アスミク・グリゴリアン ソプラノ・コンサート(Aプロ)
指揮:カレン・ドゥルガリャン
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
ドヴォルザーク/歌劇「ルサルカ」
・序曲
・“月に寄せる歌”
チャイコフスキー
弦楽のためのエレジー「イワン・サマーリンの思い出」
歌劇「エフゲニー・オネーギン」
・タチアーナの手紙の場 “私は死んでも良いのです”
・ポロネーズ
歌劇「スペードの女王」
・“もうかれこれ真夜中...ああ、悲しみで疲れ切ってしまった”
ティグラニアン/歌劇「アヌッシュ」
・“かつて柳の木があった”
プッチーニ
歌劇「トゥーランドット」”氷のような姫君の心も”
歌劇「マノン・レスコー」
・“捨てられて、ひとり寂しく”
・間奏曲
歌劇「蝶々夫人」“ある晴れた日に”
「菊」
歌劇「ジャンニ・スキッキ」“わたしのお父さま”
(アンコール)
歌劇「トスカ」”歌に生き、恋に生き”
アスミク・グリゴリアン待望の再来日!
一昨年、ノット監督/東響の「サロメ」の歌唱に完全にノックアウトされ、きょうは期待度MAX。ちょっと期待高過ぎでしたが、完璧な歌唱を披露してくれて、後半のプッチーニはまさにアスミク・ワールド全開!
アスミクは5/11にMETで蝶々夫人を演じてきたその足で日本へ。この蝶々夫人はライブビューイングで6月に上映されるのが楽しみ。ついでに、ロイヤルオペラハウスで同じ蝶々夫人をやっていて(3月)、これもシネマシーズンでやはり6月に上映されるというから、本当に凄い!
まずは「ルサルカ」から”月に寄せる歌”。完璧にコントロールされた声で、弱音から高音まで実に滑らかに声をつなげていく技が素晴らしい。
チャイコフスキーは「エフゲニ・オネーギン」と「スペードの女王」。これらも完全に手中に収めているレパートリー。
「手紙の場」はもう第一声からチャイコフスキーの世界、タチヤーナの世界がパッと広がりゾクゾクっとしました。
いくぶん暗めの声質でもあるため、ロシアオペラのヒロインはアスミクにぴったり。
「スペードの女王」は絶望したリーザが運河に身を投げる直前に歌うアリア。これはやはり全曲見たい!
前半最後はアルメニアの作曲家ティグラニアンの作品。アルメニアにルーツを持つアスミクは、コンサートで必ずアルメニアの作曲家の作品を取り上げるそう。
叙情的なアリアで、途中からテンポアップするかと思いきや、ゆったりしたまま終了。美しいアリアでした。
後半はオール・プッチーニ。実に多彩な選曲。
まずは「トゥーランドット」からリューの自決前のアリア。
アスミクの声の出し方は、力強い声なのだけど力任せではなく、針のように正確な音程で柔らかく声を飛ばす感じなので、決して声が硬くなることがなく、常に柔らかさがあります。
次の「マノン・レスコー」から第4幕の切望的なアリアでも、力強いのだけど柔らかい。マノンレスコーもアスミクで全曲聴いてみたいです。
「蝶々夫人」は今週METで歌ったばかり、ロイヤルオペラでも歌っていて、今一番取り上げている作品のためか、さらに堂に入った歌いぶりで感動的でした。絶対、映画で見に行きます!
最後は「ジャンニ・スキッキ」から「わたしのお父さま」。ザルツブルク音楽祭2022年に、三部作全部のヒロインを演じたアスミクですが(BSでも放送され、素晴らしかったです)、このアンコールピース的なアリアでも、芸術性が高く見事に歌い上げていました。
アンコールは「トスカ」から「歌に生き、恋に生き」。これも素晴らしかったー。ピークへの持って生き方が自然で力任せでなく、あくまで柔らかい。そこから滑らかに弱音にもっていくあたりも超人的でした。
明後日のBプロは、前半は同じで、後半がリヒャルト・シュトラウスプロ。またサロメが聴けます!