インターネットで本を購入すると、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」みたいな案内が出てくる。その案内に素直に従い、「70才の正解」から「老いては『好き』に従え」、そして「人生は70代で決まる」にたどり着いた。これは綾小路きみまろさんが書かれた本だ。



ステージではオジサン・オバサン相手に失礼なことを言いたい放題なのに、なぜ皆さん大喜びして笑い、きみまろさんに大きな拍手まで送るのか、それが不思議だったが、その理由が分かったように思う。きみまろさんは、そういうオジサンやオバサンが大好きで、頭が禿げようが、体型が変わろうが、はたまた夫婦間の恋愛感情が冷めようが、あなたはあなたのままで良い、堂々と生きてください、というエールを送っておられるのが分かるからだろう。

そのきみまろさんを感心させた老人ホームにいる88才の老人が出てくる。「長生きの秘訣は?」と尋ねられた老人は「そりゃ決まってる。息をするのを忘れないことだ」(笑)  更に「あの世はどんなところでしょう?」と尋ねられ、「そりゃ良いところに決まっている。あの世から戻ってきた人間はいないからな」(笑)

きみまろさんを唸らせるとは大したものだ。最後に、きみまろさんの漫談のネタを一つ。場所は病院だ。

「患者さま、どうぞ、お入りください。どうなさいました?」
「せ、先生、私、このシワ、隠したいの。どうにかなりません?」
「奥さん、シワを隠す前に、その顔を隠しなさい。そうすれば、シワも分からなくなるから」

私がこんなことを言おうものなら間違いなく病院送りだ(笑)

同志社混声合唱団(東京)でお世話になったS橋さんから第52回新美展のご案内を頂いた。新美展は全国公募の美術展のようだが、S橋さんの作品3点が入選を果たし、内1点が「奨励賞」を受賞したとのこと。これは見に行かねば、と上野の東京美術館へと急いだ。



パンフレットを見ると、S橋さんの作品は「マチュ・ピチュ」、「京女 実光院庭園にて」、「鞍馬の火祭り」とある。なんとなく、受賞されたのは「鞍馬の火祭り」のような気がしたのだが、この予想が当たった。


燃え盛るたいまつの炎と、その下にうごめくふんどし姿の男たち・・その炎の熱や男たちの息遣いが伝わって来るように感じる勇壮な作品だった。しばらく絵の向かい側にあった椅子に座って眺めていたが、何人かの方が足を止め、この絵に見入っておられた。


「京女 実光院庭園にて」は打って変わり、夏の夕暮れだろうか、団扇で風を送りながら親しく話す二人の女性の後ろ姿を描かれている。深みの異なる緑に真っ赤な敷物が鮮やかだったが、左の女性のピンクの浴衣が絵をとても柔らかで温かな作品にしていたように思う。


「マチュ・ピチュ」は何としても訪れたい場所なので、しばらくじっと眺めていたが、ここに住んでいた人々は既に亡くなって建物だけが残り、その建物もいずれは風化するのだろうが、背景にある山々と雲はこれからもずっと存在することに気付いた。S橋さんもそう思われたのだろうか。今度、聞いてみよう。

東京バーバーズショウのコンサートに出掛けた。いつも感心するのは、全て「暗譜」、しかも「英語」、 更にはリズムに合わせて踊ったりもされる。だから、練習の成果を発表したいというよりは、あくまでもお客様に楽しんで頂きたいという精神がステージから伝わってくるコンサートだ。



今回のコンサートはゲストも素晴らしかった。2003年に大学のメンバーで結成された Vocal Spectrum という4人組のグループで、2004年にはバーバーショップ国際大会のカレッジの部で優勝、2006年には一般の部で優勝という輝かしい実績を有し、2023年にはバーバーショップ・ハーモニー・ソサイエティの殿堂入りを果たしておられる。

パンフレットのそういう紹介から期待に胸を膨らませて演奏を待ったが、最初の曲「Go the Distance 」(ディズニーアニメ「ヘラクレス」の主題歌)を歌い始められた途端、会場がシンと静まり返り、その後、ため息が回りから聞こえて来た。私は思わず隣にいた三女と顔を見合わせたが、歌声が心に染み込んで来るような、美しく透明感のあるコーラスだった。

以後、客席に笑いが起こる演奏もあれば、しみじみと聴き入ってしまう演奏もあり、私にとっては期待を大きく上回るステージだった。又、ベースの声がいつも美しく安定していて、合唱の練習で「ベースが下支えしなくてはいけません」と注意される理由が分かったように思う。