- 圧力隔壁破損を否定。
- 圧力隔壁破損により機内が急減圧したことを否定。
- 圧力隔壁からの空気流による垂直尾翼破壊を否定。
- 1項.2項と関連するが、圧力隔壁が壊れたのは墜落の衝撃によってであるとする。
今はもう削除されていますが、1985年9月26日付の東京新聞の記事に次のような記述がありました。
NTSB航空事故調査部門の元幹部ロン・シュリード氏らによると、米調査団は八月下旬、群馬県の墜落現場で残骸を調べ、修理ミスの痕跡を見つけた。シュリード氏は運輸省の事故調に修理ミスを伝えたが、日本側は九月に入っても公表しなかった。
国際的な取り決めで、航空事故の調査は発生国が主体となり、その他の国は調査に関わる情報を勝手に発信できない。このため当時のバーネット NTSB委員長(故人)が業を煮やし、同紙にひそかに情報提供するようシュリード氏に指示した。シュリード氏は「連邦航空局(FAA)や米議会が、同型機への問題の波及を気にしていた」と当時の事情を語った。
米国では、故意や重大な過失がない一般的な航空事故での操縦士らの刑事責任が免責され、NTSBの権限も強い。日本は群馬県警の捜査が並行し、事故調の独断で情報を出せない事情もあった。
以下省略
- そして8月22日、2度目の現地入り(初めての現地調査!)で、修理された隔壁の一部に一列しかリベットが効いていない箇所があることを発見しました。
- 8月26日には 米国の“国家運輸安全委員会(NTSB)” 本部はストライエーションと呼ばれる金属疲労痕を見つけています。
しかし 8月27日の日本の事故調査委員会による中間報告では、修理ミスについて触れられておらず、9月に入っても日本側は公表をためらっていました。
このPRAの作動には14000フィートのアネロイドスイッチが作動してから5秒間のタイムデレイがあったと記憶していますが、客室高度警報とPRA(Pre Recorded Announce)は別々のスイッチを使用していますので、「ドーン」という音の2秒後に10000フィートのアネロイドスイッチが働き、9秒後(タイムデレイを計算すると4秒後)に14000フィートのアネロイドスイッチが作動した事になります。
B747の垂直尾翼は下図のような構造をしています。
- -400の図の黄色線はフロントスパーとリアスパーで、黄色線で囲まれた部分がアフトトルクボックスです。
- フロントスパーの前方にはフロントスパーとAuxiliary Sparで形成されるフォワードトルクボックスがありますが、こちは前縁のフィンを形成するためのもので、主な荷重はアフトトルクボックスが受け持ちます。
- APU(補助動力装置)はJA8119とタイプが違いますが位置は同じです。
外部からの衝突やミサイルでフォワードトルクボックスだけを残してアフトトルクボックスを飛散させるのは無理ですし、まして一度にAPUを脱落させるのはさらに無理です。
この計算結果は、デジタルフライトデータレコーダー(DFDR)で異常発生時、機体が11トンの力で前方に押し出された後、下に押し下げられているが、計算により導き出された破壊順序と極めてよく一致した
出典:日本航空123便墜落事故- これに内圧がかかると外板が膨らみ、右図のようにストリンガーとリブの結合部が壊れます。
- さらに内圧がかかると次々にストリンガーが壊れ、左下図のように外板が膨らみ、トルクボックスの強度が低下します。
圧力隔壁からの高速の空気流は、一気に隔壁後方のStabilizer Compartmentに噴きこみました。
- 0.2秒後APU(補助動力装置)コンパートメントの防火壁とAPUを脱落させる。
- 0.3秒後に垂直尾翼アフトトルクボックスの上部のリベットがとび、これによってアフトトルクボックスの捩じり強度が著しく低下し破壊が始まります。
- 0.4秒後以降に垂直尾翼の大半が破壊されて飛散しました。
【垂直尾翼破壊のシナリオ】
図出典:File:Japan Airlines 123 - Rear destruction process ja.svg
■プレッシャーリリーフ・ドアが開かなかった事は問題では無い
またAPUコンパート前方のスタビライザーコンパートのアクセスドアは、プレッシャーリリーフドアを兼ねています。
そのため「これがオープンすれば一連の破壊を防げたのではないか」「これが開かなかったのはJALの整備ミスではないか」と非難する人もいますが、これは間違いです。
このドアはAPUからの圧縮空気のダクトの破損に対しての、オーバープレッシャーを防ぐためのもので、「圧力隔壁が破壊し、大量の空気が一気に流入する」という可能性は想定外です。
また圧力隔壁破損に対しては噴きこまれる空気量に対してあまりにも小さく、ドアが開こうが開くまいが結果は同じです。
【Pressure Relief Door Open時の垂直尾翼破壊のシナリオ】
図出典:File:Japan Airlines 123 - Rear destruction process ja.svg
JA8119の修理作業は事故から半月後の1978年6月17日~7月11日、羽田空港においてボーイング社の修理チームによって行われた。 後部圧力隔壁は主に下部を損傷していた為、ボーイング社は隔壁の下半分、Lower Bulkheadをそっくり交換するという修理方針を出していた。
次の【図1】は圧力隔壁の左半分を拡大して後部から見た図です。
L18を境に上部圧力隔壁と下部圧力隔壁に分かれますが、下半分の下部圧力隔壁を交換しました。
しかし送られてきた下部圧力隔壁は、下図のベイ2とベイ3の部分が短く、2列リベット結合でなければならないのに、1列リベット結合しかできません。
【図1】
図出典: “失敗知識データベース-失敗百選 御巣鷹山の日航ジャンボ機の墜落”
そのために下図中央のCorrect Repairのようにリベット3列幅のSplice Plate(水色)を入れて上部隔壁、下部隔壁共にリベット2列で締結する修理指示書が出されました。
■誤魔化しの修理
ところが下図中央のようにリベット3列幅のスプライス・プレートを入れるべきところ、下図右図のようにリベット2列幅のスプライス・プレートとリベット1列のダミー・プレート(下図ではFiller Plate)に分割しました。
図出典: “Fire on the Mountain: The crash of Japan Airlines flight 123”
その結果、上部圧力隔壁のリベットラインにクラック(赤色の線)が入り、破断しました。
出典: “Lessons Learned From Civil Aviation Accidents Accident Overview ”
1984年 12月に行われた、隔壁修理後 7 回目で最後の C チェックでは、上記の上部隔壁のリベット列の亀裂は、長さが 10 mm に達したと考えられています。
そして事故が起きた1985年の8月までに、隔壁は修理以来12,000回以上の飛行を蓄積し、金属疲労は限界点に近づいていました。
写真出典:“Fire on the Mountain: The crash of Japan Airlines flight 123”
そして一気に破壊され、非与圧域のスタブライザーコンパートに与圧された空気が噴きこみました。
図出典:File:Japan Airlines 123 fig32 Damage to af pressure bulkhead.png
この事故後再発防止のため、次のように改修されました。
- 垂直尾翼内に空気が噴きこんだ点検孔はAccess Plateで塞がれました。
- 油圧系統には一定量以上の流量が流れると遮断するHaydroaulic Fuseが各系統ごとに設けられ、作動油が全て流出する事が無いように改修されました。