リヒャルト・ワーグナー/歌劇「タンホイザー」
(パリ版準拠(一部ドレスデン版を使用)にて上演)
指揮: アクセル・コーバー
演出: キース・ウォーナー
ヘルマン 加藤宏隆
タンホイザー サイモン・オニー
ヴォルフラム 大沼徹
ヴァルター 高野二郎
エリーザベト 渡邊仁美
ヴェーヌス 林正子
合唱: 二期会合唱団
管弦楽: 読売日本交響楽団
2021年2月プレミエのキース・ウォーナー演出による「タンホイザー」。3年を経てはやくも再演。前回も素晴らしかったけど、今回も実に良かったです。
それほど奇をてらった演出ではないですが、上から円錐形のジャングルジム(スカートを広げる型みたいなやつ・・なんて言うのか)のようなものが、下がっていて時折上下する、なぞの出入り口があるくらい。タンホイザーが救済を求めローマへいく場面や、最終場面で救済を受けるところでくぐっていました。
照明の使い方が巧みで、全体は暗くても、スポットライトや縦・横からのライトで、出演者はよく見えるのが良かったです。ほか逆光で巡礼者たちをシルエットにするなど、光を上手に使っていました。
けっこうベタな演出だけど今回も感動してしまいました。
指揮のアクセル・コーバーはバイロイトでタンホイザーを指揮したこともあるワーグナーのスペシャリスト。前回2021年も当初予定されていましたが、降板となりセバスチャン・ヴァイグレが指揮となっていました。
引き続きラブコールを送っていたのですね。才気だったところや豪快さはないですが、堅実に音楽をまとめ上げる手腕はさすがで、職人的な指揮者に感じました。
歌手は何といっても題名役のサイモン・オニールが格の違いを見せつけてくれました。見事なヘンデル・テノール。全曲を歌いきるスタミナも十分で、どこかの日本人テナーも見習ってほしい。
全曲歌いきるどころか、最終盤、第3幕での「ローマ語り」にピークを持っていったようなコントロールで、渾身の「ローマ語り」を聴かせてくれました。
ヴォルフラムは、前回見事なヴォルフラムを演じた清水勇磨氏が予定されていましたが、健康上の理由で大沼徹氏に変更。あまり期待していなかったのですが、意外と良かったです。大健闘。
エリザベート役の渡邉仁美さんもベテランながら清楚な役柄をよく演じていて、第2幕登場のアリアとかはやや迫力不足ではありましたが、第3幕の孤高の表現は見事でした。
ヴェーヌスは、やはり前回素晴らしかった池田香織さんが予定されていましたが、病気療養中ということで林正子さんに変更。手堅い歌いぶりでしたが、ヴェーヌスの色気というか魅力がちょっと乏しかったです。
オケの読響は、コーバーの緻密な音楽作りによく応えていて好演。
二期会はいいプロダクションを作り上げましたので、またいい歌手、良い指揮者を呼んで再再演してもらいたいです。
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