先日、夫が出張だった。2泊であったため、夫は義父の3日分の食糧を用意して出かけた。飲み物やパンや冷凍弁当など。以前は私が作ったものを届けていたが、最近、夫は私に申し訳ないという気持ちがあるのか、
「オレがやるからいい」
と言い始めた。私がやろうとすると、不機嫌になる。よく理解ができない。私は内緒でちょこっとした物を届ける。
夫が出かけた翌日の夕方、義父が我が家にやってきた。
「兄ちゃんいる?(義父は自分の兄でもない息子のことをいつからかそう呼ぶようになった)」
夫は、
「3日間留守にする」
と伝えてきたはずだが、義父は忘れている。
「何かありましたか?」
私が聞くも黙っている。
「出かけていて、明日帰ってくるんです。何か困ったことあるの?明日で間に合うならば伝えますよ。私ができること?」
「食べるものがないから買いに行かなくちゃいけないんだよ。私が行くしかないか……」
そう言って義父はあらぬ方向を見た。
ここで私は
「そうで~す。自分で買ってきてくださいね~」
とは言えない。
「どんなものが足りないの?」
「今晩食べちゃうと明日の朝の食べる分がないんだよ」
以前、義父は
「太るのは良くない。○○さんは、膝を痛めてそれで歩けなくなった」
とか
「太ると病気になるから、私は1日2食だけでいいんだ」
と言っていた。スリムな体型で、夫の方がよほどお腹が出ている。今も義父はスマートな体型を維持しているが、最近はパンやおやつなどあればあるだけどんどん食べちゃう。
結果、
「じゃあ、今晩の分は私が届けますね。待っててくださいね」
そう言うと義父は帰っていった。
「ありがとう」
と言って。
簡単な弁当を作った。夕方届けると、義父はとても喜んだ。
「待ってたよ」
と言ってくれたので、私は満足だった。そして、なぜこんなものを貯めておくのかというゴミの類を捨て始めると
「あ、それはとっておいて」
となり、片付かない。まあ仕方がない。いつか義父の見ていない所でこっそり捨てるとしよう。
そして、シンクに貯まった洗い物をしようとしたら、キャラクターの付いたかわいらしいお弁当箱があった。孫の名前が書いてある。娘が何か作って持ってきたようだ。
「これ、サトミのだから、私が持って行っちゃいますね」
後から考えたら、なんでそんなこと言ったのだろう?心の奥底に
「孫のサトミが作ったんですよ。私の娘ですからね」
なんてアピールしようとする気持ちがあったのか?だまってビニール袋にでも入れて持って帰ってしまえばよかったのだ。
そこに義父が反応した。
「あ、それはA子のだと思う。A子が持ってきてくれた」
A子とは娘の名前だ。私にとって義妹にあたる。義父の頭の中では、すっかり自分の娘が手作り総菜を持ってきてくれたことになっている。
『認知症』
昨今テレビで新聞で話題に上らない日はない。親御さんが認知症になってしまったという話はよく聞く。介護がとっても大変だ。施設に入っているからと言って、安心とはいかない。足繫く通い、時にはトラブルもあり、その対処に懸命だ。認知症ってそういうものだ。私はそう思ってきた。夫のイラつきにも
「仕方ないことなんだよ」
と偉そうに言ってきた。実の父親じゃないからそんなのんきなことを言ってこられたのか?
認知症、義父だってそのせいで娘と孫が混合しちゃったと思えばいいのに、私にはそれができない。私とA子ちゃんを間違えたのならば、こんなに悶々としていなかった。
じゃ、A子ちゃんに嫉妬しているのか?A子ちゃんを妬んでいるのか?そんなはずはない。
「小学生、保育園児と小さい子を抱え、それでもおじいちゃんに何か作って持って行こう」
と思って車を運転してきた娘の気持ちが義父に届かない歯がゆさなのか。A子ちゃんが何かお料理を届けたこと、あったかな?
その昔は娘がおじいちゃんと2人でバスツアーに行ったこともあった。それらの行為がすべてA子ちゃんの行為にすり替わっちゃうことへの不満なのか。
A子ちゃんに何かしてもらおうとは思っていない。私はそれを口に出して伝えるくらいなら、自分がやってしまった方がいい。繰り返すが、義父の中で、私のことがA子ちゃんになっても何も思わない。私の名前を忘れても一向に気にならない。
認知症の義父は悪くない。
今回無関係なA子ちゃんに怒りの気持ちを持つのは筋違いだ。
娘にそれを伝えたら、
「私は何とも思ってないよ」
と笑われた。
私は、何に対してこんなにモヤッとしたり、悲しんだりしているのだろう。自分の中で整理がついているはずなのに。存在のない物、見えない物、それを掴もうとしているようだ。所詮無理な話なのにね。
