NHK交響楽団 定期演奏会(Aシリーズ)
指揮 : 井上道義
バス : アレクセイ・ティホミーロフ
男声合唱 : オルフェイ・ドレンガル男声合唱団
ヨハン・シュトラウスII世/ポルカ「クラップフェンの森で」作品336
ショスタコーヴィチ/舞台管弦楽のための組曲 第1番 -「行進曲」「リリック・ワルツ」「小さなポルカ」「ワルツ第2番」
ショスタコーヴィチ/交響曲 第13番 変ロ短調 作品113 「バビ・ヤール」
今年いっぱいで引退されるという井上さん最後のN響との定期ということもあってか、広大なNHKホールがほぼ満員(12月の千人含めシーズン券で売れているせいもあるか)。悪くない雰囲気です。
メインの「バビ・ヤール」があまりに暗く、いまこの世に起きていることと重なってしまい聴いていて苦しい作品のせいか、前半は対照的に気の張らない楽しい選曲。
シュトラウスのポルカで井上さんは踊るような指揮ぶり。見ているだけでも楽しくなります。
ショスタコーヴィチの無体管弦楽のための組曲は、まさにショスタコの二面性のうち軽妙洒脱な部分が前面に出た作品群。
古典的で明るいマーチに、サックスのアンサンブルのノスタルジックな響きと、古き良き時代を彷彿とさせる音楽で、ロシアもこうした世界の音楽を大事にしていたことを想うと感慨深いものがあります。
後半メインの「バビ・ヤール」。ぼくは実演では2000年のアシュケナージ/N響、2006年のテミルカーノフ/サンクトペテルブルク・フィルの2回のみ。井上さんの日比谷公会堂でのショスタコ全曲演奏会のとき13番の日は行きませんでした。
合唱はスウェーデンからオルフェイ・ドレンガル男声合唱団。60名前後。弱音から強い声までダイナミックな歌いぶりで力強かったです。
そしてソリストのバス歌手ティホモーロフが見事な歌いっぷりでした。全曲立ちっぱなしで、全5楽章約60分、頻繁にソロがあるとは言え、座っても良さそうな間のところも立ち通し。(椅子も置いてなかったし)
広いNHKホールで朗々と声を響かせていて、第1楽章「バビ・ヤール」での神妙な歌いぶりから、第2楽章「ユーモア」では手振りも交えずい分と乗ってきていました。
井上さんの指揮ぶりは、前半での踊るような指揮ぶりから、さすがにこの作品では真面目な指揮ぶり。
冒頭、核となる第1楽章も良かったですが、スケルツォ的な存在でもある第2楽章の「ユーモア」が、オケのキレも素晴らしく良かったです。
第3楽章から第5楽章までは続けて演奏。曲としてもつらいものが続き、聴いていてもツラいものがありますが、井上さんははじめ、オケ・合唱・ソリストとも素晴らしい集中力でした。
満員のNHKホールで演奏される作品とも思いませんでしたが、会場はずいぶんと沸いていました。難曲でも、集中力を切らさず真剣勝負の演奏にはやはり心打たれるものがあるんですね。