新日本フィル定期演奏会(トパーズ)上岡敏之のマニャール 2019.3.22 すみだトリフォニーH | sakagumoのブログ

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新日本フィル定期演奏会、トパーズ1日目。

指揮:上岡 敏之 
ピアノ:クレール=マリ・ル・ゲ 
♪モーツァルト:交響曲第31番 ニ長調 K. 297「パリ」
♪ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
♪マニャール:交響曲第4番 嬰ハ短調

 

フランス繋がりのプログラム。極めて珍しい、と言うか全然知らなかったマニャールの交響曲第4番。それでも日本初演じゃないんだ。

 

まずはモーツァルトの31番。最初から、いかにも上岡さんらしく、冒頭、堂々たるトゥッティでやるところ、そーっと入って、ややクレッシェンドさせる入り。

 

第1楽章の中、何度も出てくるこのトゥッティすべてをこのやり方で。新鮮だけど、意外とすんなり受け入れられる。

 

主部に入ってからも、強弱緩急思うがまま自由自在で、新日本フィルをすっかり自分の楽器にしたかのよう。生気に満ちていてとても良かった。

 

第2楽章のアンダンテはオリジナルの長い方。終楽章は再び目まぐるしい展開。楽しかった。

 

ピアノのマリ・ル・ゲさんが登場してのラヴェルの協奏曲。余裕綽々の大人なラヴェル。

 

いずれケフェレックや、フランスじゃないけどヒューイットを継いでいくような、知的で美しいピアニストになっていきそう。

 

アンコールのラヴェルの「鏡」から第2曲「悲しげな鳥たち」。これがまた良かった。これぞ印象主義といった静けさと美しさ。彼女のリサイタル、聴いてみたいです。

 

後半、マニャールの交響曲第4番。第一次大戦で戦死する直前に書かれた作品。40分ほど。

 

NMLで2種類、T.ザンデルリンクとプラッソン盤で予習。プラッソンの方がこの作品に対する理解が深そう。

 

プログラムには、20世紀前半にフランスで、それこそドビュッシーとか、先端の音楽がもてはやされる中、古典的な純音楽に注力していたので、「時代に取り残された音楽家」とみなされていた・・と。

 

風雲急を告げる不気味な導入部から、最初に出てくる主題が、全編に渡り循環主題として何度も出てくるさまは、運命の動機であるかのようで、時に悪魔のように、時に天使のように聞こえる。

 

この作品、確かに埋もれた作品だけあって、展開が煩雑で、取っつきにくい部分はあるけど、交響曲もすでに3曲仕上げた力量はあり、まるで死を予感したかのように、持っているものをすべて投入した気迫と霊感が感じられ、心を打つ場面も多々ある。

 

牧歌的な鷹揚さがある中、常に不安げな雰囲気が背後にあり、例の循環主題により運命に翻弄される。だけど、基本的には前向きな気持ちが勝るから、聞いていて気持ちがいいのかな。

 

上岡さん指揮の演奏は、ナマでは比較のしようがないけど、基本的に柔らかいサウンドで、弱音の美しさ(超弱音にはしない)を際立たせていたように思いました。

 

やはり圧巻は、全楽章で一番長い、第3楽章の緩徐楽章。3つの部分に分かれ、3段階で徐々に大きな展開を見せるところは感動的で、この作品の魅力を十分に伝えてくれました。

 

終楽章は活発に盛り上がり、フーガを経て、コラール風の主題が優しく奏でられ、コーダで静かに余韻を残す終結部も感動的。

 

オケも自分も含めた聴衆も(ひょっとしたら上岡さんも)、この作品に対する理解が不足している部分もあったと思うので、まだまだ良くなる余地は多い演奏でしたが、まずは素晴らしい作品を良い形で紹介してもらいました。

 

何とアンコールでボワエルデューの「白衣の婦人」序曲。掲示を見るまでロッシーニかと思ってた。上岡さん/新日フィルの面目躍如たるウイットに富んだ楽しい演奏で、最後は大いに盛り上がりました。