脇園彩 メゾ・ソプラノリサイタル 2024-03-01 紀尾井ホール | sakagumoのブログ

sakagumoのブログ

会社員です。クラシック音楽と読書と温泉が好きです。あと万年百十の王だけど、楽しくゴルフ⛳をすることが好きです。
最近は筆不精がたたって、読む専門です。

脇園彩 メゾ・ソプラノリサイタル

脇園 彩(メゾ・ソプラノ)
ミケーレ・デリーア(ピアノ)
G.ロッシーニ:
・歌劇『湖上の美人』より“おお暁の光よ”
・ひどい女
・吟遊詩人
・歌劇『イングランドの女王エリザベッタ』より“私の心にどれほど喜ばしいことか”
・約束
・誘い
・歌劇『湖上の美人』より“胸の想いは満ち溢れ”
****
・歌劇『ビアンカとファッリエーロ』より“アドリアのために剣を取るなら”
・歌劇『オテッロ』より“柳の歌〜祈り”
・『老いの過ち』第9巻より “我が最期の旅のための行進曲と思い出” (ピアノソロ)
・歌劇『マホメット2世』より“神よこの危機のさなかに”
・歌劇『ビアンカとファッリエーロ』より“お前は知らぬ、どんなにひどい打撃を”

(アンコール)

・歌劇「セビリアの理髪師」より”今の歌声は”

・歌劇「イタリアのトルコ人」より”Non si dia follia maggiore”

・V.ハーバート:Art is calling for me

 

これはもう、大変な公演でした。すごい!ヤバイ!

メゾソプラノの世界的な第一人者の脇園さん、心技体すべてが充実期にあるかのような、まさに絶頂期の今を聴けました!

 

プログラムからして凄すぎる。

昨日2月29日の閏日に生まれたロッシーニ58回目の誕生日の翌日。

 

最終的にアンコールの最後の1曲を除いてオール・ロッシーニ。しかも本プロでは人気のあるブッフォ「セビリアの理髪師」も「チェネレントラ」もなく、絶賛発売中のCDからも選曲がなく、ひたすらイザベラ・コルブランのために書いたオペラ・セリアからの選曲と、そこに前後する歌曲をいくつかと。

 

きょうのオペラ、一つとしてまともに聞いたことが無かったので、事前にNMLで拾い集め予習したけど、歌詞の意味も分からずほぼぶっつけ本番。

 

前半は「湖上の美人」のヒロイン、エレナ、後半は「ビアンカとファッリエーロ」のファッリエーロのそれぞれ登場のアリアと最後のアリアを最初と最後に配し、間にエリザベッタ、デズデモーナ、アンナといったヒロインのアリアと歌曲を入れるという凝りよう。

 

最初の「湖上の美人」エレナ登場のアリアから素晴らしい声。何といっても声に芯があって強い。そしてビロードのようにふくよかで、低音から高音までむらなく完璧なアジリタを披露し、圧倒されました。

 

2曲の歌曲、これも素晴らしい歌唱で、何かのオペラ・セリアの中の1曲のような作品ですが、叙情的な「ひどい女」、ちょっとリズミカルな「吟遊詩人」とおずれも秀逸でした。

 

脇園さん、全体通して、歌曲は譜面台を置き、オペラからのアリアはすべて暗譜でした。

 

前半はやくも会場が最高潮に達したのが「イングランドの女王エリザベッタ」からのアリア。叙情的な前半のアリアから、後半は「セビリアの理髪師」のカヴァティーナに転用された旋律に載せた超絶技巧の炸裂。度肝を抜かれました。

 

ソプラノの音域まで及ぶ高音まで力強く、もうのけぞるしかありませんでした。脇園さん、この役で今年の10月にパレルモ・マッシモ劇場でデビューするらしい。行きたーい!

 

再び2つの歌曲でクールダウン。これまた熱い歌でしたのでそこまでクールダウンできませんでしたが。

 

とにかくスタミナも凄い。こうした歌手のリサイタルの際、オケならオケだけの曲、ピアノならピアノ独奏を挟んだりしてひと息入れるもんですが、間を見て袖には引くものの、すぐに出てきてまた歌うという。

 

前半最後は再び「湖上の美人」からクライマックスのアリア。ジェットコースターのような上から下までアジリタの技巧が炸裂する後半、完璧でした。

 

会場は前半だけでもの凄くヒートアップし、みなその凄さに打ちのめされてました。

 

後半は「ビアンカとファッリエーロ」からファッリエーロ登場のアリアから。脇園さんはこの役で、今夏のペーザロ、ロッシーニ・フェスティバルに出演するとのこと。これも行きたい!絶対生涯全曲見れるオペラではないと思うし。

 

後半は歌曲は挟まずオペラでどんどん攻めていきます。「オテッロ」から「柳の歌~祈り」は10分前後の大きなアリア。全編叙情的なメロディ。ここでは役へののめり込み方が凄かったです。

 

このあと、ピアノのミケーレ・デリーアの独奏。非常に珍しいロッシーニ晩年の「老いの過ち」第9巻から1曲。

 

デリーアもやはりロッシーニへの造詣が深く、ここまで見事なピアノを聴かせてくれました。何せオケパートから合唱、曲によっては重唱の相手など、すべてピアノに置き換えて弾くのだから忙しい。見事に脇園さんの歌を盛り立てていました。

 

「マホメット二世」からのアリアも終始叙情的なアリアで美しい。嵐の前の静けさか。

 

そして「ビアンカとファッリエーロ」からクライマックスのアリアは、きょうの集大成。再び超絶技巧が炸裂し、低音から高音まで目まぐるしく上昇下降する。

 

これは完璧に美しい声で、ドラマチックに歌いきるのだから、凄すぎます。

 

これだけ聴かせてくれてアンコールも3曲。

お待ちかねのロジーナのアリアは、もう自由自在。装飾も追加で入れまくり楽しませてくれました。

 

最後のナンバーは、ミュージカル系ですかね。めちゃくちゃ歌が上手いミュージカルのナンバーを聴かせてくれて、脇園さんは将来的にはミュージカルの世界にも行くのかなと感じました。楽しませるのが上手く、まさにエンターテイナーでした。

 

こうして聴くとロッシーニのオペラセリアも面白いなぁと感じました。日本では聞けそうもないので、やはりイタリアに脇園さんを追っかけるしかないのか!

 

ことしベスト、3月までの今年度でもベストと言える公演でした。