現行法では夢物語としか思えない空飛ぶクルマ | 夢老い人の呟き

夢老い人の呟き

願い望むは願望  夢は寝てみるもの 儚く叶わぬもの
  人に夢と書き儚  夢に人と書き夢人 
    夢と人の中に老いが入り夢老い人  儚く老いる独り言

欧米の次世代空モビリティ(AAM:Advanced Air Mobility)メーカーは2024年のパリオリンピックでの商用運航を目指していたが、規制や"型式証明"など認証の遅れから計画が困難になったとのこと。

 

"型式証明"は三菱MRJが断念したことから分かるように取得が難しく、eVTOLの企業にとっては想定外の厳しい障壁に思えるかもしれませんが、航空関係者にとっては、当たり前に思えるのではないでしょうか?

 

なにしろ現在世界で型式証明を取得しているeVTOLはまだひとつも無く、唯一航空当局の認証を得ているのは、すでに15,000回以上の有人飛行を行い中国民用航空局(CAAC)の認証を得ている、中国の”Xpeng X2だけです。(XPENG X2 Receives CAAC Special Flight Permit

しかしこれもSpecial Flight Permitということなので、"型式証明"とは異なるようです。

 

 

 

パリオリンピックでは試験飛行として、パリ市内では建物上空を避けセーヌ川上空を飛ぶようですが、商業飛行はもちろん市街地上空を飛ぶことは航空法では難しいと思います。

 

 

 

 

これまで空飛ぶクルマについては技術ネタとして取り上げてきましたが、現実的な「商業飛行については無理でしょう」というのが私の感想です。

 

ただ私の判断の基礎は航空法の知識に囚われており、また空飛ぶクルマ(eVTOL)を航空機として考えていますので、諸々の制約が生じますが、空飛ぶクルマは航空機では無く航空法が適用されないという事になれば制約が減るかもしれません。

 

 

空飛ぶクルマは航空機か?

 

空飛ぶクルマに関する記事を見ると、「自動操縦で飛び、乗員(機体に乗って運航や操縦をする人)が不要などと書かれているものもありますが、これは真っ赤な嘘です。

そういう前提にしないと運航コストや事業費のメリットが無く、そういう話にしたい人たちもいるのかもしれません。

 

 

自動操縦のドローンは開発可能でしょうが、商業飛行として乗客を乗せて飛行するのに無人操縦は認可されないでしょう。

無線操縦のドローンでさえ、重量が200グラムを超えれば航空法の適用を受けますが、有人ドローンが法の適用外のはずがありません。

 

 

ではどのようなジャンルの乗り物として法の規制を受けるのか?

 

令和5年3月発行の国土交通省交通局の”「空飛ぶクルマ基準の方向性の整理(案」”を見ると航空機ということになります。

 

 

航空機であれば安全性及び環境適合性の基準を満たしていることを証明する"型式証明"はもちろん、技能証明を受けた有資格操縦士有資格整備士が必要ですし、運行管理者も必要でしょう。

 

また飛行空域、市街地上空の最低安全高度など航空法の規制を受けるでしょうが、市街地上空の飛行は飛行機やヘリコプターと違って、滑空できないマルチコプターには厳しい条件かと思います。

さらにADS/Bなど衝突防止等安全のための装備も必要となりますが、いろいろと制約が多く、コストもかかりそうです。

 

 

■操縦者ライセンス

 

■整備者ライセンス

 

■飛行計画の調整・情報提供とその手法

 

■最低安全飛行高度

空飛ぶクルマ基準の方向性の整理(案」にはこのように書かれていますが、航空法第81条及び航空法施行規則第174条には次のように定められています。

 

最低安全高度

航空法第八十一条 

航空機は、離陸又は着陸を行う場合を除いて、地上又は水上の人又は物件の安全及び航空機の安全を考慮して国土交通省令で定める高度以下の高度で飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

 

航空法施行規則第百七十四条 

法第八十一条の規定による航空機の最低安全高度は、次のとおりとする。

一 有視界飛行方式により飛行する航空機にあつては、飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の高度のうちいずれか高いもの

イ 人又は家屋の密集している地域の上空にあつては、当該航空機を中心として水平距離六百メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から三百メートルの高度

ロ 人又は家屋のない地域及び広い水面の上空にあつては、地上又は水上の人又は物件から百五十メートル以上の距離を保つて飛行することのできる高度

ハ イ及びロに規定する地域以外の地域の上空にあつては、地表面又は水面から百五十メートル以上の高度

二 計器飛行方式により飛行する航空機にあつては、告示で定める高

 

つまり最低安全高度はエンジンが止まっても、地上または水上の人または物件に危険を及ぼさないよう、安全な場所まで滑空できることを前提に定められています。

 

ところがマルチコプターは普通の飛行機やヘリコプターと違って滑空できません。

※ヘリコプターは滑空できます。

 

心配性で現役時代は安全管理は最悪の場合を想定しろとされていた私は、モーターが止まったら滑空できないマルチコプターの市街地上空の飛行にはどうも抵抗があります。

 

Xpeng(シャオペン)X)X2 はパラシュートで降りるようですが、これもどうも・・・・・  

 

そういう事を考えると市街地の住宅密集地や建物上空を避けて、大きな川や海の上を飛ぶのが最適ではないかと思いますが、そうすると航続時間の短さがネックになりそうです。

 

 

という事で法改正もまだまだ未定なのに来年にも商業飛行という話も、空飛ぶタクシーのように自動操縦で混雑した市街地上空をスイスイ飛べる、手軽で低コストの乗り物であるかのようなお話も夢物語としか思えません。