藤原歌劇団公演
C.グノー作曲 歌劇「ファウスト」全5幕
指揮 阿部加奈子
演出 ダヴィデ・ガラッティーニ・ライモンディ
ファウスト ×笛田博昭⇒村上敏明
メフィストフェレス アレッシオ・カッチャマーニ
マルグリート 砂川涼子
ヴァランタン 岡 昭宏
ジベール 向野由美子
合唱:藤原歌劇団合唱部
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
題名役の笛田氏が「一身上の都合」で降板になり、代わりが村上氏と聞いた段階で、この公演に対する興味が失せていたのですが、傑作オペラにもかかわらず、日本ではほとんど上演の機会がないグノーの「ファウスト」ということで、不安な気持ちいっぱいで向かいました。
結果、懸念した通り、残念な公演となってしまいました。
ファウスト、長丁場で大変な役だけど、村上さんにはちょっとチャレンジング過ぎました。肝心のスタミナが無い。歌いだしは無難でも、曲の締めくくり(だいたい声域も高くなる)では声が出ない。
それでも、藤原の公演って、内輪の桜声援が白々しく、あきらかに不調な歌いっぷりなのにブラヴォの声援がそこかしこに。鼻白んでしまいました。
唯一外来歌手を起用したメフィストフェレス役のカッチャマーニは、なかなか押し出しの強い声で役に相応しい。ただ、あまり熱量がなく(公演に対する思い入れがあったのか)、たんたんと歌いこなす感じで、この独特の悪役の演じるにはどうかなと言った感じ。
マルグリートの砂川さんは、やはり天性のお姫様役であって、まさにピッタリの役。しかしながらマルグリートはさすがに声の負担も大きく、全体的にこじんまりとしたまとめ方になってしまい、迫るものが不足してました。
第3幕の有名な「トゥーレの王~宝石の歌」もそつなく無難にまとめた感じでした。
阿部さん指揮の東京フィルは好演。しっかりとした演奏でしたが、その熱量がどうにも歌の方と絡んでいかない。
演出は、可動式のスクリーン(巨大なタブレットみたい)が3つほど舞台上にあって、場面に即した映像が映し出されるもの。
フランス語だし、かなりの力量が必要な作品だけあって、中々いい公演にめぐり合うのは難しそう。1960~70年代、ニコライ・ゲッダ、アルフレード・クラウス、プラシド・ドミンゴ、ニコライ・ギャウロフ、ミレッラ・フレーニ、ロスアンヘレス・・・名歌手がキラ星のごとくいた時代の録音でしか楽しめない作品になっていまうのですかね。