた重苦しい哀愁のある世界観。爽やかさで誤魔化した原曲の闇の部分が公になったような気がしますね。

 

17.「G.M.C」(作詞:ミヤ 作曲:ミヤ)

 

アルバム「極彩」の通常版初回プレスのみに付いてきたボーナスCDに収録されている楽曲。

 

スラッシュメタル要素が強いナンバーで荒々しさと激しさで重圧で殴りかかってきます。逹瑯も終始デスボイス気味で歌っており、歌詞も自主規制して公開してない時点でもはや暴れてもらうことが目的の暴れ曲。世界観も崩壊スレスレまで来ている感じがしますね笑。「遮断」然りなぜ、かなりの力作がボーナストラック送りにされているのか、コレガワカラナイ。

 

18.「Libra fast.Candle」(作詞:達瑯 作曲:ミヤ)

 

今作の為に収録。16thシングル「リブラ」の元ラヴィアンローズのメンバーによって結成されたユニットCandleによるリミックス。「志恩」の中では数少ないデジタルでも無く民族音楽でも無いナンバーでしたが、このリミックスにて、大量にデジタル要素を加えられます。ヒップホップだからかデジタル要素は割とハマる物の、サビ以降に本格的に現れるオーケストラと融合させるとなるとクセツヨ要素が互いの良さを打ち消し合ってしまい、あまり相性は良くないかなと気づかされるリミックスでした。

 

 

全18曲、とことん堪能しました。中期ムックにおけるMUCCのカップリング曲は、表題曲とのバランスを保っている感じがしましたね。当時は音楽性を広げていたこともあり、表題曲に実験的な楽曲を切ることも多々ありました。表題曲が少しマニアックな場合はカップリング曲をお得意の歌謡さを押し出したナンバーや、王道ロックナンバーをカップリングにして、表題曲が王道のナンバーならばカップリングにマニアックな楽曲にするという全体のメリハリを抑えている感じがしました。

 

次回は「カップリング・ワースト」のレビュー、初期ムックの再来です。今回もありがとうございました!