薫田監督は、練習以外でも選手に自主性を持たせるための環境づくりに尽力する。合宿や遠征は現地集合、宿泊は一人一部屋が基本らしい。


「なれ合いになるな」


これが選手へのメッセージだという。


それで思い出したのが、1981年の同大ラグビー部だ。

V3ばかりが話題になるが、実はその2年前に、同志社は大学選手権を制覇している。そのときのNo.8、T田君と社会人チームで一緒になったのだが、彼が意外なことを言うではないか。


T田 「3列は決して仲が良いいとは言えませんでした」

私  「ウソやろ?お前ら、絶妙のトリオに見えてたぞ」

T田 「少なくとも、練習外での付き合いは無かったですね」

私  「せやけど、お前ら、協力的やったやん。ディフェンスはカバーし合うし・・・・」

T田 「アタックのフォローも早かったでしょ?」

私  「そや・・・見事なチームワークやったと思うんやけどなぁ」

T田 「あいつらにだけは非難されたくないから、ベストのプレーを心掛けたまでです」

私  「・・・・・・」


なるほど、そういう緊張感が良いプレーを引き出すこともあるんや、と納得した記憶がある。確かに、なれ合いから進歩や成長が生まれることはないだろう。



「ラグビー日本A代表の薫田監督が取り上げられてますよ」


後輩からそう教えられ、添付されていた記事を開いた。

8月19日付の日経産業新聞の記事だ。

書き手は「運動部 北西厚一」とある。

この北西記者は同志社大学ラグビー部のOBである。彼は実に読み応えのある記事を書くが、今回も例外ではなかった。



薫田監督が言う、


「ラグビーは1チーム15人で行なう競技ですが、実質は1対1の局面の集まりと言っていい。組織力を高めるには『個』を徹底的に鍛える必要がある」


ここで思わず膝を打った。全く同感である。


同志社が大学選手権で3連覇したときの1年目、1983年には関東同志社スポーツユニオン幹事長のT道がいた。彼がいつも力説するのは、


「全体練習は1時間から長くても1時間半です。その代わり、みんな、その倍の時間、個人練習をしてました。要するに、体力付けて、個人スキルを上げてから全体練習に参加せえ、ってことですわ」


T道は続ける、


「そんな奴ばっかりが全体練習に参加するんで、もの凄い緊張感がありました。大袈裟ではなくて、殺るか殺られるか、みたいな殺気が漂ってました」


一人ひとりが強くて、一つのポジションを奪い合う・・・・部内マッチもさぞかし激しかったことだろう。

(続く)


明治大に19-52、

東海大には5-61で敗れたらしい。


「なんで負けたんですか?」と尋ねられると、こちらもついつい腹立ち紛れに、「弱いからです」と答えてしまうが、負けたときこそゲームの模様をビデオで良く振り返るべきだ。弱いから負けた、というより、得点より失点が多かったから負けたのであって、失点には必ずその原因になった「あっちゃーっ」という顔を赤らめるミスや、思わず下を向いてしまう1対1での力負けみたいなものがあると思うのだ。


全ての失点がノーホイッスル・トライなら建て直しも難しいだろうが、ラグビーの得点はジャンケンに似ていて、「ジャンケン・ポン」、「あいこでしょ」、「あいこでしょ」・・・という2次攻撃とか3次攻撃でしか地域もトライも容易には取れないものだと思う。だから、敵ポールなら「あいこでしょ」に持ち込める最初のディフェンスが大事だし、マイボールなら「あいこでしょ」の間にターンオーバーだけはされない集中力が必要なのだ。


秋が深まってからのゲームでなくて良かった。

漫然と「弱い」などど片付けるのではなく、失点の原因となったプレーを特定して欲しい。明治はそれをきちんとしたから、春の辛勝の憂さを晴らせたのだ。


前を向いて行け。


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