「ANOTHER STORY /Janne Da Arc」レビュー | brilliant-memoriesのブログ

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ドエルさんでもあり、V系好きのギャ男でもあり、60〜00年代の音楽好きでもある私がお送りするこのブログ。アルバムレビューや自作曲の発表、日常、ブログなどいろんなことをします!

「9月も半ばですね。日が落ちてくるのも大分早くなってきました。しかし、全然気温が下がりませんね。夜なのに熱いです。」皆様、お疲れ様です。今回は2003年に発売されたJanne Da Arcの4thアルバム「ANOTHER STORY」のレビュー回となります。今作は「Dearly」以来となるコンセプトアルバムとなっていて、主人公が小学生の頃に書いた「少女が5つの音箱を取り戻す」というファンタジー小説を元にストーリーが展開されたます。なので、シャッフル再生はNGです。また、このアルバムの終盤の差し掛かる頃、みんなが大好きな「あの曲」も登場しますよ!

 

「ANOTHER STORY」のポイント

 

 

・今作をレビューするにあったって、もう一つアイテムを用意しました。それはyasuが書き下ろした今作の小説でございます。高校時代からずっと読んでいる大切な小説です。今作はコンセプトアルバムになっていて、楽曲の歌詞にもこの小説が深く関わってきます。なので、今回はレビュー際に小説のこの部分だろうな...という解説や考察を紫文字で書こうと思っています。ネタバレが結構出てくると思うので気を付けてください。

 

・今作にはゲストとして「君を乗せて」などでおなじみ、井上あずみさんが参加しています。要所要所で美しい歌声が響きわたっています。

 

 

 

 

 

 

 

もう一度言います。ネタバレ注意です。

 

 

 

 

 

 

 

それでは、いざ、ストーリーの中へ。

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(シングル→青 アルバム曲→黒)

 

1.「1/5の音箱」

 

”神から授かれた「愛」「夢」「知恵」「勇気」「希望」、5つの音が入った音箱。しかし愚かな人間達は禁断の6つ目の「負の感情」がぎゅっと詰まった音箱も開けてしまい、GAIAの世界が一気に闇へ堕ちてしまいました。怒った神は5つの音箱を各地へ隠してしまいました。”

 

ストーリーへ入り込む準備はできましたか?準備万端だよという方も、まだ準備が出来てないよという方も、両目を閉じてこのインストゥルメンタルを聴きましょう。暗黒の世界で悲しく鳴り響くオルゴールの旋律が奏でる”愛の歌の破片”こそが、今作の重要なカギを握ります。そして、どこかから風に乗って素敵な歌声も聞こえてきます。

 

2.「in the story」(作詞:yasu 作曲:you)

 

スリリングな音色を奏でるストリングスの音色が”物語へ入り込んだ主人公の目の前に広がる暗黒の世界”を表現したような荒々しさを感じさせる楽曲です。you曲ならではの16分のフレーズが多い複雑なフレーズ、ギターとベースのユニゾンも楽しめる繊細なバンドサウンド、ストーリーの映す世界観をオルガンが明確にしているのもポイントです。中盤で唐突にマリンバの音色が登場するのも面白いですね。この曲の歌詞はまさに”このストーリーのあらすじ”となっています。暗黒の世界に1人入り込んだ少女を-救世主メシア-として称え、この世界を変えて欲しい...という石像化した楽典集団Arcの願いも込められているように思います。

 

3.「マリアの爪痕」(作詞:yasu 作曲:yasu)

 

13thシングル。少女が廃墟になったガイアミュージアムの前で「神だった老人」のお話を聞くシーンが映されています。久しぶりのV系ハードロックナンバー。イントロのアコギの不安にさせるようなコードのアルペジオから高速ギターソロまで飛び出すギターが目立つ楽曲となっています。キーボードのダークな世界観を演出するような音色にも注目です。歌詞は普通に観ると、一夜だけの女性とホテルで過ごし朝になると彼女は夜を過ごしたという爪痕を残していなくなっていた、というシチュエーションです。真の内容は、神だった老人が歌っている”愛の歌”のこと。老人も神だった頃彼女に歌っていた歌であったが、旋律が消えた今の世界では歌が消えてしまった。しかし、老人はその1フレーズだけを忘れなかった。音楽の破片が老人の躰に残っているのは人間になる前に彼女に付けてもらった深い愛の爪痕があったかたである。それは五つの旋律が消えてもなお...という内容となっていました。内容を知っているか知らないかでここまで世界観が変わるって凄いですよね。

 

4.「OASIS」(作詞:yasu・ka-yu 作曲:you)

 

この曲と次の曲「赤い月」は、物語が前後します。闇の国の実態を映したハードロックナンバーですが、この曲にもyouらしい繊細なフレーズや展開が多く登場します。Aメロはギターとベースのユニゾンで押し通し、Bメロを通過、怪しい掛け声と共に一気に広がるキャッチーなサビというストーリー的な展開が美しいです。間奏はまず、メロディアスなベースソロから始まり、その後ドラムソロの裏では、これまで以上に繊細な6連符を滑る高速ソロを堪能することが出来ます。そこからさらにギターソロです。畳みかけ方がカッコいいですね。歌詞はyasuとka-yuの共作、社会の歯車として機械のように働く主人公が夢を見ていた少年時代を思い出して帰りたくなるという内容となっていますが、闇の魔王に奴隷のようにこき使われ夢も見られない人間の中に混ざり作業していく環境の中で、重ねられた主人公の社会人時代の葛藤が歌詞になっていますね。

 

5.「赤い月」(作詞:yasu 作曲:yasu)

 

老人に見守られ船に乗って旅立つ少女を赤い月が見守るシーンを映したこだまする高音コーラスが印象的なナンバー。どこか静かな感じがさらに物語のシーンをさらに強く映し出しますよね。サビにはチューブラーベルまで登場して、さらに雲行きが怪しくなります。静かでもどこか力強さを感じるのも、主人公の心強さを知っているからなのかもしれませんね。歌詞は「知恵」というワードが出てくるように、まさに先程のシーンについて歌われていて、試練に立ち向かう主人公を映しています。

 

6.「奪われた知恵」

 

前作の余韻と共に、船が進む硫酸の海の音が聴こえる16秒のインストゥルメンタル。

 

7.「suicide note」(作詞:yasu 作曲:kiyo)

 

物語には「臆病な左側」と「好奇心旺盛な右側」といった半分の生物がそれぞれ登場しますが、この曲はその「左側の生物のテーマ」とみていいでしょう。kiyo作曲、キャッチーなサビが印象的で、オルガンの音色が生み出す緊張感のあるフレーズが良い味だしてます。「バスターズ」のような正義感にも駆られますよね。歌詞はいじめを受けている主人公の視点の悲痛な叫びがこだまする重い内容になっています。先生にも見て見ぬ振りされて、いじめはさらにエスカレートするというかなりリアルなシチュエーションも飛び出します。もしかしたら、左側の生物がこのような性格になってしまったのも、このような背景があったのかもしれませんね。

 

8.「What's up!」(作詞:yasu・ka-yu 作曲:ka-yu)

 

おなじみ、メンバー紹介ソングでございます。ka-yuのポップロックナンバーも久しぶりな感じがしますね。ハンドクラップが鳴り響き、全体的にストレートな展開が特徴です。シンセサイザーの音色も相性バッチリですね。歌詞は頭にも紹介したように1番はメンバー紹介ソングでございます。「ペットにはでちゅまちゅ言葉(ka-yu)」とか「切れると意外と怖い(kiyo)」といったメンバーの意外な一面が綴られていてニヤリとしてしまいますね。2番以降はファンに向けてのメッセージとなっています。物語中にも主人公とかつてクラスメイトだった5人が登場しています。主人公を「ファン」に置き換えた6人の深い絆が映されたのがこの楽曲なのではないのかな...と思います。

 

9.「PARADISE」(作詞:kiyo 作曲:kiyo)

 

kiyo作詞・作曲のポップロックナンバー。まさに全楽器のフレーズが複雑ながらも、FREEDOMを感じさせる、楽しい楽曲となっています。シンセサイザーがシンセサイザーらしい役割をしていて、サビは大胆にシーケンス・フレーズを刻み、デジタルに振り切っているのが新鮮でした。歌詞は疲弊した人間達へ向かって「パラダイス」へ現実逃避を促す内容となっています。しかし、このようなサイケな世界観なので、ずっといると現実世界へ帰れなくなりそうなのが、また面白いですよね。物語で例えると、6個目の音箱を開けるという禁忌を犯す前の平和だったGAIAの地を現したような感じもしますね。

 

10.「explosion」(作詞:yasu 作曲:you)

 

要所要所に掛け声ポイントがあって、バンドとファンが一体化できるハードロックナンバー。ツーバスが響き渡る”炎の国”の世界観を映し出した迫力のあるサウンドとなっています。タッピングや高速ソロをかますギター、16分を刻みまくるベースといった繊細なフレーズも多いです。Bメロは英語ですが、叫ぶとスカッとするので、覚えて一緒に叫びましょう。歌詞は”怒り”を炎に置き換え展開されていきます。物語部分では”勇気の音箱”を手に入れる為に”炎の国”を征くシーンですね。

 

11.「霞みゆく空背にして」(作詞:yasu 作曲:yasu)

 

14thシングル。朝を迎えようと霞む空をバックに”火の国”から次の目的地である”氷の国”へ向かう少女ご一行を映したシーンですね。このシーンは半分の生物がひとつになるというシーンもあり、かなり胸熱な部分でございます。いきなりサビから始まりますが、このサビ、どんどんキーが上がっていくので、かなり難しいです。バンドサウンド中心のロックナンバーですが、バックで鳴るシンセストリングスの音色やオルガンが曲のポップさと少女達の勇ましさを表現していますね。歌詞は物語の中では先程書いたシーンですが、普通に読むと失恋した主人公が前を向いて歩いて行くというシチュエーションにも見えます。

 

12.「ヴァンパイア」(作詞:yasu 作曲:yasu)

 

 

お待たせしました。上の写真のyasuが観客にヴァンパイアする映像が伝説となり、アルバム曲ながらジャンヌの楽曲の中でもトップクラスの知名度に上り詰めた楽曲の登場です。ヘドバンしたくなる、疾走感に身を任せたハードロックナンバー。印象的なリフから入り、サビではメロディアスで切ないメロディが響き渡るのがたまらない。ジェットコースターのように高速で駆け抜ける繊細なギターソロも注目ポイントです。歌詞は彼に依存している女の子のお話で、サビのとにかく愛を求める様はまさに飼い犬そのもの。悲しいことに、普段はほったらかしにして、飢えたときにだけ彼女に愛を求める彼からクズ特有のアメとムチに魅了されてますね。物語の中で例えると愛を信じられなくなってしまった”氷の女王”の心が歌われています。ここで序盤の伏線が回収されますが、この背景も考えると、この”ひたすら求める”歌詞も別のニュアンスで捉えることができて、更に切ない歌詞に生まれ変わります。また近年では歌詞の内容にシビれた地雷系やホス狂を中心としたZ世代がこの曲を聴いているらしく(ちな、これ書いてる私もZ世代)、この曲をラスソンに歌うホストもいるとのこと。去年の「Z世代が選ぶ!ハロウィンソング TOP10」というランキングにもランクインを果たすなど、今でも、根強いファンが多い名曲です。

 

 

13.「少女と氷の女王」

 

少女と氷の女王が愛の歌の破片を歌う50秒のインストゥルメンタル。少女の活躍により愛を覆った氷が溶けた”氷の女王”の美しい歌声が響き渡ります。少女が笑いながら歌っているのも氷の女王が目覚めてくれて嬉しかったからなのでしょう。外の氷もどんどん溶けていき、物語を知っているともの凄く感動するシーンに生まれ変わります。

 

14.「rasen」(作詞:yasu 作曲:yasu)

 

鏡の国にひとりで向かった少女を映した美しいバラード。このメロディアスなメロディライン、沼りますよ。ラルクの「花葬」を思い出すのはゴシックな世界観と鳴り響くトライアングルの影響でしょうか。バックで男女の会話が挟まれていたり、呼応するように3部コーラスも現れたりと、まさにミュージカルのワンシーンのような世界観が映された楽曲です。歌詞は”少女”が鏡に映った本を読んでいる”主人公”自身に生きることについて語りかける重要なシーン。現実世界の主人公は周りは炎に包まれており、タイムリミットまで時間がありません。戸惑う主人公が足に落ちて蓋がひらいた鏡の箱を覗くとそこには...

 

15.「Rainy~愛の調べ~」(作詞:yasu 作曲:yasu)

 

クラスメイトだった5人の主人公へ向けた温かいメッセージが書かれた手紙が入っていました。ここで彼女はみんなに愛されていたことを知るのです。燃えさかる炎の中、タイムリミットが迫る主人公が歌います。ここで全ての伏線が回収されます。破片のみしか思い出せなかった、愛の歌の8分にも渡る全貌。こんなに壮大な世界が眠っていたなんて...涙腺崩壊です。中盤にはストリングスの息吹が舞う"壮大な愛”を表現した楽曲です。今作発売後に15thとしてシングルカットされましたが、かつての4thシングル「Heaven's Plece」同様「総集編」といわんばかりに様々な箇所が削られて5分に纏められてしまっています。また、1番の歌詞の変更もされていますね。しかし、物語から独立したことで、居なくなってしまった彼女へ向けて歌う、まだ胸にある壮大な愛の歌という別の解釈ができるのもシングル版ならではのポイントですね。このような歌詞の内容から、「ヴァンパイア」同様、この曲をラスソンで歌うホストもいると聞きます。こんなキーが高く大変な曲を歌いこなせてしまうの凄いですよね。

 

16.「Shining ray」(作詞:yasu 作曲:yasu)

 

12thシングル。おなじみ、「ONE PIECE」のエンディングテーマ。(←復活おめでとう!)前作11thシングル「feel the wind」と雰囲気が似ているのは置いておいて、疾走感のあるポップロックナンバーになっています。まさに麦わらの一味がふっと浮かぶような冒険心を貰える歌詞になっていますね。物語はエピローグの”かつてのクラスメイトに助けられた主人公が新たな人生を歩む姿”を応援するような感じがして感動してしまいます。最後にこの曲の存在は必要だと思いました。この曲があるかないかで、結末も大分変わってしまいます。この曲順、改めて「聴き手側の視点」で計算されいるのも素晴らしいと思いました。

 

 

いかがだったでしょうか。アルバムと小説のリンクする部分、知っているか知らないかで1曲の解釈が大幅に変わるのがまた魅力的でした。「ANOTHER STORY」は高校時代から読んでいた小説なので、熱を入れすぎてしまいました。一般的にシングル曲と「ヴァンパイア」のみが注目されがちですが、「What's up!」、「PARADISE」、「rasen」など、オモシロイ曲や振り切った曲、沼りそうな曲もたくさんあるので、改めて全曲を聴いてみて欲しいですね。時期が合えば、この小説読書感想文で書きたかったです。いや、諦めるのはまだ早いです。この記事を読んでいる学生の皆さん、読書感想文にこの小説はいかがでしょうか!そういえば、小説の中に挟まっていたトレカも可愛かったです。

 

 

さて、次回はカップリング曲がぎゅっと詰まったベストアルバム「ANOTHER SINGLES」のレビューとなります。よろしくお願いします。今回もありがとうございました!