「DAHLIA/X JAPAN」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「バイト終わり、テンションMAXの宵、しかしながら明日もバイトなので、今夜はお酒飲めません…残念!」

 

皆様、お疲れ様です。今回はX JAPANのアルバム「DAHLIA」のレビューをしていこうと思います。1996年に発売された今作、1曲のみで構成された「ART OF LIFE」を除けば、前作から約5年ぶりのアルバムとなりました。そんな今作はX JAPANの中期~解散までの活動を総括した作品といってもいいでしょう。果たしてどのような世界観が広がっているのでしょうか?

 

アルバム「DAHLIA」のポイント

 

・今回はボーカルの加工やシンセサイザー、ギターのエフェクターを活かした変幻自在な音色の嵐といったデジタルな要素が要所要所に見られるのが特徴です。これまでのX JAPANのは無かった新たな特徴ですね。特に今作のバラードを除く全ての楽曲にこの要素が組み込まれている印象で、進化を感じます。

 

・しかしながら、X JAPANの中期~解散までの活動を総括と書いたようにシングル曲が7曲を占めているのも特徴。これは様々な制作事情が重なった故のシングルカットということで、このアルバムを制作するのに沢山の苦難があったことが分かります。

 

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(青→シングル曲 黒→アルバム曲)

 

1.「DAHLIA」(作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI)

 

13rdシングルであり、今作のアルバムタイトル。「♩=173」というメタルとパンクを両立できるギリギリのテンポに設定したということで、ハードで絶妙なナンバーとなっています。とはいえ、ギターリフは完全にメタルなのでメタルの血が強く感じる印象です。今回は楽曲の至る所にノイズを使った音色が取り入れられ、実験的な要所も見受けられます。そのノイズはTOSHIのヴォーカルにも乗っかり、いつもとは違う荒々しさを堪能できるのですが、あまりの掛け具合にちょっとやり過ぎかな...と思ってしまったりもします。

 

今回もバックではストリングスが絡み合い、楽曲に映る儚さを際立たせています。間奏もHIDEちゃんのギターがバックで泣き叫ぶ中、HEATHの刻むベースリフを聴けるゾーンや息の合ったツインギターソロのゾーンも展開。終盤のラスサビは荒々しいサウンドが一旦止み、シンセピアノとハープを中心とした天に誘うようなゾーンが唐突に現れナレーションが入り、再び荒々しく弾けるといった怒濤の展開ラッシュ。YOSHIKI様ワールド全開の楽曲です。

 

2.「SCARS」(作詞:HIDE 作曲:HIDE)

 

禍禍しさが復活したHIDEちゃんのダークロックナンバー。この楽曲の主役はHEATHであり、繊細且つ複雑なフレーズ刻むベースが中心となって楽曲が展開していきます。尚、こちらのラインはHEATHが1番得意としてるフレーズを採用したという話を聞いたことがあります。メンバーの個性を引き出し方が素晴らしいです。ギターもベースと一緒にユニゾンしたり、エフェクターを使って変幻自在に舞ったりして楽曲を彩っていますね。TOSHIのボーカルもエフェクターが乗っているのですが、この世界観のおかげでしょう、見事に禍禍しさが現れかなり新鮮に感じます。中盤のスクリームも美しいですね。ライブではHIDEちゃんとTOSHIの掛け合いも定番ですよね。この曲の初お披露目となった1994年のライブ、「青い夜」の「SCARS ON MELODY」ではAメロが1オクターブ低く、かなり珍しいTOSHIの低音を堪能することが出来るので貴重です。

 

この歌詞、様々な憶測を呼んでおり、今も尚、ネット上で議論される光景をたまに目にします。自分自身もやはり「TAIJIへ向けてのメッセージ」という説を強く感じてしまうのですよね。

 

「ふさがる傷跡に4文字のTATTOO」(実際のTAIJIのTATTOO)や、「君の壊れたメロディ2度と交わらず」(HIDEちゃんとTAIJIと共作した楽曲もいくつかあるし、X時代はTAIJIが作曲した数々の楽曲を演奏してきました。また、3rdalbum「Jealousy」にTAIJIが作曲を担当した喉を壊したTOSHIをモデルとした「Voiceless Screaming」という曲が収録されています。)といった部分が特に思い当たります。また、冒頭の「口びるからこぼれ落ちる錆びた爪のかけら」は1994年に発売された10thシングル「Rusty Nail」のことであり、X JAPANの新時代の幕開けとなった曲ですか、「舌に残る その苦味が 傷をこじ開ける」と続くので、何か思ったことがあるのかもしれませんね。

 

これらを纏めるとTAIJIの脱退に対する想いとX JAPANの現状をHIDEの視点で描いたって感じがします。勿論これも予想であり、暗喩が多い難解なHIDEちゃんワールド全開の歌詞である為、解読は困難を極めます。結局真相はHIDEちゃんのみぞ知る…ということですね。このアルバム発売後に16thシングルとしてシングルカットされます。2024年現在、1曲目をYOSHIKI様以外の楽曲が飾った最初で最後のシングルとなっております。

 

3. 「Longing 〜跡切れたmelody〜」(作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI)

 

11stシングル。ストリングスとピアノを中心としたバラードで眠りの街に誘うような幻想的な楽曲となっております。この曲はメロディラインに映る儚さが光っていますよね。今回もツインギターソロや終盤の転調を交えてクライマックス観が漂うラスサビといった様々なゾーンが存在しており、展開に展開を重ねるYOSHIKI様の世界観が広がります。歌詞は「永遠の片想い」にも「死別」にもどちらにも取れるリリックが特徴です。この曲をTOSHIのヴォーカルとオーケストラのみで新たに生み出された儚さ全開の「Longing~切望の夜~」が12ndシングルとして発表されていますが、今作への収録は見送られたようです。

 

4.「Rusty Nail」(作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI)

 

「どれだけ~涙を流せば~」でお馴染みの10thシングル。「ART OF LIFE」がX JAPANの始まりの曲ならば、この曲はX JAPANの新時代を告げる楽曲だと思います。YOSHIKI様が小室哲哉様と組んだプロジェクト「V2」の経験を活かした(と思われる)シンセサイザーを使った印象的なイントロはかなり有名で、このイントロで一気にボルテージが上がり、瞬く速度でスパーキングする威力を持っています。個人的に、この曲がアルバム1曲目でも良かったと思います。

 

5thシングル「WEEKEND」の第2章として制作されたと言うことなのですが、2番の頭に「序章に終わった週末の傷忘れて」という歌詞が出てくることからも前作の存在を裏付けてますね。結局死にきれなかった主人公が、彼女のことを忘れられず葛藤の中もがき続ける様が映されています。

 

楽曲面はかなりJ-POP寄りのロックナンバーとなっておりますが、ストリングスによって楽曲にのし掛かる儚さやピアノが入りバラードっぽくなる箇所といった展開に展開を重ねるYOSHIKI様ワールドは健在です。実際にYOSHIKI様もかなりポップに寄りすぎてしまったことに対して心配していたとのことですが、現在に至るまでこの楽曲も色褪せない代表曲の1曲として彩っています。(実際にこの曲が出された1994年当時はどうだったのか、気になります。)

 

5.「White Poem I(作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI)

 

シングルの山を越えて、遂に現れたアルバム曲は浮遊感のあるシンセが印象的な打ち込み中心の異色なナンバー。ここまで打ち込み中心に展開していくのはかなり新しい気がします。インストっぽく感じますが、TOSHIの歌声とYOSHIKI様のピアノが入ってくるゾーンが来たときにはどこか安心感を覚えますね。歌詞は自分に深く芽生えるダークサイドな感情をポエム風に表現。そこには全く”ホワイト”さはありませんが、逆に全て無くなってしまった状態であるという暗喩で”ホワイト”というワードで表現したのでしょうか?。どうやらソロプロジェクトの為に制作していた楽曲らしく未公開ではあるものの「White PoemⅡ」も存在するとのことです。

 

今作のアルバム曲は全て打ち込み中心の楽曲がですが、YOSHIKI様の楽曲は神々しい楽曲で、後に登場するHEATH&PATA、そしてHIDEちゃんの楽曲はダークな楽曲となっており、正反対の世界観が映っているのが印象的ですね。

 

6.「CRUCIFY MY LOVE(作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI)

 

15thシングル。ボーカルとピアノとストリングス隊のみで構成されたクラシック全開のナンバー。全パートが儚さ全開の世界を表現しており、胸が締め付けられる不思議な楽曲ですね。TOSHIが語りかけるような優しい歌い方をしているのが印象的です。ラブソングのように見えますが、この曲で表現されている愛は、平和の方の「愛」だと思っております。これまでの楽曲には無かった新たな歌詞のシチュエーション、YOSHIKI様が全人類に捧げる願いという感じもしますね。

 

7.「Tears」(作詞:白鳥瞳・YOSHIKI 作曲:YOSHIKI)

 

9thシングル。涙腺崩壊必至の10分にも及ぶバラードでファンの中でもかなり人気のある楽曲となっております。ピアノとストリングスが中心となって、バンドサウンドが彩りを添える展開となっており、最初は暗黒の空間の中にいる状態から楽曲が進むにつれて光が差し込み、転調を交えて光の空間に成るという感動的なストーリーを音楽で再現してしまいました。白鳥瞳の芸術的な感情表現とYOSHIKI様自身の亡くなった父へ対する想いが交差して生まれた歌詞となっており、2番以降は英語を交えたリリックを和訳すると、白鳥瞳の芸術観がさらに浮かび上がります。

 

元々この曲は1992年に紅白の企画枠で出場者全員で披露された「Tears〜大地を濡らして〜」が原型となっており、それをX JAPANとしてアレンジしてリリースした形になります。どうやら、この曲をレコーディングしたいといったのはHIDEちゃんで、実際にこの曲はHIDEちゃんが1番愛した曲とも言われています。それにしても、2回目の紅白出場で楽曲制作を求められたYOSHIKI様。当時のX JAPANの人気が凄かったかがわかります。尚1993年はX JAPANの「Tears」で紅白に出場し、白組のトップバッターを飾りました。

 

8.「WRIGGLE」(作曲:HEATH・PATA)

 

僅か1分25秒の次曲へ繋がるインスト曲。2024年現在、HEATHは唯一の作曲、PATAはX時代を含めて唯ニの作曲を担当したということで、かなりレアな2人の共作曲となっております。デジタルサウンドを中心に展開されていくのですが、HEATHがプログラミングしたということで、生ベースとシンセベースが絡み合う複雑なサウンドが中心となっております。また、要所要所に鳴り響くPATAのギターに技を入れ込む職人技にも注目です。

 

9.「DRAIN」(作詞:HIDE・TOSHI 作曲:HIDE)

 

HIDEが作曲をして、歌詞をTOSHIと共作。ドラム含め打ち込みを使ったデジタルサウンドを中心としてエフェクターを使ったギターが絡み合うといった音色面ではhideソロのイメージが強い楽曲ですが、TOSHIのボーカルが乗ることで見事にX JAPANの曲に化けてしまったミステリアスな魅力を持つ楽曲です。

 

生きる気力をドレインされて、絶望に堕ちていく中で悶絶する主人公が映る歌詞をミックスボイスの部分を中心に泣き叫ぶように歌っていて、改めて、TOSHIの感情表現が際立っております。2曲目のSCARSのHEATHのベースといい、今回のHIDE曲はメンバーの特徴をとことん活かした楽曲を提供しているイメージがありますね。

 

後にhideのソロプロジェクト「zilch」にて「WHAT'S UP MR.JONES?」としてセルフカバーされましたがhideがヴォーカルを務めたこちらは見事にzilch」の楽曲として化けてしまっています。ここも、この曲に映るミステリアスな要素のひとつです。

 

10.「Forever Love  (Acoustic Version)」(作詞:YOSHIKI 作曲:YOSHIKI)

 

14thシングルのアコースティックバージョン。12/8拍子のバラードで、ストリングスとTOSHIのボーカルのみで構成されたアレンジで収録、このアレンジはこのアルバムでしか聴けません。この曲もX JAPANを代表する楽曲ですよね。勿論、自分はこの曲のバンドサウンドで構成された所謂シングルバージョンが好きなのですが、この「DAHLIA」を順番に聴いてきて、最後にこのバージョンの「Forever Love」が流れてきたときは、シングルで聴いた「儚く・美しく・感動的」な感情では無く、本当に「終わり」を迎えてしまうような全く別の感情に支配されました。歴代のアルバムのように壮大に締めるのでは無く、このようにしっとりと終わらせるのもアリなのかな...、もしかしたらこのような終わり方もひとつのアルバムの終わらせ方なのかな...と思った今日この頃です。

 

 

日本の音楽界に様々な伝説を生み出しまくった伝説のバンドが残した最後のアルバム。どの楽曲からも壮大な世界観が見え、魂を削って制作に取りかかった楽曲達、どの曲も大人気な理由が分かりました。だからこそ、これだけ制作時間が掛かってしまったことも...

 

このアルバムを最後にX JAPANは解散してしまいます。自身の音楽性を極めに極めた伝説のバンドの1つの到達点こそが此処だったのです。そして時は流れ2007年にX JAPANは再結成します。あの日の到達点からまた彼らはまた、新たな伝説を残しに動き始めたのでした。

 

シングルコレクションのような状態になってしまっているのは事実で、しかもどのシングルも人気が高いということも相まって後に発売されたファン投票で収録曲を決めたベストアルバム「FAN'S SELECTION」ではこのアルバムから7曲、全てのシングルが採用されてしまいました。そのためこのアルバムの影はさらに薄くなってしまったのですが、アルバム曲の3曲はこれまでとは違ったデジタルな要素を取り入れた楽曲であるため、新たな音楽性を堪能できる楽曲達です。これは他のファンの方も言っていますが、これから「X JAPAN」を聴こうとしている方はベストアルバムから入るよりもオリジナルアルバムから入った方が良いかもしれませんね。

 

今回もありがとうございました。次回もよろしくお願いします。