沖縄では…
本土では根付く事のなかった風習や、
或いは、廃れてしまったような風習が、よく残っています。
例えば、言葉使いでは…
学生の頃の授業でしか接する事がないような、
「給わる」とか「候」とかの中世時代の言葉は、
「○○タボーリ」とか「メンソーレー」とかの原型な訳です。
生活面でも…
かつては日本の家屋の玄関の上がり框(アガリガマチ)等に設えられていた「屏風」は、
沖縄では、玄関前の敷地で悪風除けに設けられている「ヒンプン」の原型です。
「昆布」が沖縄では採取できないのに日本一の消費量なのは…
江戸時代の「北前船」交易により「蝦夷」の海産物が「薩摩」を介して大量に持ち込まれたのが発端なんです。
そして、
今では東北の一部にしか残っていない「イタコ」…
沖縄では「ユタ」と称され、人口140万人中3000~1万人ほど(かなりアバウトです)が現役で存在していると言われています。
この「ユタ」の文化が沖縄社会では日常的茶飯事にまで浸透している事は改めて説明するに及びませんが、
「ユタ」が女性特有の職能なのに対して、男性の場合は…
「サンジンソー」(三世相)と称われています。
これは、「過去・現在・未来」の三つの世を相する(観る)と云うもので、
主に「運勢相談」や結婚・転職・転居などの「吉凶判断」とかを職能とする「易者」さんのことです。
そして、話の本題はこれから~
妻の東京時代の友人の長女が、
目出度く婚約していたんですが…
マリッジブルーにしては随分早くから浮かない姿で悩み事を抱えていた様子だったんで、
それで気分転換にと沖縄旅行に単独で行ったんですが、
その沖縄から戻ってきた途端に「婚約破棄」宣言…
ここで「沖縄の父」と地元では有名な「易者」さんの登場です。
(「新宿の母」に対抗してるのでしょうね。多分)
この易者さんは、国際通りにある喫茶店の経営者…
航空会社の客室乗務員の間で「とてもよく当たる」と噂が広まり、
有名になった男性「易者」さんです。
福岡県出身の方ですが、沖縄では四半世紀以上の実績があり、
地元にしっかり定着していて「沖縄の…」と称ばれる存在です。

で、その彼女は、
或る日、婚約中の彼氏の運転でドライブ中に、
危うく轢きそうになった老婦人に対し、
過剰にキレる彼氏の姿を目の当たりにして嫌悪感を抱いていたらしいんです。
そして知人から聞いていた件の「沖縄の父」の喫茶店へ…
初対面の挨拶もそこそこに、
お店の隅っこのテーブルに案内され、席に座るや否や、
「あなたのご希望は"結婚"の悩み事ですね~」
といきなりの本題入り…
彼女の手相を観るだけで、
あとは顔の表情とか、話し方とかの情報で、30分弱…
「これはいけませんねぇ 今からでも直ぐに別れないと 大変な事になりますよ~」
ズバリと指摘されたそうです。
「婚約破棄宣言」で驚く両親を説得し、
怒る婚約相手側にひたすら謝り、
式場予約の取消から、
披露宴案内状も出していましたから大変な騒動になってしまいました。
「結納金」の返還は勿論の事「3倍返し」…
やっと形がついた夫妻…
肩身の狭い思いをほっと緩めたその夜…
今度は次女から突然連絡が…
「父さん、実は 結婚しようと思うの 実は赤ちゃんが…」
それを聞いたご主人は、
電話口で卒倒…
重度の疲労で3日間寝込んでしまいましたとさ…
沖縄では「ユタ」や「サンジンソー」を巡ってのこのような展開の騒動は現在でも茶飯事なんです。
「ユタ買い」と揶揄されるように、
極端に依存してしまって身上を潰してしまうケースもあるようです。
沖縄では、
「現世」と「あの世」との隔壁が本土の考え方では予想がつかない程に薄いです。
「死者」との今生の別れを惜しむ気持ちから頼ってしまう…
尋常の世界では判る筈のない助言につい縋ってしまう…
大なり小なり、誰の心にも生まれ得る他力本願的感情ですが、
何事も程ほどにが肝要かと…