以前から気になっていた森公美子さん、このたび明治座で『天使にラブソングを』を観てきた。

 

 

 もちろん出演者のみなさん、プロの方々だから、歌も上手だし、ダンスも上手だし、表現も上手、表情も豊か。でも森公美子さんは違った。なにって、歌が違う。迫力がある。ダイナミックだ。女性ソプラノよりも私はゴスペルなどのあの豪快で厚みのある歌声に魅かれるから、胸に響き、染みわたる。

 

 私は以前、森公美子さんはあの大きな目、体形や歌声から、ハーフかと思ってグーグルさんに聞いた。が、ご両親に限って言えば、れっきとした日本人で、東北のご出身だと知った。

 

 私はその歌声は、彼女が持って生まれた才能だと思う。そうして私みたいなフツーの人間を楽しませ、喜ばせてくれる。

「これはもう神から与えられたギフトだ」

と私は思った。

 

 その日、私はとてもすっきりとしたいい気分で家路に付いた。

 

 

 そうして突如頭に浮かんだ記憶‥‥‥。高校1年生の時のことだ。英語の先生のある日の宿題が、単語を調べることだった。英文が何ページかあって、調べるべき英単語にマークがついていた。もちろん、それ以外にも自分でわからないものがあれば、それも調べなければならない。

 

 当時、部活に一生懸命だった私は、眠い目をこすりながら、課題単語だけを調べるべく英和辞典と闘っていた。そして、英単語帳に、発音記号と意味を書いていた。英文なんて、訳しちゃいない。本来ならばきちんと英文を読み、的確な日本語を選択しなければいけなかった。それが先生の意図するところだったのだ。ところが、私は、面倒で、取り敢えず辞書の1番最初に出てくる意味を書き出していた。

 

 1つの英単語でも、いくつもの意味がある。「gift」そう、その単語があった。日常的には「贈り物・プレゼント」としての意味で使われるが、もう1つ、「神や他者から与えられた才能・恩恵」という意味がある。それを当時の私は知らなかった。


 1番最初に書いてあった「贈り物」を機械的に書き込んだ。英文をしっかり読みながら進めていたら、それは内容にそぐわないと分かったはずだが。睡魔に襲われている私にそんな余裕はなかった。他にもそんなことがたくさんあったと思われる。

 

 翌日、Sくんが

「beachan、終わってたら単語帳写させて」

と言ってきた。私はなんにも考えずに渡した。

 

 次の日、

「ありがとう」

とSくんが、ノートを持ってきた。

「結構間違ってたよ」

と言って。

 

 それ要ります?人の宿題を写しておいて……あ、写してない。人のノートを借りておいて、その言葉、必要ですか?結局自分で確認して調べてるじゃん!私なんかに借りたSくんのミスだ。でも私はとてつもなく恥ずかしくて、何も言えず、ノートを受け取った。


 こちらこそ

「ありがとう」

を言わなければならなかったはずなのに、自分のバカさ加減を面と向かって指摘されて、口には出さないまでもSくんに対して、反発したくなった。ひねくれ者の私……。

 

 あ~あ、森公美子さんをこの目で見てその歌に心躍らせたのに、余計なことを思い出しちゃった。今後、森公美子さんを思うたびにセットで現れる佐藤くんの顔と言葉、と自分の汚点。どうしてくれるのよ!って、自分が悪いのよね。