東京・春・音楽祭2024
ヴェルディ:歌劇《アイーダ》(演奏会形式)
指揮:リッカルド・ムーティ
アイーダ:マリア・ホセ・シーリ
ラダメス:ルチアーノ・ガンチ
アモナズロ:セルバン・ヴァシレ
アムネリス:ユリア・マトーチュキナ
ランフィス:ヴィットリオ・デ・カンポ
伝令:石井基幾
巫女:中畑有美子
管弦楽:東京春祭オーケストラ
合唱:東京オペラシンガーズ
多数の歌手陣、合唱、オケ、それぞれが活躍して一つのオペラを作るわけですが、こればっかりは「ムーティのアイーダ」と言うしかない圧倒的存在感。
1974年のニュー・フィルハーモニア管とEMIでこの「アイーダ」を録音したムーティ。今でもこの作品屈指の名録音として君臨しているわけで、ぼくも愛聴盤としてこれまで繰り返し聴いてきました。
当時はモンセラ・カバリエにドミンゴ、カップチルリにギャウロフ、そしてフィオレンツァ・コッソット(←これがもの凄いアムネリス)と、ほとんどムーティより年上の名歌手揃いの中、若武者のごとく素晴らしく勢いのある音楽を聴かせてくれましたが、それから50年!の年月が流れ、こうして全出演者が年下という中、大御所マエストロとして君臨。圧巻の「アイーダ」でした。
50年前の録音のときより、ずい分とテンポはゆっくり(これも当たり前か)、重厚な音楽つくりでこのスペクタクルで豪華な作品にいかにも相応しい。
ほとんどの場面では軽くリズムをとる感じで振っていますが、いざここぞの場面での振りの大きさ、時折出る突き、腰をかがめてのコントロールなどにオケ・合唱が機敏に反応。集中力が素晴らしかったです。
第2幕凱旋の場での輝かしさは見事と言うほかなく、演奏会形式ながら豪奢なステージが見えるかのようです。
クライマックスでの豪快の伸ばしを、右から左耳のあたりに振り切って〆るムーティ得意のポーズも健在でうれしかった。
歌手陣はそれぞれよく声が出ていましたが、やや小粒でしたか(大御所ムーティの前では、誰でも霞んでしまうか…)。
題名役のシーリは、やや声量が不足するものの高音までむらなく出てそつない歌いぶり。ただ譜面にかじりつきの棒立ちで、感情移入が不足していました。
指揮者横の狭いスペースにソリスト陣が込み入って立ち並ぶ中、どうしても棒立ちにならざるを得なかったか。
アムネリス役のマトーチュキナ(昨年、仮面舞踏会でウルリカ役)は第3幕までは普通な感じで鳴りを潜めていましたが、一転主役に躍り出る第4幕第1場での歌唱は見事でした。
全体通して歌手陣が棒立ちで歌う中、この場面でのマーチュキナは思い入れたっぷり(この場面、自ずとそうなるか)。感動を誘う歌唱に激しく心打たれました。
ラダメス役のガンチもよく声が出るテナーで役に相応しい歌唱でした。
意外と会場のウケが良かったのが第1幕のみ登場の巫女役の中畑さん。清涼な歌唱が素晴らしかったです。
合唱のオペラシンガーズは先日のミサ曲に続ききょうも素晴らしい歌唱。きょうは100名強はいましたでしょうか。大いに作品を盛り立ててくれました。
ちょっと歌手陣が狭いスペース(指揮者周辺)に押し込められ窮屈そうだったのが玉に瑕ではありましたが、それでも生涯初めて「ムーティのアイーダ」を堪能することができて大満足な公演でした。
ムーティは早くもオペラアカデミーを引っ提げて9月に「アッティラ」で来日するらしい。これも楽しみ!
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240420/19/bqx02601/81/31/j/o0810108015428335944.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240420/19/bqx02601/0f/64/j/o1080081015428335960.jpg?caw=800)