無礼なコメントに対する回答・・・ドイツとフランスの電力収支 | 夢老い人の呟き

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昨年8月5日に書いた<<フランス原発比率低減と、フランスとドイツの電力収支>>という記事に、次のような失礼なコメントが来た。

注)下線は筆者追記。

 

 

 

3. あなたは大ウソつき

 

 

ドイツが電力を14777Mwhフランスから輸入(原子力発電)ドイツが電力をフランスへ500弱Mwh輸出(これが真実です)ドイツは今でも原子力発電 14,1%石炭41,7%石油天然ガス9,9%風力、太陽光、バイオマス、水力、家庭ごみ合わせて30,1%これが現状です。いかに私がヘタレとはいえ、「あなたは大うそつき」といわれて黙っているわけにはいかない。
この無礼で高飛車なコメントに対しては、以後コメント禁止としたので、この記事をもって説明したいと思う。
なおコメントの後半のエネルギー源別の割合は、私が何度も引用している
ドレスデン情報ファイル<<発電のエネルギー源別内訳>>の2015年度のデータであり、これは間違っていない。



■欧州各国間の電力ネットワークは大変複雑でメッシュ状になっているが、さらに、ある国を経由して別の国に輸出するなど、より複雑で、物理的な電力のやり取りだけを見て輸出入を知ることはできない。

例えば下図はもう古い2010年の商業ベースの図であるが、この図からは分からないがフランスからドイツに送られた電力はスイスやオーストリアなどに送られている。
このドイツを経由するだけの電力「物理的な電力フロー」には含まれるが、「商業ベースの電力フロー」には含まれない。


 

 

 

 

 


■それを自然エネルギー財団<<ドイツなしには成り立たないフランスの電力 >>2015年9月7日)より引用して説明すると、次のようになる。
TWh;テラ・ワット・アワー(キロ=1000、メガ=百万、ギガ=10億、テラ=1兆)

まず、フランスとの関係を見る前にドイツだけを見れば、物理的な電力フローではドイツは35.7TWh(テラ・ワット・アワー)(筆者注;2015年度は50TWh位の輸出超過となっている)輸出超過であり  、発電容量もピーク時をゆうに上回る設備を抱えており、あえてフランスから電力を輸入する必要はない。

ところが
欧州送電系統ネットワーク(ENTSO-E)が公表している統計データ  に よれば、物理的な電力フローで見ればドイツはフランスから14,788GWhの電力を輸入しているのに対して輸出はわずかに831GWhであり、フランス の輸出超過である。

★しかし、フランスの高圧送電系統の運営会社RTEが公表しているデータでは、実際の商業取引ベースで見た場合、2014年にはランス はドイツから13.2TWh の電力を輸入している一方、輸出はわずかに7.3TWh であり、純粋な電力輸入国 となっている 


☆なぜ物理的な電力フローで見てフランスが輸出超過になっているのかと言えば、フランスの電力がドイツを経由して他の諸国へと販売されているからである。

注)下表はフランスの電力輸出入なので、商業取引ベースではドイツの輸出超過となる。

 

 

 

 

 

 

要するにフランスがドイツの電力網を経由してスイスやオーストリアへ販売する電力を含めれば、フランスはドイツに対する電力輸出国。
ところが、独仏2国間でみれば、フランスはドイツに対して、大幅な電力輸入国というわけである。

同じことはフランスとスイスの間にもいえ、フランスはスイスに対して商業ベースでは輸出国であるが、物理ベースでいえば輸入国である。
訂正削除


■ついでにドレスデン情報ファイルから<<ドイツの電力輸出入>>を見ると下のグラフのように、年ごとに輸出超過になってゆく。

 

 

月ごとの電力フローを見ても、殆ど輸入超過となる月は無い。
 

 

同じくドレスデン情報ファイル<<発電のエネルギー源別内訳>>からエネルギー別の発電割合を見ると、ご覧のように年々原発割合が減り、2015年は再生可能エネルギーが30%を超えた。

 

 

 

注)国内総発電量(輸出分を含む)に占める各エネルギーの割合。2015年は暫定値。
 資料:Arbeitsgemeinschaft Energiebilanzen e.V "Bruttostromerzeugung in Deutschland ab 1990 nach Energieträgern"             (2016.01.28)

 


なお、ドイツは石炭火力発電が減っていないという反論もよく聞くが、これについては<<原発を停止してもドイツはフランスへの電力純輸出国>>に次のように書かれている。

石炭火力の新設は原発停止と無関係

ファイナンシャルタイムズは、発電源の25%近くを占める原子力を排除したため、「このままでは2010年から2015年に9基の石炭火力発電所を稼働さ せることになる」と書いている。ドイツの石炭火力新設を原発停止と結びつけるのも、よく使われるロジックである。だが、これも誤りだ。これらの石炭火力新設計画は、原発停止の決定の前、2005年から2007年に行われたものだ。福島原発事故がなかったとしても、これらの石炭火力は建設されただろう

石炭火力発電所の新設は、気候変動対策の観点から望ましくないのは言うまでもない。欧州は排出量取引制度(EU-ETS)を2005年に導入し、発電所な どからの二酸化炭素の排出には、排出権の確保を必要とすることにした。石炭火力などの増加を抑制することを目指したものだったが、排出権価格が低迷していて、燃料の安い石炭火力の増加を抑えられないでいる。火力の中では相対的に二酸化炭素排出量の少ない天然ガス発電は反対に減少してしまった。ここから学ぶ べきことは、排出量取引制度で二酸化炭素の排出抑制をしようとするなら、石炭火力の経済的メリットをなくす程度にまで排出権価格を十分に高くしなければな らない、ということだ。

ドイツは、全ての原発を2022年までに廃止することを決定しつつ、温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比で40%削減する目標を堅持して いる。省エネルギーの推進とともに、2025年までに40~45%の電力を自然エネルギーで供給するという目標を掲げているのもそのためだ。


私は礼儀をわきまえたうえでの意見や指摘、異論は歓迎します。
コメントを通じて議論することにより勉強させてもらえますから。
しかし無礼な人からのコメントはお断りします。