前記事に書いたように、AIはこれから莫大な電力を消費するようになります。
データセンターは簡単にいえば情報を集約・処理・保存する拠点で、図に書けば次のようになります。
図を見ても莫大な電力を消費するとは思わないかもしれませんが、例えば一昨日の記事で紹介した印西のデータセンター「NRT12」は受電容量34メガワット。
と言っても34メガワットがどれくらい凄い電力がピンとこないと思いますが、例えば原発は1機あたり100万KW くらいですが、メガワットで表示すると1000メガワットです。
原発と比較してみればデータセンターの電力が如何に凄いか想像できるかと思います。
またコンピューターの発熱も相当なもので、例えばスーパーコンピューター富岳がフル稼働すると30メガワットだそうですが、富岳の発熱密度(単位面積当たりの発熱量)は原発の原子炉クラスとのことです。
富岳を収容する建物の3階には、電算室に432台のラックが16万以上の中央処理装置を収容していますが動作時に莫大な熱が発生します。
熱密度は平方メートル当たり100キロワット以上までになることがあるそうで、1平方メートルに1kW の電気ヒーター100個と考えると想像しやすいかと思います。
そして、この冷却に使用する水も、社会の持続可能性にとって大きな問題となります。
ということでAIジャイアントのグーグルのAIシステムの電力消費は、最悪のシナリオではアイルランドの国全体の消費量になる可能性があるということです。
(CNN) 米IT大手グーグルは2日、2024年版の環境に関する年間報告書を発表した。この報告書によると、同社の温室効果ガス排出量は2019年以降48%増加している。同社はこの急増の主な理由として「データセンターのエネルギー消費とサプライチェーン(供給網)の排出量の増加」を挙げている。
グーグルが主力製品に人工知能(AI)の組み込みを急ぐなか、AIシステムを稼働させる大量の強力なコンピューティング機器がひしめくデータセンターでは、データを処理し、それらのコンピューターが発する熱を管理するために大量のエネルギーを消費している。
グーグルは30年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」を達成するという同社の目標を「極めて野心的」と呼ぶ。この公約はAIの影響を受けるものの、「AIが未来の環境に与える影響は不透明で、複雑かつ予測が難しい」と述べている。
国際エネルギー機関(IEA)の推定によると、グーグル検索のクエリーは平均0.3ワット時、ChatGPT(チャットGPT)のリクエストは通常約2.9ワット時の電力を消費する。昨年10月に発表された研究によれば、「最悪のシナリオ」ではグーグルのAIシステムの年間電力消費量はアイルランド一国の消費量と同等になる可能性があるという(現在のハードウェアとソフトウェアにAIが全面的に導入されると仮定した場合)。
同社のデータセンターの電力消費は現在、カーボンフリー電源を導入する速度を上回るペースで増加しているという。
データセンターで冷却に使われる大量の水も持続可能性を実現するうえでの課題となっている。グーグルは30年までにオフィスとデータセンターで消費する水の120%を補給することを目指していると述べている。ただし、一昨年の6%からは大幅に増加したものの、昨年の補給量はわずか18%に過ぎない。
そして日本は黒船データセンターの建設ラッシュ。
すでに黒船データセンターの日本進出が盛んになっています。
これは生成AI でますますデータセンターが必要となることや、安全保障のために分散させたいアメリカの狙いや、日本の円安などの要因があるようですが、これからの日本の産業の下支えになると期待されています。
しかし単純に喜んでばかりはいられません。
例えば米Digital Realty Trustが、三菱商事との折半出資によって日本で運営するMCデジタル・リアルティを通じて、2024年3月6日に千葉県印西市に建設した「NRT12データセンター」は受電容量34メガワット。
これ以上データセンターが集中したら電力(脱炭素)はどうなるのか?
それでなくても日本は脱石炭火力発電が遅れていて、G7で批判され、COP28では4年連続で化石賞を受けています。
2022年度の国内の発電量の79.8%が火力発電、しかもそのうち42.2%が二酸化炭素発生量がLNGの2倍の石炭火力発電。
(LNG:45.4%、石炭:42.2%、石油:3.2%)
データセンターが増えることはそのままCO2発生量の増加につながりそうです。
前記事に書いたようにマイクロソフト社は大気からCO2を回収(DAC:Direct air capture)する企業から、6年間で50万トンの二酸化炭素クレジット(排出枠)を購入します。
- DACのクレジット相場は1トンあたり800〜1200ドルとされるそうですので、電力の脱炭素化が遅れている日本にとっては、莫大な経済的負荷となる可能性がありそうです。