RE PRAY 大楽公演ーー『阿修羅ちゃん』と『メガロヴァニア』 | しょこらぁでのひとりごと

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羽生選手大好きな音楽家の独り言のメモ替わりブログです。


 

 世間では何だか色々と騒がしい様だし、nottestellataまでま3日!ドキドキしてきた。しかし、全く空気読まずに続けます。

終わらないけど。


 次は『阿修羅ちゃん』である。

私はこれが好きすぎて、見る度幸せになって、ニマニマしてしまう。(怪しい人物)

何でこんなに好きなんだろう?と考えてみた。

(音楽面から見た阿修羅ちゃんについては、以前記事に書いたので、そちらも読んでいただけたら嬉しい)


コミカルさとかシニカルさとかは、彼の中では演技に《のらない》のではないか、と多分私はどこかで思っていたのだろう。

それをあっさり、鮮やかに裏切ってくれるのが、この『阿修羅ちゃん』なのだと思う。


私はこれを見る度、ちょっとルパン三世を思い出す。

ルパンの生きている世界は非情な世界で、しかし彼はその中で、いろんな事を笑い飛ばして生きていて、人間の本当に大切にすべき心を失わない。

ダメなやつなのにかっこいいのである。


この阿修羅ちゃんも、コミカルでシニカルで、しかもとびきりかっこいい。

特に、RE PRAYでの阿修羅ちゃんは、GIFTよりもシニカルさが増して、大人な感じがする。

しかし、シニカルさも、コミカルさも、かっこよさに落とし込むのは、至難の業だと思う。

センスの問題だからだ。

シニカルさなんか、一つ間違えばただのキザだし、コミカルさは下手をすればお笑いになってしまう。

彼はそれを、とびきりかっこよく、スタイリッシュに落とし込んで見せた。

この感性が彼の中にあること、それが、私にとってはゾクゾクするほど嬉しいのだ。

私には絶対に無いものだから。


羽生結弦という人は、本当に不器用なほど真っ直ぐな人だと思うけれど、その真っ直ぐは、ただの真っ直ぐじゃないんだな、と最近思う。(ちょっと意味不明ですね)

つまり、こうすればもっと楽に進める、その方法までちゃんとわかってて、敢えてそっちを選んでいないんだな、と感じる。

糸井さんとの対談でも、「ああ、そうか!」と思う場面があった。

この対談が本当に素晴らしくて、全部出た後に感想を是非書きたいと思っているけれど、兎に角、羽生選手は、何というかーー

膨大な思考を重ねて、一周回ってここにいる、みたいな感じなのだ。

だから、私が知らない面がきっとたくさんあるのかも知れないなと、改めて思う。

底の知れない人だ。


ここにこのプログラムを持ってきたのは、大正解だと思う。ここでは『闇』をほのかに感じさせつつ、観ている側は楽しいエネルギーを発散させられる。そしてこの先どんどん、その闇の部分が濃くなってゆき、『破滅への使者』の緊張感へと、観ている側の心理状態が一気になだれ込んでゆく

それにしても、この後メガロヴァニア、6練、そして『破滅への使者』が控えていることを思って、こんなに全開でふかしていいのか?と心配になったことを白状します。




そして、『メガロヴァニア』である。


まず冒頭のエッジの音だけの部分は、ちょっと歌舞伎の見栄を張るところを思わせる。伴奏がないと間合いが難しいと思うのだが、溜めといい、リズムといい、素晴らしい!

何もないところに、たった一人で、一つの《世界》を創り出す。


曲がスタートする。

私はこの音楽も大好きなのだが、それが持つ鋭さ、力強さ、緊迫感、運命的な感じが全て、羽生選手の演技に込められていると思う。

かっこいい主題の時の動きのキレの良さ、力強さ!


そしてここでも羽生選手は細かい動きにまで音楽を捉えている。

スピンの時の手の動きはもちろん、ちょっとしたステップにもそれは捉えられていて、それがとても魅力的だ。

それから、スピンだが、全部で5箇所、入れられている。(ツイヅルは除いて)

曲がスタートして終わるまでが約3分半、そのうちスピンをしている時間のトータルは約1分15秒。

これはちょっと信じられないくらいだ。

確か以前、スピンの最中は息が出来ない、と言っていたと思う。

そして、激しく回った後は、やはり平衡感覚が直ぐには戻らない、とも。

このプログラムでは、スピンとスピンの間がとても短い。止まるのは、サンズの瞬間移動のあの間だけ。これは、相当大変なんじゃないのだろうか。

更に、サンズの攻撃で、時間が止まるところ(?)横浜公演では、真っ暗になった。

その方がとても効果的だと思うが、あれは

羽生選手が方向感覚が全くわからなくなるのではないのだろうか?

例えほんの短い間だとしても、あれはかなり難しい事なのではないのだろうか。少し休める箇所があるとはいえ、その後、プログラムが続いてゆくことを考えると、、、、。

彼が簡単そうにやっているので、観ている側はそんなことは思わずに楽しめるけれど。


そして、このプログラムの最大の魅力は、そのスピンとプロジェクションマッピングの融合だと思う。

マッピングによって雄大さが生まれ、音楽と相まって緊張感が高まる。だから、スピンの位置は絶対『そこ』でなければならない。それがコントロール出来る自信がなければ、こんなプログラムは作れない。

他のプログラムもそうだけれども、これもまた、羽生選手ならではのプログラムなのだと、つくづく思う。


今はこれほど好きなプログラムだが、白状すると、最初埼玉で観たときは、正直あんまりピンと来なかった。

羽生選手のスピンを堪能出来るのはうれしかったのだけれど、私はどちらかというと、羽生選手のスピンは耽美系の音楽との相性がとても良いと思っているので、このプログラムの感じはちょっと戸惑った。


しかし、佐賀でもう一度観て、大好きになった。

その理由の一つは、恐らくブラッシュアップされて、このプログラムの持つ力強さや緊迫感が増し、闘いの臨場感が増したこと、そして、もう一つは、間違いなく、ゲーマーの方達からの発信によって、

サンズというキャラクター、そしてアンダーテイルというゲームのことを知り、この曲の流れる場面の意味を知れたのが大きい。

ゲーマーの方々の話を読み、アンダーテイルの内容に非常に惹かれて、自分でも色々記事を探したりした。凄いゲームだと思う。このストーリーの深さは、衝撃だった。


やはり、プログラムの背景というのは、大切なものだと改めて思う。

勿論、知らない人が観ても楽しめるように、と作り手側は工夫を凝らす。

しかし、やはり背景を知って観ると、深みが違う。

最初は背景を知らずに観て、次に少し勉強して観て、段々深めていくことが出来る。

とても素敵なことだ。

それはゲーマーの方々からの発信のお陰だし、それが自然発生した事にも、何だかとても感動した。

みなさんが如何にこのゲームを愛しているか、が自ずと伝わってきたから。


ここまで考えてきて、ハタと思い当たった。

当たり前だが、このゲームを愛しているのは、羽生選手その人も、であるのは間違いない。

彼は、自分が大好きなゲームの世界を、私たちファンにも共有させてくれたのだ。

恐らく、ほとんどが知らないであろうファンに、

このRE PRAYで。

アンダーテイル然り、FF9然り、エストポリス伝記2も。

僕の好きなものたちを、知って欲しい。

彼にそう言われた様な気がして、何だか泣けてきてしまった。



それにしても、ここまでくれば、彼がフィギュアスケートの固定観念をどんどん取っ払おうとしているのは明らかだ。

これから、私たちはどんなものを見せてもらえるのだろうか?

どこまでもついて行きたいと、改めて思う。