nottestellata2024  ダニー・ボーイ | しょこらぁでのひとりごと

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羽生選手大好きな音楽家の独り言のメモ替わりブログです。


 nottestellataのダニー・ボーイについて。

先日の放送で、3日間全ての演技を観ることが出来た。3回とも、少しずつ違う。やはりいつも全ての演技を観たいと改めて思った。日テレ様に感謝。


まず音楽だが、これはお源さんから贈られたであろう、キース・ジャレットのイタリア公演の録音で間違いないだろう。


ジャズの最大の特徴は、即興性にあると思うが、スローのピアノソロとなると、その即興性がテンポにも及ぶ。音楽の流れが縛られることなく、たゆたい、立ち止まり、駆け上る。

私はこの曲をお源さんが挙げたとき、フィギュアスケートではこれは無理だ、と思った。

次の音がどこでくるか、わからないからだ。

フィギュアスケートの場合、次の動きのための準備が必要だと思うが、その準備が出来ない。

それは、例えるなら、この録音を流しながら、それにあわせて演奏するようなものだろう。

絶対に無理だ。


一定のテンポであれば、それは容易い。

クラシックのピアノソロもテンポは揺れるが、それは音楽を理解していればある程度予測可能だ。

けれど、ジャズのピアノソロの場合はそうはいかない。だから、無理だと思った。


それを、デイビッドと羽生選手は、あっさりと越えてきた。


一体デイビッドはどうやって振り付けたのだろう?

大雑把には振り付けられるだろうが、細部の間合いをどう扱うかは、二人が1週間くらい共にリンクで作業しないと無理なように思える。


本当に、魔法のようなプログラムだ。

創りあげる過程が全く見えない。

でも、現実に、ここにあるのだ。。。


断言するが、これは羽生選手にしか絶対に滑れないプログラムだ。

このピアノの奏でている音楽と共にある為には、準備はほぼ不可能で、一瞬で動きを完遂しなければならないからだ。

普通なら、わかりやすい所にだけ振り付けて、細部は漕いだりしてお茶を濁すしかないだろう。

しかし、デイビッドは振り付けをてんこ盛りにしていて、羽生選手はそれを、完璧に音楽に合わせている。

いや、音楽に合わせているというよりも、

音楽と彼が一体化しているのだ。


今までもそう思ってきたが、しかしそれがこのレベルになると、本当に訳が分からない。繰り返すが、本当にまるで魔法だ。


だから、私の頭はこの演技を観るとき、働くのを止める。

動いているのは、私の心だ。


このピアノの音一つ一つに、言葉にはならない感情やニュアンスがあって、私が感じているそれが彼の動きとなって目の前に出現しているのを見ている、この気持ちをどう言ったら良いのだろう?

天を仰ぐ音、沈み込む音、ひそやかな音、深い音、光る音、暖かい音、愛おしむ音、悼むような音。。


私はスケートを『観ている』のを忘れてしまう。スケートを『聴いている』のだ。


この幸福感。


それは見終わった後も、私を穏やかに包み込んでくれる。


私があなたのスケートを好きになったのは、必然だったのだと思う。

自分が音楽を心から愛しているとは言えない、そう思った時もあった。音楽は私を苦しめてもきたから。

でも、あなたのスケートを観ていると、素直に認められる。


私は音楽を愛しています。

そしてあなたのスケートを愛しています、と。


ありがとう。

それ以外に、あなたに伝えるべき言葉は無い。