バッハ・コレギウム・ジャパン定期演奏会
J.S.バッハ/ヨハネ受難曲(第二稿)1725年
指揮:鈴木雅明
エヴァンゲリスト:吉田志門
ソプラノ:ハナ・ブラシコヴァ
アルト:久保法之
バス:クリスティアン・イムラー、加耒 徹
合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン
BCJ、ヨハネ受難曲の第2稿。
鈴木雅明さん、昨年暮れのヨーロッパツアー中に転んで、左肩の腱板断裂とのことで、きょうは左腕を吊って右手だけでの指揮ということになりました。
このあたりのことは、プログラムの巻頭言にそれは詳しく書かれていて、プレトークでも触れていました。レコーディングやらツアー続きでだいぶお疲れだったようですが、きょうは左腕以外は元気そのものな様子ではありました。
で、今回話題の第2稿。ヨハネ受難曲でよく聞かれるのは1749年の第4稿ですが、この作品の熱心な聞き手でない僕でも、第4稿との違いはけっこう歴然としたものがありました。
まず冒頭の第1曲からして全く違う曲。通常の冒頭のあの風雲急を告げるかのようなザワザワした曲は好きなのですが、第2稿はコラール合唱となっていて、冒頭というよりは、作品の途中から聴き始めた感じでした。
その後は、細かい違いはあったかもしれませんが、第4稿とさして変わらない雰囲気で曲が進みますが、あっと驚いたのが第11曲のバスのアリアと女声合唱の掛け合い。これは全く違う曲、荒れ狂う激しい曲想で、バックの通奏低音やチェンバロも緊迫感がありました。
第1部では第13曲も全く異なる音楽で、こちらはエバンゲリストの語りから、そのままテノールのアリアとして歌われます。
第1部はこの2つのアリアの挿入(差し替え)で、ヨハネとしてはずいぶんと違った印象を受けました。
1時間以上を要する第2部は、イエスの受難も佳境となり、音楽も緊迫感を増していきます。
BCJはさすが、このあたりのひっ迫感の作り上げ方が見事で、ぐいぐいと音楽に引き込まれていきました。
第2部では第19曲が異なる音楽となっていて、こちらもテノールのアリアとなってます。
そして驚くのが、通常「安からかに憩い給え、聖なる遺骸よ…」の合唱で慰めをもって終わるところ、もう1曲、コラール合唱が加えられています。
ちょっと違和感も感じましたが、最後の「アーメン」をかなりゆっくり、長く歌われたことで、全曲が終わったことが感じられました。
ソリスト陣では、エヴァンゲリストの吉田志門氏。なんでも2020年に日本人として始めてベルリン・RIAS室内合唱団に入団された方とのこと。まだけっこう若いんですかね。いく分、硬さも感じないでもなかったですが、長い全編伸びやかな声でこの重責を果たしていました。
イエス役でバスのイムラーは安定感抜群、見事なイエス役で威厳も感じられました。
ソプラノのブラシコヴァも前後半、各1曲ずつのアリアが透明感のある清涼な声で、実に素晴らしかったです。
さすがBCJ、極めて質の高いヨハネを聴かせてくれました。第2稿は普段聞いているものとだいぶ違うところはありましたが、バッハが伝えたかった本質に変わりはないように感じました。