「風車祭」でも「ぼくのキャノン」でも感じた、物語の後半から一気に畳み掛ける池上永一さん独特のテンポの良さは健在です。
キャラの濃い女性の登場人物が必ずいて小気味良いのです。
敵役にも、憎まれ役ですが味のある女性がいて、ストーリー展開を面白くしています。
キャラが生き生きしているから、そのうち、誰が主人公か、敵役か、憎まれ役か分からなくなってしまいます!
ストーリー重視で、キャラが平板になりがちな邦作にはない、記憶に残る作品を出してくれる作家だと思います。
映画になったら面白いでしょうに…。
で、この「シャングリ・ラ」は、ついに沖縄の舞台を飛び出してしまいました。
市井の人々の人生観や生活観をベースに展開する「レキオス」までの作品群は沖縄の風土・風習を感じさせてくれました。
それは「沖縄への愛着」であり、その内奥には「自然に対する畏敬」のメッセージのようなものがあるようです。
それが、「レキオス」で「ペンタグラム」をキーワードに増幅し、「シャングリ・ラ」で爆発した!、と言ってよいのではないでしょうか。
人間の傲慢さと、それでも克服できない自然に対する畏怖感(恐怖感)とで物語は錯綜します。
その錯綜した物語の中ですら躍動するキャラクター達が瑞々しく、現実離れした行動様式すら楽しいです。
ところで、神武天皇の陵墓を暴いたのは、バチ当たりな気がしますが、当の本人が野望を抱き暴れていたのだから、きっと大丈夫なのでしょう…。