“信楽”を過ぎた辺りで、本格的な雪にみまわれた
だが、初期型から10年以上熟成されたカウルの性能はさすがだった
肩よりも下
レバーを握る手の先
何よりも足が、全くと言って良い程濡れない
この状態を維持する為に、速度を150より落としたくなかった
路面の感じに神経を使いながら、時折現れる陸橋の横風にあおられ 軽くリヤのトラクションが持って行かれたりするのをジッと耐える
アクセルは戻さない
メットのスクリーンを、風圧に押された水滴が生き物のように這う
長い旅の終わり
もう、すぐそこにあるのだ
目的のインターを降りる頃には、雪も雨に変わっていた
凍える手で、事前にプリントしてあった地図を取り出し
吐く息で白く曇るスクリーンを拭う
膝から下は感覚が鈍り、凍った棒のようだ
国道と線路と病院
目印はそれだけ
だが、確信があった
近くまで行けば必ず分かる
俺は道も人の名前も覚えが悪いし
以前来た時は電車だった
それでも
何だろう、この感じは
あったのだ
家を出る時からずっと、“待っていてくれてる”感じが
見覚えのある商店街
懐かしい木造の入り口
前にR1を停める
引き戸がガラリと開き、気の良さそうな おばあちゃんが顔を出し
「お疲れさん。今 いぶ呼んで来るわ」
飛び出して来たのは、背の伸びた小僧
嬉しそうにはしゃぎ、R1を見て瞳をキラキラさせる
フルフェイスを取って、「持つよ」と言う若様に渡すと
俺の周りをピョンピョン跳び回る
奥から
出て来た俺の“姉ちゃん”
「ただいま」
「おかえり(笑)」
俺は、妙に晴れがましい気分で到着した達成感を顔に出し
水と泥跳ねでイイ男になったR1を見て笑った
(続






」





