「生きる悪知恵」

漫画家、西原理恵子さんの著書。


ボルネオ7番のブログ-生きる悪知恵


一般から募集された質問に西原さんが答えるという形を取っているが、歯切れが良いというか、答えに迷いと妥協がない。「おっしゃる通りです」と手を合わせたくなる回答もあり、気持が明るくなる。


最初の質問は22歳の大学生から。就職活動で70社受けたが内定を貰えない。もうどうしていいか分かりません、という悲痛な質問だ。


これに対する西原さんの答え。

先ず、「70社って言っても給料のいい順とか有名な順に受けてたら、それはダメだね。私だったら下から攻める。明日のおまんまの方が大事だから」と突き放す。言葉はきついが西原さんは正しい。目的はおまんま代を稼ぐことで、就職はその手段だからだ。


そして、西原さんはこう続ける。

「高知県で社長さんがたくさん出るので有名な中学校があるんだけど、なんでかっていうと、そこは『少年院』と呼ばれるくらい柄が悪いところで、卒業しても誰も雇ってくれないのね。しょうがないから自分で会社を興すという。もともと不良だから逃げ足は速いんで、ダメだと思ったら撤退するのは早い。だから経営に向いてるの」


恐れ入りました!ヽ(゚◇゚ )ノ

要約すると、藻谷さんの主張は「日本経済の成長エンジンは団塊の世代だった」ということになるのだろう。1965年から70年にかけて団塊の世代が大挙して就職し、これが「いざなぎ景気」の主要因となったと説かれる。


続いて80年代後半、ちょうど団塊の世代が40才を超えた頃に住宅バブルが発生しているが、これも団塊世代がマイホームの確保に走ったことが原因だと説明される。団塊世代は親の数の倍はいたと言われており、親から家を相続できない団塊世代の大半は自分で家を求めるしかなかったのだ。


ともあれ、この住宅需要は短期的というより一時的なものだったのだが、当時の不動産業界は「景気が良いから不動産が売れる」と思ってしまう。多分、同じようなことがあちらこちらの業界で起こり、日本は供給過剰の生産体制を作ってしまうことになったのだろう。


ボルネオ7番のブログ-彼岸花
(本文とは関係ありません。近くの公園で美しく咲いていた彼岸花)


さて、2010年から15年の5年間に生産年齢人口(消費年齢人口)が448万人減るという予測があるそうだ。これらの人々が全く消費しなくなる訳ではないが、仮にこの方々の消費が半分になれば、224万人の消費者・・・名古屋市の人口に匹敵・・・がいなくなるに等しくなる。市場が縮小していく音が聞こえてきそうだ。


藻谷さんは「対策」にも触れておれらる。

①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めよう、

②生産年齢人口に該当する世代の個人所得を増やそう、

③(生産年齢人口+高齢者)の個人消費を増やそう、


いずれもご尤もだ。ただ、なかなか抜本的な対策にはなり得ない。何たって、大急ぎで子供を作っても生産年齢人口に仲間入りするまで15年も掛かるからだ。何とか一挙に生産年齢人口を増やす方法はないものか。


例えば、日本の農業には後継者がいないと聞くが、日本の技術を必要としてくれるアフリカや南米の発展途上国に日本人技術者10万人を送る代わりに、100万人の学生や労働者に来日してもらうというのはどうだろう。そういう提携国が10カ国あれば、900万人の人口が増える。


団塊世代には「僕たちが新しい市場を作った」と言う人が多い。以前は、「なんと偉そうに・・・」と思ったが、最近は「そうかも知れない」と思う。団塊世代そのものの人口が圧倒的に多いが、その後に続いた私たち昭和30年代生れもそのライフスタイルを踏襲しているからだ。人が集まると町になり、一定の需要が生まれ、新しい産業が興る。そういう消費者として人を見るきっかけを与えてくれた本かなと思う。

藻谷さんはこれを、「日本を蝕む内需不振という病気」だと診断し、その犯人は国際競争でも地域間格差でもなく、「人口変動」だと説かれる。更には、総人口ではなく、生産年齢人口の変動こそが問題なんだとされる。


ここでいう生産年齢人口とは、15才から64才までの人口で経済学的には「現役世代」と定義されるが、実際には稼いで消費する「消費者年齢人口」と呼ぶ方が分かり易いだろう。


さて、この消費者年齢人口の変動だが、総人口が増えているとされる首都圏でもこんなことが起こっている。首都圏一都三県、東京、神奈川、千葉、埼玉の2000年から2005年までの人口変動だ。


総人口の変動: +106万人(増加)

内、0才~14才の変動: ▲6万人(減少)

 15才~64才の変動: ▲7万人(減少)

 65才以上の変動: +118万人(増加)


この期間、65才以上の高齢者人口は全国では367万人増えているので、3人に1人は首都圏民だったことになる。高齢化は地方特有の現象ではなく、首都圏でも起こっているのだ。


人口が増え、市場が拡大する筈の首都圏でも、65才以上の高齢者が主力なら、「もう車もスーツも要らない」ということになってもおかしくない。そして、今年2012年は団塊の世代の中から1947年生れの方々が65才になる年なのだ。来年は1948年生れ、再来年は1949年生れの方々が現役世代から高齢者の仲間入りをされる。



(続く)