3月1日午後の衆院本会議で、立憲民主党の山井和則衆院議員が小野寺五典衆院予算委員長(自民党)の解任決議案の趣旨弁明演説を2時間54分にわたって行いました。
2024年度予算案の衆院採決を遅らせるための「フィリバスター」と見られるようですが、日本では「フィリバスター」に馴染みがなく、また(議事妨害)と訳されていることから批判も多いようです。
しかし、与党が絶対多数の場合、野党にはどのような対抗手段があるのか?
フィリバスターはアメリカなどでは少数派の抵抗の手段として認められているものです。
議事の進行を妨げることは議会制民主主義に反するものだと思うでしょうが、一方で絶対多数与党の独断専行を防ぐ手段も残されていないと独裁政権となる可能性もあり、これも民主主義を破壊する恐れがあります。
■フィリバスターとは?
昔、某政党が愚かにもアメリカの二大政党制を賞賛していましたが、アメリカの選挙制度はひとつの選挙区で選ばれるのは1名だけの「完全小選挙区制」です。
その結果は当然ながら独立系の当選者はごく一部だけで、議会は民主党と共和党の二大政党制となります。
私に言わせれば二大政党制は「完全小選挙区制」の弊害で、「よくこんな選挙制度で二大政党の議席が拮抗しているな」と感心しますが、程度の差こそあれ必ずどちらか一方は議会で少数派となります。
そこで少数派の議員がどうしても成立させたくない法案に抵抗する時に用いられるのがフィリバスターです。
フィリバスタ―(Filibuster)とは議会で,長時間の演説や動議の提出など,認められた手段により議事の進行を妨げることで、少数派が多数派に抵抗するために用いられます。
■伝説のフィリバスター
フィリバスターで有名なのは、独立系の議員でありながら2016年と2020年の大統領選挙で民主党の予備選に出馬したバーニー・サンダースさんが2010年12月に行った演説です。
独立系のサンダースさんの抵抗手段としてはこれしかないかと思いますが、ブッシュ政権から続いていた億万長者への減税措置の延長をめぐって8時間半の演説をしました。
通常、フィリバスターはシェイクスピアや合衆国憲法を意味もなく朗読したりしますが、サンダースさんは、減税措置をはじめとする行き過ぎた自由市場主義によってもたらされた貧富の格差の拡大や国内産業の衰退について強い批判の態度を持って説明しながら演説し、ネットでも話題になりました。
この動画は8時間半は長いので2分20秒ほどに要約していますが、場面が切り替わるごとに経過時間が表示されるので、経過時間と内容を含めてご覧ください。
議会制民主主義にとって最も大事な事は、議事進行にしろフィリバスターにしろ、それが国民に正しく伝えられる事であり、サンダースさんの演説もそれが国民に知らされるからこそ支持されるのでしょう。
そして議会の内容を国民に正しく伝える報道と国民が政治に関心を持って監視することは、民主主義の要だと思います。
今の日本はその要が壊れかけているように思えます。
オマケです
蛇足ですが、最近はアメリカの政治の様子など見る気も起きませんが、サンダースさんは私が最も好きなアメリカの政治家です。
このような動画もご覧になってみてください。
イラク戦争に反対するサンダースさんの空席の国会演説も有名です。
議員さんたちは全員退席していますが、国民にはアピールしました。
※1分50秒辺りに字幕の間違いがあります。7億ドルではなく70億ドルです。
「戦場に行くのは政治家の子供ではない」というのも有名なフレーズです。