新日本フィル定期演奏会、トパーズ1日目。
指揮:上岡 敏之
ピアノ:クレール=マリ・ル・ゲ
♪モーツァルト:交響曲第31番 ニ長調 K. 297「パリ」
♪ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
♪マニャール:交響曲第4番 嬰ハ短調
フランス繋がりのプログラム。極めて珍しい、と言うか全然知らなかったマニャールの交響曲第4番。それでも日本初演じゃないんだ。
まずはモーツァルトの31番。最初から、いかにも上岡さんらしく、冒頭、堂々たるトゥッティでやるところ、そーっと入って、ややクレッシェンドさせる入り。
第1楽章の中、何度も出てくるこのトゥッティすべてをこのやり方で。新鮮だけど、意外とすんなり受け入れられる。
主部に入ってからも、強弱緩急思うがまま自由自在で、新日本フィルをすっかり自分の楽器にしたかのよう。生気に満ちていてとても良かった。
第2楽章のアンダンテはオリジナルの長い方。終楽章は再び目まぐるしい展開。楽しかった。
ピアノのマリ・ル・ゲさんが登場してのラヴェルの協奏曲。余裕綽々の大人なラヴェル。
いずれケフェレックや、フランスじゃないけどヒューイットを継いでいくような、知的で美しいピアニストになっていきそう。
アンコールのラヴェルの「鏡」から第2曲「悲しげな鳥たち」。これがまた良かった。これぞ印象主義といった静けさと美しさ。彼女のリサイタル、聴いてみたいです。
後半、マニャールの交響曲第4番。第一次大戦で戦死する直前に書かれた作品。40分ほど。
NMLで2種類、T.ザンデルリンクとプラッソン盤で予習。プラッソンの方がこの作品に対する理解が深そう。
プログラムには、20世紀前半にフランスで、それこそドビュッシーとか、先端の音楽がもてはやされる中、古典的な純音楽に注力していたので、「時代に取り残された音楽家」とみなされていた・・と。
風雲急を告げる不気味な導入部から、最初に出てくる主題が、全編に渡り循環主題として何度も出てくるさまは、運命の動機であるかのようで、時に悪魔のように、時に天使のように聞こえる。
この作品、確かに埋もれた作品だけあって、展開が煩雑で、取っつきにくい部分はあるけど、交響曲もすでに3曲仕上げた力量はあり、まるで死を予感したかのように、持っているものをすべて投入した気迫と霊感が感じられ、心を打つ場面も多々ある。
牧歌的な鷹揚さがある中、常に不安げな雰囲気が背後にあり、例の循環主題により運命に翻弄される。だけど、基本的には前向きな気持ちが勝るから、聞いていて気持ちがいいのかな。
上岡さん指揮の演奏は、ナマでは比較のしようがないけど、基本的に柔らかいサウンドで、弱音の美しさ(超弱音にはしない)を際立たせていたように思いました。
やはり圧巻は、全楽章で一番長い、第3楽章の緩徐楽章。3つの部分に分かれ、3段階で徐々に大きな展開を見せるところは感動的で、この作品の魅力を十分に伝えてくれました。
終楽章は活発に盛り上がり、フーガを経て、コラール風の主題が優しく奏でられ、コーダで静かに余韻を残す終結部も感動的。
オケも自分も含めた聴衆も(ひょっとしたら上岡さんも)、この作品に対する理解が不足している部分もあったと思うので、まだまだ良くなる余地は多い演奏でしたが、まずは素晴らしい作品を良い形で紹介してもらいました。
何とアンコールでボワエルデューの「白衣の婦人」序曲。掲示を見るまでロッシーニかと思ってた。上岡さん/新日フィルの面目躍如たるウイットに富んだ楽しい演奏で、最後は大いに盛り上がりました。