「THE BEATLES’ WITHOUT THE BEATLES」(第3回~東芝以外編①) | ザ・ビートルズ完全日本盤レコード・ガイド

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THE BEATLES PERFECT JAPANESE RECORD GUIDE(BPJRG)を目指して、研究しています。

前回まで、東芝音工が発売した、ビートルズの楽曲が収録されていないビートルズ写真ジャケットのレコードを紹介しました。70年代以降は確認していませんが、写真ではなくイラスト・ジャケットなら存在しますので、またの機会に報告したいと考えています。

今回より、東芝以外のレコード会社が発売したビートルズのいないビートルズ写真ジャケットLPを紹介します。こちらは60年代から70年代まで複数枚確認しています。

なお、ビートルズの4人全員ではなく、ジョンとポールのみの写真掲載でも、ビートルズの楽曲のカバー曲を収録し、レノン=マッカートニー作ということで二人の写真を使用しているLPも取り上げます。

 

■バディ・モロー楽団「ビートルズで踊ろう」(日本コロムビア エピックPS-1166-E、発売:65年4月10日)

<ジャケット>

<帯付きジャケット>

<ビートルズの写真>

ビートルズが世界的に有名になった直後から、多くの楽団がビートルズの楽曲を演奏したレコードを発売しました。このLPもその1枚で、トロンボーン演奏者兼バンド・リーダーであるバディ・モローの楽団によるビッグ・バンド風の演奏を収録したLPです。オリジナルはUSで64年発売の「BIG BAND BEATLEMANIA」(BN-26095)で、国内発売は65年4月になります。USオリジナルは文字のみのジャケットですが、国内盤は独自のジャケットでビートルズの写真が使用されています。ジャケットをぱっと見た限り、写真ではなくて絵なんじゃないですか?と思われる方もいらっしゃると思います。中央に映画「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のスチール写真から複写した4人の絵が使用されています。その絵のことではなくて、実は背景にビートルズ・ファンの群衆の写真が印刷されていて、中央下方の少女がビートルズの写真を持っているのです。この写真の存在がこの特集の対象であるビートルズの写真使用LPになります。この写真はテレンス・スペンサーが撮影した写真で、雑誌を開いているように見えます。と言うか、スペンサーはUSライフ紙のためにUKでビートルズの写真を撮影し、撮影した写真が64年1月31日号に掲載されましたが、このLPで少女が持っている写真がライフ紙そのものであるようです。「HERE COME THOSE BEATLES」と題したページを開いています。

<ライフ紙>

収録曲はビートルズの曲だけではなく、全12曲中、デイヴ・クラーク・ファイヴ2曲、サーチャーズ1曲を収録しています。「ボニー」というタイトルの曲も演奏していますが、なぜ「マイ」を省略したのでしょうか(笑)。

<ジャケット裏曲目>

なお、このLPからカットされたシングル「プリーズ・プリーズ・ミー/抱きしめたい」(LL-603-E)も国内で発売されています。

<シングル「プリーズ・プリーズ・ミー/抱きしめたい」>

 

■ローリング・ストーンズ「サタニック・マジェスティ」(キング・レコード ロンドンNPS-2、発売:68年3月)

<初回3Dジャケット>

<再発写真ジャケット>

ビートルズのいないビートルズ写真ジャケットLPは、国内独自のデザインのジャケットが多いですが、前回紹介した「ビートルズと唄おう」のように、海外LPのオリジナル・ジャケットに写真が使用されているケースもあります。このストーンズのLPは「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」に影響されて製作されたLPですが、ジャケットにその「サージェント」内ジャケットの4人の顔写真が使用されています。これは有名な話ですね。ビートルズ・ファンよりもストーンズ・ファンのほうが詳しいですので、そちらに任せたいと思いますが、ちょっとだけ解説させてください(笑)。

国内の初回盤は、輸入盤に帯を付けた直輸入盤で発売されましたので、ジャケット表の写真は海外オリジナルと同様の3Dジャケットになっています。しかし、3Dだとビートルズの4人がどこにいるのかよく分かりません。なんとかチャーリー・ワッツの下にジョージ、ビル・・ワイマンの下にジョンがいるのは分かりましたが、ポールとリンゴは見つけるのは難しいです。直輸入盤発売から約1ヶ月後の68年4月に日本盤が発売されましたが、こちらは3Dではなく、通常の写真ジャケットになっています。3Dは直輸入盤だけで、90年頃までのレコードの時代に発売されたLPは写真ジャケットのようです(ストーンズ・ファンの方、間違っていたらすみません)。写真ジャケットだと、チャーリーの左のポール、ビルの右のリンゴがはっきりと分かります。

<LP「サタニック・マジェスティーズ」のビートルズ(ポールとジョージ)>

<LP「サタニック・マジェスティーズ」のビートルズ(ジョンとリンゴ)>

その後、レコード番号が変更となり何度か再発され、80年代以降はCDも発売されましたが、写真のトリミングが異なるジャケットも多く、中には狭くトリミングされポールとリンゴがカットされている写真もあるようです。ちなみに、3Dジャケットの写真と通常ジャケットの写真は別の写真が使用されています(ストーンズ・ファンは誰でも知っていることでしょう)。

 

■稲垣次郎とリズム・マシーン「ビートルズ・ヒット・ヒット」(日本コロムビア デノンCD-4003、発売:69年9月)

<ジャケット表>

<帯付きジャケット>

東芝及び東芝以外のLPを通して初めて日本人アーティストによるビートルズの写真が使用されたジャケットLPです。これまでは日本人アーティストがビートルズの写真を使用するのは抵抗があったのでしょうか。しかし普通の写真を使用しているのではなく、写真を加工したポスターを使用しています。そうです、本LP発売の前年に東芝が実施した「ビートルズ・プレゼント・セール」の景品に使用した、リチャード・アヴェドン製作のアート・ポスターです。雑誌「LOOK MAGAZINE」に掲載された4人の加工写真です。加工写真ポスターですので、通常の写真よりはジャケットに使用しやすかったのでしょうか。アーティストの稲垣次郎が中央でサックスを持って椅子に座っていますが、ジャケット上下左右の端に、17枚の4人のポスターが掲げられているデザインです。17枚と中途半端ですが、ジョンのみ5枚で他の3人は4枚ずつの使用となっています。なおこの時代には珍しく、ジャケット内側に『●表紙「ビートルズ・ポスター」提供P.M.P』とポスターのクレジットが印刷されています。しかし、P.M.Pとは何なのかは分かりません。

<ポスター・クレジット>

稲垣次郎はフランキー堺、ジョージ川口のバンドで演奏していたサックス奏者で、「ソウル・メディア」、「オール・スターズ」等のグループを率いて数多くのレコードを製作しています。「リズム・マシーン」名義では、このLPを含め3枚製作しています。ビートルズのカバー曲14曲を収録していますが、「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」や「レイン」といった比較的マイナーな曲も演奏しています。このLPは稲垣次郎とベース奏者の荒川康男が担当しています。

なお、稲垣氏は今年の1月に亡くなられたことが1昨日報じられたことを本日知りました。追悼の意を表したいと思います。

 

■アンドレ・ラスキン・オーケストラ「ビートルズ・コンチェルト」(CBS・ソニーSOND-66024、発売:70年6月1日)

<ジャケット表>

<ジャケット裏>

<帯付きジャケット>

アンドラ・ラスキン・オーケストラによるビートルズのカバーLPです。東芝以外から発売されたLPでは控えめに写真やポスターなどを使用したジャケットが多いですが、それらとは異なり、大胆にもビートルズの写真を大きくフィーチャーしています。しかも4人の顔のアップ、少し小さな全身、4人の集合写真が表に使用され、裏にも4人の顔写真が印刷されています。主に69年4月のフォト・セッションで撮影された写真が使用されています。堂々と大きな写真を使用した後ろめたさがあったのか、顔のアップ写真では目の部分を隠しています。ビートルズの写真とは分からなくする意図もあったのかもしれませんが、明らかにビートルズの4人と分かります(笑)。

これほどにも大きな写真を使用したためか権利についてクレームが付いたようで、このLPは早めに廃盤になったようです。70年のソニーのレコード総目録に掲載されていますが、翌年の総目録ではレコード番号に該当する位置に枠は残っているものの、空欄になっています。1年以内に廃盤になったようで、幻のLPの扱いになっているようです。もしかするとクレーム対象は裏ジャケットのキリストの絵かもしれませんが…。

この時期のソニーのLPには変則的な斜めにカットされた帯が付いています。帯の裏にはアンケート用のはがきが付いています。従来の補充注文票の位置にハガキを付けるためにハガキの横幅の大きさにしなければならず、上部が広く下部が狭い変形した帯になったようです。

<帯裏のはがき>

アーティストのアンドレ・ラスキン・オーケストラですが、名前からして外国の楽団のようですが、国内のスタジオ・ミュージシャンの集まりのようです。編曲と指揮は作曲家・編曲家の内藤法美と東海林修で、A面が内藤、B面が東海林の担当です。

次回は残りの確認できている4枚について報告します。