藤原歌劇団「ラ・チェネレントラ」(ロッシーニ)2024-04-27 テアトロ・ジーリオ・ショウワ | sakagumoのブログ

sakagumoのブログ

会社員です。クラシック音楽と読書と温泉が好きです。あと万年百十の王だけど、楽しくゴルフ⛳をすることが好きです。
最近は筆不精がたたって、読む専門です。

藤原歌劇団創立90周年記念公演

音符ロッシーニ/歌劇「ラ・チェネレントラ」 
指揮:鈴木恵里奈
演出:フランチェスコ・ベッロット
アンジェリーナ:但馬由香

ドン・ラミーロ:小堀勇介

ドン・マニーフィコ:押川浩士
ダンディーニ:岡昭宏

クロリンダ:楠野麻衣

ディーズベ:米谷朋子

アリドーロ:久保田真澄
合唱:藤原歌劇団合唱部
管弦楽:テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ

 

2018年プレミエのベッロット演出による「ラ・チェネレントラ」は、ステージ上に大きな本が配置され、これが開いて次々と出演者が登場するというもので、メルヘンの世界がこの作品にピタリとはまり定評のあるプロダクション。

 

前回も見ましたが、歌手陣は一部若返り、一部再登場といった感じ。

 

前回も素晴らしかったですが、小堀さんのラミーロが段違いの実力を見せつけてくれました。

 

小堀さんはロッシーニを得意としていて、前回も軽やかな声と見事なアジリタ唱法を駆使していましたが、6年が経過しさらに安定感と貫禄、輝きが増したように感じました。

 

超絶技巧と超高音を要する第2幕でのアリア「そう、誓って彼女を見つけ出す」は完璧な歌いぶりで、オープンカーで立ち上がって、ハイトーンを長く響かせながら袖に引いていくところは、きょう一番会場が沸きに沸きました。

 

きょうは総じて歌手陣が素晴らしかったです。

 

主役の但馬さんは、相手方にこれだけ持っていかれるとツラいものがありましたが、最初から最後まで誠実な歌いぶりで舞台をよく牽引していました。

 

ただ脇園さんのチェネレントラでの輝きを知っていると、どうしても比較してしまい地味な印象はぬぐえませんでした。アジリタ唱法は軽やかとは言えず、どちらかというとまっすぐ声を出す方が持ち味が生きるように思いました。

 

ドン・マニーフィコ役の押川さんはまだ若いながらの老け役。いいバリトンの声だし、ユーモアたっぷり、第1幕での早口のアリアや、第2幕でのダンディーニとの二重唱なんかでもよく口が回り会場のウケも良かったです。

 

来年2月にファルスタッフをやるというから、これは期待できます。

 

ダンディーニ役の岡さんも中々の芝居上手。いい声だし、各メンバーとの絡みもばっちりでした。

 

このプロダクションでは、第2幕後半にクロリンダによるアリアが挿入されているのが珍しい。録音でも映像でもほとんど聞かないアリアなのですが、前回に続ききょうも挿入されていました。

 

これがびっくりするほど見事な歌唱。楠野さんは米谷さんとともに意地悪なお姉さん役を面白おかしく演じていたのですが、このアリアでの超絶技巧と、超ハイトーン(どこまで出るのかというくらいどんどん上昇)が完璧で、この一瞬は完全に主役を食ってました。

 

いずれ夜の女王やルチアとかで出てきそうな高音歌いになりそう。

 

歌手陣がよく、演出も安定しているなか、きょうの不満は指揮者。

 

鈴木さんは2年前に、同じ藤原歌劇で「フィガロの結婚」を振っていたのを聴いて、あまりのつまらなさに(若いのに凡庸な音楽作り)途中で帰ってしまった苦い経験があり、きょうは不安しかなかったのですが、やはり・・・

 

きょうも全体としてテンポは遅く(というか推進力がない)かと思うと、各場面でクライマックスに向かう五重唱、六重唱ではテンポアップ。アップするのはいいけど、歌手陣とオケにズレが発生、修正する努力もなくそのまま突進。

 

テンポアップしても、どこかオケが上滑りしていて気分が盛り上がらない。歌手の声量にかかわらず、オケの音量をコントロールしない。全体として一本調子。

 

勉強中なのかもしれませんが、本公演ではもう少し実力のある指揮者をもってきてほしかったです。

 

名匠アルベルト・ゼッダの薫陶を受けた藤原歌劇団のロッシーニ。その伝統が消えないよう努力してもらいたいです。