ラインの着信音が鳴った。
「百合子が無痛分娩の助成金として10万出すらしいよ
」
「今ごろ気付いたんかい!何ヶ月も前のことだよ」
「でも百合子に感謝する。将来絶対無痛を選択する
」
「あたしも~
」
「いやいや、今のウチらにはまったく関係ないっしょ!それより、それは少子化対策?そんなことしても子供は増えない
」
「ウチらの給料上げてくれー」
「初任給30万って、どこの話?」
「茂、もっと庶民のこと考えてくれー。結婚もできないわ
」
都知事を百合子、総理を茂、と呼ぶライングループは、雅実にとって最高の仲間だ。
「ってことで、次回のパルム、いつにしますか?」
ミホリンがまとめた。
『子リス保育園』に勤務している雅実は専門学校時代からの友人と5年経った今でも仲良しだ。しっかり者のミホリンがいつもまとめてくれる。『パルム会』とはあのアイスの『パルム』から名付けられた。専門学校の購買部で売っていたパルムを5人全員が大好きだったからだ。真冬でもロビーに、あの赤い包装を持って5人が集まる。ノリが良くて、それぞれ個性があって、でもネは優しくて、立場を考えて行動できるしっかりものの5人組だと思っている。口は悪いがおバカじゃないし、きちんと世の中のことも考える。欠点をあげるとすれば、5人が揃いも揃って酒好き!あ、これは欠点ではないか。そして、全員が保育士になり、今現在も続けている。
2~3カ月に1度、パルム会は開催される。その時の話題はもちろん、それぞれの保育園の子ども、保護者、先生の話。たまに恋話もするけど、彼氏がいるのはリリとコレエダだけ。リーダーのミホリンこと美穂、笑い上戸のリリにはちゃんと漢字の名前がついているが、難しくて、誰も覚えていない。志乃はなぜかピノと呼ばれる。コレエダは、名前が奇抜過ぎて……。一方、名字がなんだかお嬢様っぽいってことで コレエダと呼ばれている。
「仲間にコレエダって 名字の人間がいるってことが誇らしいだなんて、バカじゃない?」
雅実は自分にツッコミを入れる。
まずはいつもビールで乾杯し、あとは飲み放で勝手に好きなものをオーダーするが、2時間で空いたグラスは毎回最低でも40以上になる。
「ちょっと、今日さあ、リボンのパパが短パンにクロックスで送りに来たんだけど、あれはどう考えても出勤の格好じゃないよ。迎えも同じ。海にでも行ってきたのかって感じ。なんか朝からイラついた~」
ピノが早速保護者への不満をぶちまける。
「あぁ、そんなことでイラついてちゃ、保育士は務まらないよ。あるあるじゃん!日常だよ」
「大体から、愛に結ぶって書いて(愛結)リボンって、振り仮名ふってあってもえっ?でしょ?絶対に読めないよ」
ピノは保育園で何かあったのか、いつもならそんなことでブツブツ言わないのに。
「でさ、そのリボンって子、かわいいの?」
コレエダがすかさず聞き返す。
「それが、メッチャ可愛いのよ~」
ピノのうっとりするような顔の表情に全員が笑う。
「じゃあ、仕方ないじゃん」
居酒屋の個室が最近は増えた。以前はわずかな高級和食店に、商談のための個室が存在するほどだったのに、これは小さい子どものいるファミリー層のために増えてきているようだ。雅実たちのような者にもとってもありがたい場所だ。
不定期に続きます![]()
