産油国が原油に依存する時代は終わりを告げる | 夢老い人の呟き

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世界各地で起きている異常気象。

今年はより一層激しくなり、各国でこれまで無かったほどの甚大な水害やWild Fire(森林などの火災)が起こり続けている。

 

国連の世界気象機関(WMO)は、世界の氷河が昨年、劇的なペースで融解したことを明らかにし気候変動対策は「すでに敗北」とした。

 

 

氷河の融解は視覚的にショッキングだが、それ以上にショッキングなのは大西洋の海洋循環が今世紀半ば、早ければ2025年にも停止するという最新の研究結果。

 

北海道よりもはるかに北にあるフランスやドイツやイギリスが温かいのは、暖かいメキシコ湾流(Gulf Stream)とその延長にあたる北大西洋海流(North Atlantic Current)のおかげです。

この大西洋の海洋循環が止まれば、北半球の気候は大きく変わるだろうし、のみならず海流の熱塩循環は大きく影響を受け、世界中の海水温や気候に大きな影響を与えるのではなかろうか。

 

だから欧米各国は気候変動を止めようと脱炭素に懸命になっているが、さほど深刻に受け止めず、いまだCO2排出量が多い石炭火力発電に頼る日本。

G7でも石炭火力発電を非難されているのに、いまだ日本の世論は石炭火力発電を前提にして、「発電するのにCO2をたくさん排出するからEVの方がCO2排出量が多い」と主張するお馬鹿ぶり。

 

 

これは日本は気候変動を「気候の変わり目の一時的なもの」と考える者が多く、今後さらに悪化し異常気象がますます激しくなると、深刻には捉えていないからではないでしょうか?

欧米や産油国も急速に変ろうとしていますが、変化を嫌う日本は何とか口実を考えて変ろうとせず、このままでは取り残されてゆくのではないかと不安になります。

 

 

脱炭素と水素に力を入れるサウジアラビア

 

産油国もこれからの時代は原油に頼るだけの未来では駄目で、サウジアラビアは2021年10月、「サウジ・グリーン・イニシアチブ (Saudi Green Initiative:SGI) 」 を立ち上げ、2060年年までにCO2排出量をネットゼロにするという目標を立てました。

  • 今後数十年でサウジアラビア国内に100億本の植樹を行い、国土の3割以上を保護地域に指定することで、世界全体の4%相当の二酸化炭素(CO2)削減を目指す。
  • 2030年までに電力の50%を自然エネルギーで賄う 。
  • サウジアラビアの石油最大手サウジアラムコもこれに同調し、2050年までに温室効果ガス「ネットゼロ」の達成目標を発表している。

そこでサウジアラビアがこれから取り組むのが、水素の製造とCCE(Carbon Circular Economy)。

CCE(循環型炭素経済)は初めて聞く言葉ですが、Reduce(削減)、Reuse(再利用)、Recycle(リサイクル)、Remove(除去)により「炭素循環」を達成しつつ、経済発展を推し進めようとサウジアラビアが提唱する考え方です。

 

■サウジが製造するのはグリーン水素とブルー水素

日本は水素なら何でもクリーンだというような風潮がありますが、それは大きな間違いで水素は大きく分類すると次の三種類があります。

  • このうちグレー水素は石炭から水素1トンを製造するとCO2を10トン発生し、クリーンエネルギーとは程遠いダーティエネルギーです。
  • そこで化石燃料(炭化水素化合物)から水素製造時に発生するCO2を回収するのがブルー水素ですが、100%回収するのは無理です。発生したCO2の何割かは大気中に放出されますので、クリーン水素と言えるか否かはどれだけCO2を回収できるかによります。
  • そして再エネ電力によって水を電気分解して製造するのがグリーン水素で、完全にクリーンな水素といえます。
  • 内燃機関車の救世主のごとく報道される「E-Fuel 」ですが、「E-Fuel 」に使用できる水素はグリーン水素だけですので、グリーン水素の調達量が不十分な日本では現実的には困難でしょう。

出典:経産省 次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?

 

 
■脱石油依存を進める産油国
産油国ならふんだんにある石油で火力発電に頼っていると思う人が多いと思いますが、じつはサウジアラビアやドバイはじめ脱石油依存を進めており、中心となるのはふんだんにある陽光を利用する太陽光発電のギガソーラーです。
 
発電コストは1kWhあたり1セント台まで下がっていますので、グリーン水素を製造するにはもってこいです。またブルー水素を製造する場合も電力はCO2を発生させないクリーン電力が必要ですので、グリーン水素を作るにもブルー水素を作るにも再エネ電力は必須で、産油国は石油依存を止めて水素や水素を基に製造するアンモニアの輸出国になろうとしています。
 

 

クリーンエネルギー都市「Neom」(ネオム)

 

Neomはサウジアラビアがイスラエルやヨルダンとの国境に近い、北西部に建設中の再生可能エネルギーを電力源とする、2万6,500平方キロメートルとベルギーよりも大きな面積の未来都市です。
サウジアラビアは世界第 2 位の石油生産国であり、収入のほぼ 70% が石油に依存しているが、ポスト石油時代のために立ち上げたプロジェクトです。
 
 
 

 

温暖化防止、気候変動防止は世界中の喫緊の課題で、そのために世界はどんどん変わろう変ろうとしています。

そしてそれは経済を大きく変えようとしていますが、海外を見ようとせず変化について行けなければ取り残されてしまいます。

現在はこれまでに増して、世界に目を向けなければならない時代だと思います。