100あるテーマを読み終えた。とても読み易く感じたのは、著者の枡野さんが難解な言葉を使わず、普段の生活で良く見掛ける光景や誰もが経験しているに違いない迷いや悩みを例に出しながら解説されているからだろう。

ここはもう一度読もう、とページの橋を折ったテーマがちょうど十になった。この間は「呼吸」と「いらないものを捨てる」について触れたが、その次に印象に残ったのは「ひとりの人と深くつき合う」というテーマだ。

枡野さんの言葉だ。
「最近の世の中は、上辺だけの人間関係に目が向いているような気がします。つき合いは広いほうがいい。人脈が大事。もちろん、仕事の世界ではそういう価値観もあるでしょう。でも、プライベートなことに関しては言えば、知り合いなんか少なくてかまわない。そもそも、心の底から信頼し合える人間なんて、そんなに多くいるはずはないのです。百人との浅い関係より、たったひとりとの深い関係を築くほうが豊か。私はそう思います」。

私もそう思う。
仕事の世界でも頼りになるのは名刺の数ではなく、お互いのことをどこまで知っているか、お互いに相手のために一肌脱がねばならないと思っているかどうかという深さだと思う。そこまでの信頼関係を築くには時間と努力が必要で、名刺を交換した位でいきなりそうなれるわけではない。

プライベートな世界では、もっとそれが顕著になるように思う。私は550枚の年賀状を出し、500枚の年賀状を頂いている。少なくはないと思うが、何も聞かずに100万円貸してくれとお願いした場合、それに応じて下さるのは数名だろう。逆に、私がそう頼まれてそうする相手も数名だろう。1万円ずつ100人からお借りできる人脈も有難いとは思うが、ピンチを救って下さるのは、何も聞かずに時間やお金を融通して下さる方だろう。実際、そういう相手との食事や議論は実に楽しい。やはり数ではなく深さだと私は思う。

禅
同級生の死は早過ぎたと思うが、人間誰しも明日のことは分からない。そんなことを考えていたら、スティーブ・ジョブスの言葉に巡り合った。彼にガンが見付かり、その手術を受けた翌年、2005年にスタンフォード大学の卒業式で学生に語り掛けた言葉らしい。

"Remembering that you are going to die is the best way I know to avoid the trap of thinking you have something to lose. You are already naked. There is no reason not to follow your heart."

「あなたもいつか死ぬんだということを思い出すのは、何か失うものがあると考えてしまう思考の罠に陥らないための最良の方法だ。あなたは既にまっ裸だ。心の声に従わない理由など何一つない。」

意訳すれば、自分もいつかは死ぬということを思い出せば、失うものなど何もないことに気付く筈だ、心が望むままに生きれば良いのだ、ということだろうか。亡くなった同級生も、ラグビーの練習を終え、「先に風呂に入るぞ」とタオル一枚持って風呂場に向かうように去って行ったように思う。自分もそうしていずれ去って行くことになるなら、確かに失うものなどないし、思う通りに生きれば良いのだという勇気が湧いてくるように思う。
大学時代、一緒にラグビーをしていた同級生が亡くなった。直ぐに実感が湧かないのは、グランド狭しと駆け回っていた頃の記憶が今も鮮明だからか。声も顔もハッキリ覚えているのに、もう声を聞くことも顔を見ることもできない。それがものすごく不思議に思えた。

友人とは有難い存在だが、一緒にラグビーをした同級生にはことの他、思い入れのようなものがある。互いの信頼や友情が既に身体の一部になっているような感覚とでも言おうか。親近感というよりは一体感に近い。それだけに、その一部が欠けたのだと思うと、寂しさよりも痛みを感じてしまう。

友人や友情に関しては多くの人が含蓄のある言葉を残しておられる。昨夜は自分の心境に近いものや、少しでも気持ちが楽になる言葉がないかと、インターネットで探し続けた。その結果、二つ、心に染み入るような言葉を見付けた。

「友人とは、あなたについてすべてのことを知っていて、それにもかかわらず、あなたを好んでいる人のことである」(エルバード・ハーバード)

「友人が片目なら、私は友人を横顔から眺める」(ジュペール)

亡くなった同級生と一度だけ口論したことがある。単刀直入にものを言う男だったし、私も言い出したら聞かないところがある。その日はさすがに気まずい思いのまま別れたが、次に会ったときは何事もなかったかのように馬鹿話を始めた。ひょっとすると、彼の方が先に私を受け容れてくれたのかなと思う。

合掌。