「THE BEATLES’ WITHOUT THE BEATLES」(第4回~東芝以外編②) | ザ・ビートルズ完全日本盤レコード・ガイド

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ビートルズの楽曲を収録していないビートルズの写真を使用したジャケットのLP紹介の特集、東芝以外のレコード会社編の2回目です。前回の続き、70年代のLPの紹介の前に、69年発売のLPが漏れていましたので最初に紹介します。

 

■エレクトロニック・コンセプト・オーケストラ「輝く星座/エレクトロニック・ロック・ファンタジー」(日本ビクター マーキュリーSMX-7107、発売:69年)

<表ジャケット>

<裏ジャケット>

69年発売のエレクトロニック・コンセプト・オーケストラ演奏のインストゥルメンタルLPです。原題「MOOG GROOVE」が示す通り、当時多用され始めたムーグ・シンセサイザーによる60年代後半のヒット曲を演奏したLPになります。シンセサイザーの演奏者は、エディ・ヒギンズというジャズ・ピアニストです。このLPはUS発売LP(LS-86070)の国内発売で、国内盤ジャケットもオリジナルと同じデザインで発売されています。

表ジャケットは女性モデルが横たわっている写真ですが、この写真の左上に壁に貼られたビートルズのポスターが見えます。このLPには「ヘイ・ジュード」と「ペニー・レイン」のカバーが収録されていますのでビートルズのポスターが写った写真を採用したようです。このポスターに使用されている写真は67年発売のLP「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」制作時期の写真で、雑誌「LIFE」の表紙に使用された写真と同じです。国内でも82年に東芝EMIが同様の写真を使用したポスターを制作していますが、こちらは若干アングルが異なります。

<雑誌「LIFE」表紙(書籍「ビートルズ・カタログ」より)>

<82年東芝EMI製作ポスター>

ジャケット表の写真はポスターの前に花のアップがあるため、リンゴの顔の下半分は隠れて顔全体が見えません。ジャケット裏に同じ場所の別写真が白黒で使用されています。この写真は表とは若干アングルが異なりますのでリンゴが見えますが、トリミングされてポールの写真が写っていません。

 

■クロード・フィリップ・オーケストラ「月曜ロードショー~スペシャル・コレクション」(日本フォノグラム フィリップス20Y-102、発売:74年12月)

<表ジャケット>

<帯付ジャケット>

69年10年に放送開始した、TBS系列毎週月曜21時番組開始の「月曜ロードショー」で放送された、または放送予定の映画の主題歌を集めたLPで、74年発売です。70年代前半は、火曜日と木曜日以外は夜の9時から各局で映画劇場を放送しており、子供ながらによく見ていました。なお木曜日も東京12チャンネルで映画が放送されていましたが、地方ではネット放送されていませんでした。各映画劇場では放送の前後に映画評論家等による解説があり、月曜ロードショーは荻昌弘氏の落ち着いた語りにより人気がありました。日本フォノグラムから発売されたこのLPは、各局の映画劇場別のシリーズとして発売されており、他に日曜洋画劇場(20Y-101)、水曜ロードショー(20Y-103)、ゴールデン洋画劇場(20Y-104)、土曜映画劇場(20Y-105)の同様のLPが発売されました。

このLPの表ジャケットに映画「レット・イット・ビー」のポスター写真が掲載されています。月曜ロードショーで放送済みまたは放送予定ということだったのでしょうか? しかし、月曜ロードショーで放送されたという記録はありません。ビートルズの映画がゴールデン・タイムの映画劇場で放送されたとなると、現在まで語り伝えられていると思いますが、全くそのような話は聞いたことがありません。そこで、ネットや新聞で、映画「レット・イット・ビー」のテレビ放送記録を調べ、以下の表にまとめました。

 

<映画「レット・イット・ビー」テレビ放送>

※放送終了時間には推定あり

 

77年3月21日14時の放送がテレビ初だったようです。この日は春分の日の祝日で、ホリデイ・スペシャルとして昼に放送されたようです。TBSで放送されましたが、地方の系列局でも放送されていますので、全国ネット放送だったようです。TBSに限って調べると、初放送の7か月後の同年10月の深夜に再放送がありました。さらに80年2月の昼に3回目(ポールの逮捕の影響か?)、81年末の深夜に4回目(ジョン追悼1周年か?)が放送されています。以上3回の再放送はTBSのみのローカル放送だったようですが、一部の地域では同時放送もあったかもしれません。地方では遅れて放送された可能性は大いにあると思います。ここまで4回の放送は、すべてかまやつひろし氏による解説が入ったバージョンで、映画自体は結構カットされていたようです。初放送の1週間後の3月28日付読売新聞には、カットが多く、余計な語りが何度も出てきたことが残念といった苦情の投書が掲載されています。

84年になってノーカット、ナレーターなし字幕付きの完全版が放送されました。「SONY PRESENTS名作洋画ノーカット10週」という番組で、83年4月から6月までの10週と翌年の同期間の10週の計20本の映画をほぼノーカットで放送しています。84年第1回の4月14日の深夜(実際は4月15日)に放送され、CMも途中で1回入るだけで、これまでのかまやつバージョンよりは、大変見やすく、好評だったようです。このころは家庭用ビデオ・デッキもかなり普及していて、録画した人は多かったようです。この時の放送に関しても4月20日付読売新聞に投書が掲載されていて、かまやつバージョンとは逆に好意的な意見が書かれています。

上述の通り、この映画は月曜ロードショーでは放送されていませんが、このLPが発売された74年時点では放送する予定があったものと思われます。その後のテレビ放送がすべてTBSの放送だったことから、74年にはTBSはこの映画の放送権を獲得しており、テレビ放送の準備していたものの何らかの原因で月曜ロードショーでは放送しなかったものと考えられます。再放送が昼や深夜での放送だったことからも、一部の音楽ファンしか喜ばないのではないか、暗いイメージがあるといったような要因でゴールデン・タイムに放送するにはちょっとふさわしくないと判断したのでしょうか?

映画の話が長くなりましたが、本LPに「レット・イット・ビー」のインストゥルメンタル曲が収録されています。他に「ウエスト・サイド物語」や「卒業」の映画主題歌などが収録されていて、全曲クロード・フィリップ・オーケストラの演奏です。ネットで調べると、このオーケストラは作曲家の神津善行氏のオーケストラという説があるようです。スタンリー・マックスフィールド・オーケストラが大野雄二氏のオーケストラという説もありますので、あながち神津氏のオーケストラ説は間違いではないのではないでしょうか。

おまけとして、この映画「レット・イット・ビー」のポスター、チラシについて紹介します。ポスターには2種類あって、上部「THE BEATLES」の文字の下に「映画がはじめて紹介!歌いまくるビートルズ・真実の姿!」の文字、最下部に「製作ニール・アスピナル/監督マイケル・リンゼイ=ホッグ(主題曲/アップルレコード・サントラ盤)ユナイト映画」の文字及び映倫番号があるものと、それらの文字等がないポスターが存在します。このLPに使用されているポスターは文字等がないほうになります。

<ポスター(文字・映倫番号あり)>

<ポスター(文字等なし)>

この文字等が省略されているポスターは、「ビートルズ・フェスティバル」用のポスターではないかと考えています。72年11月のテアトル銀座と新宿武蔵野館での上映を皮切りに、全国で「レット・イット・ビー」、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」、「四人はアイドル」、「イエロー・サブマリン」の4本を、日を替えて上映する「ビートルズ・フェスティバル」が公開されましたが、前売り券購入や先着でポスター等のプレゼントがもらえました。このプレゼントがこの文字等が省略されたポスターではないかと考えています。再上映ですので、「初めて紹介」という文字や映倫番号を削除したのではないでしょうか。74年発売のLPですのでフェスティバル用のポスターのほうが入手しやすく、LPジャケットに使用したのではないかと思われます。

チラシは表が同一で裏の中央部分が異なるもの3種類を確認しています。初公開時のチラシ、上記72年11月の「ビートルズ・フェスティバル」(上記4本上映)のチラシ、73年12月の「ビートルズ・フェスティバル・アンコール・ロードショー」(「イエロー・サブマリン」を除く3本上映)のチラシの3種類です。この中でよく見るのは「ビートルズ・フェスティバル」のチラシです。初回公開時のチラシと思って入手しても、「ビートルズ・フェスティバル」のチラシである場合が多いようです。皆さんお持ちのチラシはどのタイプでしょうか。

<チラシ表裏(70年映画公開時)>

<チラシ裏(左:72年フェスティバル、右:73年アンコール・ロードショー>

映画「レット・イット・ビー」の話で脱線して長くなりましたので、今回は2枚のみの紹介でお許しください(笑)。