(事業不振も、運気に恵まれて…)
ところが、Aさんの本業は小売酒屋さん。
幸い、近くに某一流家電メーカーの地方工場があり、本業の方はその行き帰りの通勤客のお陰で地理的な条件には恵まれていたようです。
その内、この地方にもコンビニエンスショップの系列化の波が押し寄せるようになり、Aさんの店も某CVS社のFC店として大改装。
瞬く間に、「田舎の雑貨屋さん」から「小奇麗なコンビニ屋さん」に大変身してしまいました。
周辺は大企業の通勤客の通り道でしたから、商売は繁盛し、大忙しだったようです。
(世の中の運気の三要素は「天・地・人」)
さしずめAさんは「人」運には恵まれませんでしたが「地」運に助けられた、という事でしょうか。
しかしながら、こんな上手い話は更に展開します。
CVSのFC店というのは、毎月結構な「チャージ料」を取られます。
毎月の収入からチャージ料・店の維持費・人件費を差し引くと、残余は案外ささやかなようで、客入りが華やかだった最初の1年は何とか凌げたものの、そのうち中古車ガレージ店での借金の返済金を工面すると、家族の生活もままならない状態に戻っていたようです。
そして、この「チャージ料」の支払が滞るようになってしまいました。
人の運は「天」のみぞ知る~
話は更に三転目。
今度は「天」運に助けられるのです。
小売酒屋さんは「酒販免許」というものを持っています。
で、この免許は当時地域制限されながら税務署から許可されているので、誰彼が取得できるものではありません。
だから「価値」が出ます。
しかし、この免許の売買は認められていませんから、この制限をクリアするために罷り通っていたのが「営業権譲渡」という取引です。
そんな需要と供給バランスから「ブローカー」が暗躍していたりして、当時は結構生々しい業界でした。
当時の酒量販店が系列化を進めていったのも、この方法だったようです。
Aさんが所属していたCVS社もこれに目をつけました。
首の回らなくなったAさんは、チャージ料金未払分と引き換えに、さっさと免許を手離してしまったのです。
CVS社は、「営業権の購入」ということで、チャージ料金未払分を相殺しただけで、体良く「酒販免許」を入手したのです。
その後、Aさんはどうなったのでしょう…
どうもなっていません。
今でもその店に立ち、毎日お客さん相手の商売に勤しんでいます。
「免許」を手離し、コンビニのオーナーではなく、雇われ店長という立場には変わりましたけれども。
Aさんの決断力はとにかく迅速でした。
その間の4年間は~
「転石苔むさず」と言われますが~
結局は財産を食い潰してしまった訳ですけど、ガレージショップの失敗は綺麗に帳消しとなりました。
まさに「転んでもただでは起きない」という人生を垣間見せてくれました。
人生の浮き沈みは、これほどまでに激しくはなくても、大なり小なり似たようなものです。
一つの悲運を嘆くより、
次の行動をスタートさせるタイミングを見逃さぬよう、常にアンテナを張り巡らせておくこと~
それが肝要かと…