「THE BEATLES’ WITHOUT THE BEATLES」(第2回~東芝編②) | ザ・ビートルズ完全日本盤レコード・ガイド

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ビートルズがいないビートルズ・ジャケットのレコード特集の東芝編の2回目です。今回は65年8月発売のLPからスタートします。

 

■ジミー・ハスケルと彼の楽団「ビートルズと唄おう」(東芝音工キャピトルCP-7260、発売:65年8月15日)

<ジャケット表>

<帯付ジャケット>

65年当時はカラオケという言葉はありませんでしたが、ビートルズの楽曲の演奏に合わせて歌おう、ギターを弾こうというカラオケ企画もののLPです。このLPのジャケットの表にビートルズのライヴ中の写真が使用されています。前年発売のジョージ・マーティン楽団のLPに続く、2枚目の表ジャケットへの写真使用になります。マーティンは国内独自のジャケットでしたが、こちらはUSオリジナル盤のジャケットをそのまま転用しています。65年2月発売の「SING A SONG ALONG BEATLES」((S)KAO-5000)で、キャピトルの子会社レーベルのタワー・レーベルで発売されていますが、国内盤はキャピトル・レーベルとなっています。ジャケットに使用されたライヴ写真は64年USツアーにおけるライヴ写真になります。

<US盤ジャケット表>

なおジミー・ハスケルはアメリカの作曲家・編曲家で、多くの映画音楽の作曲もしています。プレスリー、ビリー・ジョエル、ブロンディ、シェリル・クロウのレコードにも演奏やアレンジで関わったとのことです。

カラオケのようなレコードですので、歌いやすいように、裏ジャケット及び見開きジャケットの内側に、歌詞とコードが記載されています。歌詞は裏ジャケットから始まり、A面4曲目の「シー・ラヴズ・ユー」の途中まで掲載され(何と中途半端な!)、5曲目の「プリーズ・プリーズ・ミー」からは内ジャケット左側に移り、右側まで収録曲の歌詞が載っています。内ジャケットの下にはギター・コードのポジションが載っています。US盤と国内盤では文字の大きさやレイアウトが異なるため、4曲目の「シー・ラヴズ・ユー」の歌詞は裏ジャケットにすべて掲載されています(こうでなくっちゃ!)。ちなみに、LP「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のジャケットが、裏に歌詞を掲載した初めてのLPと言われていますが、3年前に既に歌詞掲載のジャケットが発売されていました(歌詞掲載の目的は異なりますが)。当時のファンは、このレコードを聴きながらギターを弾いたり、歌ったりしたのでしょうか?歌うために購入した人はわずかで、ビートルズのLPと思って買った人がほとんどだった、ということはないでしょうね(笑)。

<国内盤ジャケット裏>

<US盤ジャケット裏>

 

■スクリーン・スタジオ・オーケストラ「ステレオ・スクリーン・ハイライト」(東芝音工 東芝TP-7082、発売:65年11月5日)

<ジャケット表>

<ジャケット裏>

<帯付ジャケット>

65年3枚目のLPです。前回紹介したシリーズ前作から13か月後の発売になります。今回は表ジャケットにビートルズの写真が使用されました。収録曲「ヘルプ」にちなみ映画からの1シーンです。ソールズベリー平原でのレコード録音という設定の場面で戦車に守られて演奏した場面のその戦車の上に、女優のエリナー・ブロンと4人が乗って手を振っている写真です。俗に「タンク・カバー」とも呼ばれています。ジャケット全面に写真が使用されていますので、強いインパクトがあります。まさにビートルズのレコードです、という感じです。このジャケットのおかげで、ビートルズの曲が収録されていないのにも関わらず現在でも人気のあるLPとなっています。

ジャケット裏にもバハマのロケの際に、横になった女性を前にして階段に座る4人の写真(シングル「ザ・ナイト・ビフォア/アナザー・ガール」(OR-1430)の別ショット)が使用されています。

 

■V.A.「ビートルズ傑作集」(東芝音工オデオンOR-7144、発売:66年4月15日)

<ジャケット表>

<帯付ジャケット>

66年になって、いよいよこのブログ記事のタイトルにもなった、ビートルズのいないビートルズ・ジャケットの本命盤「ビートルズ傑作集」が発売になりました。上記「ステレオ・スクリーン・ハイライト」に続き、表ジャケット全面ビートルズの写真が使用されています。64年USツアーの際に撮影された、ホテルのプール・サイドで飛び込み板に座る4人の写真です。通称「プール・カバー」です。こちらのジャケットもインパクトがあります。ジョージ・マーティンの「ビートルズ・ソング・ヒット集」(俗称、ジャンプ・カバーでしょうか?(笑))、65年盤ステレオ・スクリーン・ハイライトとこの3枚が表ジャケット・ビートルズ全面写真LPの御三家で、さらに「ビートルズを唄おう」を加えて四天王とでも言いましょうか(笑)。

収録曲は、この時点で発表された様々なアーティストによるビートルズのカバー曲を収録しています。詳しくは調べていませんが、このLP以外では国内未収録の曲もあるのではないでしょうか。その意味でも貴重なLPになります。ビートルズの写真を全面に使用したためか、購入者は帯を外してジャケットを眺めたり、飾ったりした人が多くいたものと考えられ、帯付きで中古で販売されることは稀です。上記「ステレオ・スクリーン・ハイライト」でも同じことが言えますが、こちらのほうがさらに帯付きLPを見ることは少ないです。菅田泰司氏著「60年代ロックLP図鑑」に掲載されている写真も帯なしです。もちろんここで掲載した2枚の帯はレプリカです。安心してください(笑)。

 

■ホリーリッジ・ストリングス「魅惑のムード・ストリングス第2集」(東芝音工キャピトルCP-8431、発売:68年8月10日)

<ジャケット裏>

<帯付ジャケット>

二度あることは三度あるで、ホリーリッジ・ストリングスの3枚目もビートルズの写真をジャケット表に使用して、66年6月に「ミッシェル」のタイトルで発売が計画されました(CP-7528)。この写真も64年のUSツアーの休暇の日に撮影された、4人が乗馬をする写真で、フランスの編集盤LPにも使用され、通称「ホース・カバー」と呼ばれている写真です。しかしLP「ミッシェル」とフランス盤の写真は反転しています(実物を社有していませんので、どちらが裏焼きか分かりません(笑))。この日本盤ホース・カバーは、見本盤しか確認できていないらしく、発売中止となったようです。もしこのLPが発売されていたら、上記四天王に加えて五本の指になっていたのですが残念です(笑)。

<LP「ミッシェル」(書籍「60年代LPロック図鑑」より)>

実際の3枚目は68年6月発売のLP「魅惑のムード・ストリングス」(CP-8381)ですが、このLPではジャケット表裏ともに女性モデルの写真が使用され、ビートルズの写真は使用されていません。そのため、「ホース・カバー」が発売中止になったのが、ビートルズの写真をジャケット表に使用したためではないかと考えています。66年頃から各国のディフ・カバーの生産が少なくなっていますので、UKオリジナルLP以外のビートルズの写真を使用したLPの販売に規制がかかり、ましてやビートルズの曲を収録していないLPへの写真の使用は許可が下りなかったのかもしれません。

<LP「魅惑のムード・ストリングス」>

3枚目にはビートルズの写真は使用されませんでしたが、4枚目のジャケット裏には写真が掲載されています。表は女性モデルの写真ですが、裏に2枚のビートルズのポートレート写真が使用されています。表がだめなら裏だったらいいのではと考えて使用したのかもしれません。

なお、3枚目のアーティスト名が何故か「ホリリッジ」に変更されていますが、4枚目は「ホリーリッジ」に戻っています。今後70年代以降の国内発売「ホリーリッジ(ホリリッジ)・ストリングス」のビートルズ・カバー・レコードを紹介したいと考えていますが、アーティスト名の変化にも注目してください(笑)。

このLPを最後に、ビートルズの曲を収録していない東芝製LPジャケットへのビートルズ写真の使用はされなくなったようです。

 

■「THE BEATLES' WITHOUT THE BEATLES」レコード(発売日は推定あり)