「ようこそお出で下はりましたなぁ」
夕刻となり、
木屋町通りではもう、俄然人混みと喧騒に拍車が掛かっていると云うのに…
高瀬川を隔てたこちら側は、
細い路地に、昔ながらの町屋が並んでいて、
豆腐屋さんとかおばんざいの店とかがこじんまりと点在する隔絶された空間になっています。
その路地の中に、
ひっそりと佇むようにこの旅館があります。
ホテルの空調の効いた密閉状態の客室で一晩過ごすだけで、
喉をやられて困ったと云う経験はないでしょうか?
口をポカンと開けたまま眠っているからなのかどうかよく判りませんけど、
私の場合は、マスクを携帯して防御してみたりするのですが、
加湿器を備えたところもあるなど、
空調で室内を乾燥させておきながら一方で加湿するという、
「資源と文明の無駄使い」のような気が…

(こんな廊下を目の前にすると子供時代によくスケーティングをしたのを思い出す中年おじさん)

(「百福篆」「百壽篆」の屏風 古いです 由緒は…?)
ですから、
こうした隙間風に恵まれたような佇まいの宿に、
(例えが悪くてすみません)
田舎の実家に里帰りしたような郷愁と寛ぎを感じるのです。
廊下を歩くときの軋み…
急傾斜の階段を昇り降りする際に掴む手摺の艶やかさ…
部屋の波打つ古畳…
高瀬川の涼しげな川音…
(台風接近による増水でいつもより激しかったようですが)
朝になって川向うから聞こえてくる瓶や缶が擦れる生活音…
人々が活動を再スタートさせるときの活気が伝わってきます。
女将さん手作りの純朴な朝食は…
出汁巻き卵にがんもどき、
冷奴はお向かいの豆腐屋さんから出来立てを仕入れてきたもの、
御飯に味噌汁、焼きのり、お新香…
もうこれで京都の地元ならでは朝を迎えた気分になれるのです。

…お値段の方は…
1万円前後が相場のようですから、
ちょっとビジネスホテルより高いかな?
京都だから、そんなものと思えばそんなもののような?