読売日響定期演奏会
指揮:シルヴァン・カンブルラン
トーヴェ:レイチェル・ニコルズ(ソプラノ)
森鳩:クラウディア・マーンケ(メゾソプラノ)
ヴァルデマル王:ロバート・ディーン・スミス(テノール)
道化師クラウス:ユルゲン・ザッヒャー(テノール)
農夫・語り=ディートリヒ・ヘンシェル(バリトン)
合唱=新国立劇場合唱団(合唱指揮=三澤 洋史)
♪シェーンベルク:グレの歌
9年に及ぶ読響、常任指揮者カンブルラン、最後の月。大作、グレの歌。これをナマで聴くのは初めて。(それが今年3通りも聴ける!)
超大編成。オケは誰かステージから転げ落ちそうなくらいパンパン。第3部での合唱はP席へ。
デンマークの詩人・小説家のヤコブセンの手による原作。デンマークの王と家来の娘との不倫愛。第1部は連綿と情愛の場面が濃厚に続く。
でも愛の二重唱とはならず、9曲をテノールとソプラノで交互に歌う。マーラーの「大地の歌」やツェムリンスキの抒情交響曲みたい。
第1部、クライマックス、ドーヴェは嫉妬にかられた王妃に毒殺されてしまう。ここは森の鳩によるナレ死で語られる。
短い第2部は、ヴァルデマル王による神への恨みつらみ。第3部は、神への冒涜から罰を受け死者の霊となったヴァルデマルが成仏されずさまよう様が描かれる。
よく分からない展開の内、ヴァルデマルの魂はトーヴェの愛によって救済されめでたしめでたしと。
今日は第2部と第3部の間に休憩。
とにかく読響が抜群に上手かった。カンブルランの手腕によるところが大きいのだろうけど、個々にあれが上手いこれが良かったというのじゃなく、各パートパート、フレーズフエーズごとの色を絶妙に混ぜ合わせ、各場面場面で淡い色合いを出していく。
カンブルランはまるで高名な画家であるかのようで、パレットに並べたたくさんの色を上手く混ぜ合わせ、キャンバスに画を書いていくかのよう。
歌手陣もハイレベルで揃った。全編出ずっぱりで、体力的にも大変なヴァルデマル王のディーン・スミス。ピークは越えた感じで、声の張りとか輝かしさは後退していたけど、ベテランの味で、良い意味でうまくごまかしながら歌い上げていたのはさすが。
この役で大量のテキストを、彼だけ暗譜で歌っていて、この役、けっこう得意としているのかな?
トーヴェのニコルズも手中におさめた役どころといった感じで良かった。
第1部最後の10分ほどの登場だけど、森鳩のマーンケが今日のメンツの中では最高に良かった。声の響きに潤いがあって、ドスも効いていたし、トーヴェの死を語るところは抑えた歌唱が、逆に悲しみと迫力を増していました。
ヘンシェルの農夫と語りの2役も素晴らしい。大団円に向かうところの語りで、徐々に気持ちを高めていくところは堂に入ったもの。
新国の合唱も迫力満点。
圧巻の「グレの歌」でした。今後、これに続く大野/都響、ノット/東響は、比較の対象がハイレベルとなって大変だけど、期待はできますね。
※今日は演奏は素晴らしかったけど、近くにいたゴム底靴キュッキュ爺にすっかり持ってかれてしまった。なんで、あの騒音を発していて何とも思わないのか不思議でならない。というか、なんで演奏中、あんなに足を踏ん張っていたのか。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20190314/23/bqx02601/3a/ff/j/o0761108014372304251.jpg?caw=800)