東京春祭:ヴァイグレ/読響「エレクトラ」2024-04-21 東京文化会館 | sakagumoのブログ

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東京・春・音楽祭2024

音符R.シュトラウス:歌劇《エレクトラ》op.58(演奏会形式)
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
エレクトラ:エレーナ・パンクラトヴァ
クリテムネストラ:藤村実穂子
クリソテミス:アリソン・オークス
エギスト:シュテファン・リューガマー
オレスト:ルネ・パーペ
第1の侍女:中島郁子
第2の侍女:小泉詠子
第3の侍女:清水華澄
第4の侍女/裾持ちの侍女:竹多倫子
第5の侍女/側仕えの侍女:木下美穂子
侍女の頭:北原瑠美
オレストの養育者/年老いた従者:加藤宏隆
若い従者:糸賀修平
管弦楽:読売日本交響楽団

 

20周年ということもあってか今年の東京春祭は凄いです。ヤノフスキ指揮の「トリスタンとイゾルデ」から昨日のムーティの「アイーダ」と圧倒的な公演を経験させてもらいましたが、昨日のきょうで「エレクトラ」も度肝を抜く公演となりました。

 

東京春祭の前身である「東京オペラの森」2005年に小澤征爾さんの指揮でこの「エレクトラ」が取り上げられましたが、素晴らしい公演だったことは記憶に残っています。

 

最近では昨年のノット監督指揮の東京交響楽団の名演が記憶に新しい。やはり超難関のエレクトラをやるとなると、相当な覚悟を持って臨むから熱演となるのでしょう。

 

それにしてもきょうの公演は凄かったです。

 

3人の極めて強力な女性歌手が必要になるわけですが、きょうの3人は全くもって申し分ありませんでした。

 

題名役のパンクラトヴァは東京春祭では2019年の「グレの歌」、さらにはその前の2017年のペトレンコ指揮バイエルン国立歌劇場、NHK音楽祭での「ワルキューレ」第1幕でのジークリンデといずれも素晴らしい歌唱を披露してくれていて、期待大だったのですが、きょうはまた一段の見事な声を聴かせてくれました。

 

全1幕1時間45分、ほぼ出ずっぱりのエレクトラ役。まず暗譜というのが驚き。きょうはオーケストラ前、指揮者の後ろの広いスペースで、簡単な芝居もまじえながらの歌唱。パンクラトヴァは熱力高く、腕を上げたり広げたり、足を踏み鳴らしたりと感情を爆発させながら演じていました。

 

かつ全体のスタミナも配慮し、コントロールを効かせていることも感じさせました。この役を熟知しているのでしょう。

 

藤村さんがクリテムネストラをやるとは意外でした。この汚れ役というか、化け物役というか、声も重く藤村さんにはちょっときついのではないかと想像していましたが、あにはからんや中々の役者ぶりを発揮していました。

 

確かに過去からのこの役のイメージからすると、ドスの効きかたとかもう一つな気もしましたが、そこを持ち前の演技力と歌唱力で見事にカバー。エレクトラとしっかり対峙していました。

 

クリソテミス役のアリソン・オークスという歌手は全く知らなかったのですが、どうしてどうしてもの凄い声の持ち主。出てくる場面は散発的なのですが、出てきたときの声の切れ込みの鋭さ、力強さは長丁場のパンクラトヴァを上回っていて、まさに短距離走の瞬発力を生かした名唱を聞かせてくれました。

 

幕切れの「オレスト!」の熱唱も見事でした。

 

男性陣は出番が少ないのですが、やはりオレスト役のベテラン、ルネ・パーペの響き渡るバスの声は健在。きょう唯一、譜面台を立て譜面を見ながらの歌唱でしたが、抜群の存在感でした。

 

リューガマーのエギスト役はさらに出番は少ないのですが、それにもかかわらずこれだけの歌手を配してくれて感謝。舞台を引き締めてくれました。

 

その他大勢の侍女陣も、日本トップクラスの女声陣を集め万全のアンサンブル。冒頭から緊張感が走りました。

 

ヴァイグレ指揮の読響がまた凄い演奏でした。身の毛もよだつような迫力に、次の「ばらの騎士」に連なるシュトラウスの芳醇なオーケストレーションを見事なまでに体現していました。

 

昨年のノット/東響も鮮烈な演奏でしたが、きょうのヴァイグレはさらに作品に対する理解が深いのか、表現力が多彩で素晴らしかったです。久しぶりに読響会員に復帰したくなりました(今期、後期からでも復帰するか。ヴォツェックもあるし)。

 

年に何回あるかの、後々語り草になるであろう公演が2日続けてあったというだけでも、まだまだ東京の音楽市場は大したものだと感じ入ってしましました。