860年目のビートルズ来日からもう1か月過ぎましたが、まだまだ来日60周年特集は続きます(笑)。日本テレビが撮影したテレビ映像ですが、6月30日版が78年10月12日に初めてテレビで放送されました(前週に1曲放送されましたが…)。78年の放送は木曜スペシャルの枠で放送されましたが、この番組のスポンサーが花王であったため、同業のライバル企業であるライオンの看板が映るシーンはトリミングされていると言われてきました。この話の出所がどこなのか不明ですが、実際に看板が映らないようにトリミングされていれるのであれば、スポンサーの事情がトリミング理由である可能性は高いと思われます(歴史的映像をスポンサーの都合でわざわざ加工しなくても良いと思うのですが…)。
そこで、実際に78年に放送された映像と、後にビデオ等で販売されたオリジナル映像を比較してみました。日本テレビでは78年以降も80年、82年、88年に6月30日日本公演の映像を放送していますので、それぞれについてトリミングの違いを含めた映像の違いについて調べたので報告します。
1.タイトル・字幕の違い
<「ロック・アンド・ロール・ミュージック」タイトルの違い(左上:78年版、右上:80年版、左下:82年版、右下:88年版)>
曲目のタイトルの文字のフォントは、各年の放送の都度、変更となっています。78年版はゴシック体の日本語タイトルで表示されていましたが、80年版では文字が大きく太くなり、強調されています。82年版では日本語と英語で並列に表記されています。88年版になると、英語のみの表記に変わっています。
78年版と80年版の曲タイトルに関しては、80年版で「アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン」の表記が78年版では「彼氏になりたい」と表記されています。
78年版・80年版ではメンバーのMCに日本語訳の字幕が表示されます。訳は全く同じですが、80年版では一部、メンバーが曲のタイトルを言うシーンの日本語訳が表示されていません。
2.トリミングの違い
ビデオ映像と78年版映像を比較してみると、斜め左右前方からカメラを引き気味に撮影してライオンの看板が映る映像の数箇所でトリミングされて画角が大きく拡大され、看板の一部しか映らないように加工されていることが分かりました。なお、看板の上から下までが映る画面がトリミングされており、看板の上半分等の一部が映る画面ではトリミングはされていませんでした。
曲別に示すと、「シーズ・ア・ウーマン」2箇所、「ベイビーズ・イン・ブラック」1箇所、「アイ・フィール・ファイン」1箇所、「ひとりぼっちのあいつ」1箇所、「アイム・ダウン」2箇所の計7箇所でトリミング映像がありました。その他の曲では看板が完全に映る映像はありません。以下にトリミングする前後の映像を示します。
<「シーズ・ア・ウーマン」①(上:オリジナル映像、下:78年版映像)>
<「シーズ・ア・ウーマン」②(上:オリジナル映像、下:78年版映像)>
<「ベイビーズ・イン・ブラック」(上:オリジナル映像、下:78年版映像)>
<「アイ・フィール・ファイン」(上:オリジナル映像、下:78年版映像)>
<「ひとりぼっちのあいつ」(上:オリジナル映像、下:78年版映像)>
<「アイム・ダウン」①(上:オリジナル映像、下:78年版映像)>
<「アイム・ダウン」②(上:オリジナル映像、下:78年版映像)>
78年版ではトリミングによってメンバーが映らなくなった映像も多々あり、例えばポールが歌っているのにポールが画面からはみ出し、映っていない映像もあります(笑)。
80年版映像も78年版映像をほぼそのまま使用しているため、トリミング箇所はほぼ同じです。この番組も木曜スペシャルでの放送でしたので、引き続きスポンサーに配慮したのでしょう。但し、「アイ・フィール・ファイン」のトリミング箇所のみ、トリミングされずにオリジナル映像と同じ画角になっています。この箇所だけトリミングし忘れたのでしょうか。もしくは、この箇所の映像では「ライオン歯磨」の「磨」の文字しか映らないので、80年版の編集の際にトリミングする必要はないと判断したのでしょうか。
また、「アイム・ダウン」の1回目のトリミング箇所については、なぜか80年版ではさらに画角を大きくトリミングしています。
<「アイム・ダウン」①(上:オリジナル映像、中:78年版映像、下:80年版映像)>
なお、80年放送の番組では日本公演の映像が録画されたビデオ・テープをデッキにかけて映像をスタートする演出を行っていましたが、上記の通りオリジナル映像と放送映像は異なりますので、このテープはオリジナルのテープではない、またはこのテープがオリジナルであれば放送した映像はこのテープの映像ではなかったことになります。
続く82年版で放送された「ひとりぼっちのあいつ」ですが、この番組は火曜日に放送され、木曜スペシャル枠ではなかったためか、この曲でのトリミングはされていません。
さらに88年版の全曲放送も木曜スペシャルでの放送ではなかったので、トリミングされていないオリジナル映像のままで放送しています。しかしMCをカットしていますので、結局のところ、これまで日本テレビでは加工していない映像を全曲放送した番組はないことになります(切り貼りすればオリジナル映像が出来上がるかもしれませんが(笑))。従って、6月30日のオリジナル映像全曲をテレビ放送したのは93年と94年のWOWOWの放送のみになります。
3.観客映像の挿入
当時の日本公演テレビ放送は、日本テレビが6月30日夜の部と7月1日昼の部の公演を収録し、ブライアン・エプスタイン立会いのもと、編集を行って放送する契約だったようです。編集を行うのではなくて、2公演のどちらか演奏内容等が良いほうを使用するといった内容に変更になったのかは定かではありませんが、ビートルズの衣装が両日で異なることが理由のためか、結果的にどちらか一方の映像を使用するようになったようです。エプスタインが6月30日の映像を観て、観客がほとんど映っていないというクレームを付けたことにより(マイクの不備も原因のひとつか?)、放送は7月1日版になったと言われています。実際に映像を観ると、E・H・エリック氏の初めの挨拶から最後の挨拶まで、6月30日版には観客のみの映像は全く使用されていません。一方、7月1日版にはエリック氏の最初の挨拶が終わった直後に早くも観客の映像が挿入され、ビートルズの演奏中も随時観客映像が挿入されています。
しかし、6月30日版のオリジナル映像には観客の映像は挿入されていないものの、78年版映像には1箇所、観客映像が挿入されているのです。エリック氏が公演開始前にビートルズの紹介を終え、メンバーが登場するまでの約3秒、南東方向の客席を映した映像が映ります。この映像を調べると、7月1日版の映像の、同じエリック氏の紹介が終わった後の映像であることが分かりました。しかし、この観客映像はかなり映りが悪いです。
<エリック氏挨拶直後の映像(上:オリジナル映像、下:78年版映像)>
日本テレビは当初、アメリカの映画会社が所有している7月1日版の映像を借りてテレビ放送しようと計画していたものの、この映像はビデオからフィルムに移したキネコ映像でかなり映りが悪かったため、日本テレビ内で保管していた6月30日版を放送しました。すなわち日本テレビは7月1日版の映像を入手していたので、この7月1日版の観客映像を6月30日版の映像に挿入したものと思われます。
日本テレビは6月30日の映像には観客映像がないということを覚えていて、観客映像を挿入しようと試み、試しに冒頭のこの箇所に挿入してみたのでしょうか。他の箇所にも挿入する考えがあったのかもしれませんが、あまりに映像が悪いため、冒頭だけの挿入でやめたのかもしれません。
一方、80年放送の映像にはもう1箇所ほど観客映像が挿入されている箇所があります。4曲目の「デイ・トリッパー」と5曲目の「ベイビーズ・イン・ブラック」の間に挿入されています。挿入映像は、冒頭の挿入映像と全く同じ映像です。78年放送時は4曲目と5曲目の間にCMが入るためか、この観客映像は挿入されていません。
<4曲目と5曲目の映像(上:オリジナル映像、下:80年版映像)>
82年版ではエリック氏の最初の挨拶から続けて「ロック・アンド・ロール・ミュージック」を放送していますが、78年版の挨拶の直後の観客が映る場面をカットして、挨拶が終わるや否やビートルズの登場画面につないでいます。
4.その他
その他、元映像とテレビ放送映像の違いについてですが、エリック氏の開始と終了の挨拶は78年版では放送されましたが、80年版では最後の英語でのビートルズ紹介のみの映像で、挨拶の前半はカットされ、終わりの挨拶はすべてカットされています。
またCMですが、78年版では上記の4曲目と5曲目の間以外に9曲目「ひとりぼっちのあいつ」と10曲目「ペイパーバック・ライター」の間にも挿入されており、80年版では6曲目の「アイ・フィール・ファイン」と7曲目の「イエスタデイ」の間の1箇所にCMが挿入されています。上記CM挿入箇所においては、中断した間の映像がわずかながらカットされています。
78年版、80年版では、日本テレビに残っていた日本公演の映像を、初めから終わりまでカットもなくそのまま放送すると説明していますが、トリミングを含め編集した跡が見られ、カットもしていることが分かります。
最後に日本テレビ放送の映像の違いについて、一覧表にまとめました。
<6月30日版ビートルズ日本公演日本テレビ映像の違い(網掛け:トリミング)>
※演奏曲 丸数字:トリミング場面の数、〇:トリミングなし、×:放送なし
※挨拶・観客映像・CM等 〇:あり、△:一部カット、×:なし
※80年版は「ペイパーバック・ライター」を1曲目に放送




















