24年前に右のアキレス腱を切った。以後それを左脚が無意識にかばうのか、左のアキレス腱が定期的に痛くなる。4週間前には山歩きの最中に左のアキレス腱が痛くなり、その後なかなか回復しない。結果として、代々木公園まで走る朝のジョギングができなくなった。

ずっとそれを残念に思っていたのだが、デングウィルスを持った蚊が代々木公園で発見され、公園の8割が閉鎖されたと聞くと、私も蚊に襲われる可能性はあったし、今無事でいられるのはアキレス腱を痛めたからかなという気がしてくる。

代々木公園
(代々木公園)

そんな話を友人にしたら、「大難が中難、小難になり、無難になったんだね」と言われた。私の母も、ラグビーで負傷した私に向かい 、「大難小難。守られているんや。これで済んで良かった」と言っていたが、そう言われると気持ちがフッと和らいだのを覚えている。

アキレス腱
(アキレス腱を切った24年前の入院)

一見、悪いことが起こったように思えても、「人間万事塞翁が馬」ということもあり得る。実際、アキレス腱を切ったときも、自分の弱さを知ることで多少は謙虚になったし、入院中から始めたストレッチが今も続いていることを思うと、プラスに転じた面があったように思う。

さて、デング熱ウィルスから私を守ってくれたアキレス腱痛だが、運動不足のせいで、この1ヶ月の間に体重が1kg増えた。これは、一見悪いことのように思えるというより、何度見返しても悪いことに違いない。お~い、アキレス腱、ぼちぼち機嫌を直してくれ(笑)
結局、私に声を掛けてくれた店員さんが商品棚まで私を案内して一緒に商品を探し、別のサイズや色も試してみたいと言うとそれらを探してフィッティングルームまで持参し、最終的には裾上げのピン留めまで私に付き合ってくれた。こういう親切な接客を予想していなかったので、ユニクロの印象が一気に良くなった。

その後もサプライズは続く。裾上げに一時間掛かると言われ、ピッタリ一時間後に商品の引渡しカウンターに戻ってきたのだが、その横にあったレジにお客さんの行列が出来るとどこからともなく店員さんがやってきて新たなレジを開ける。お客さんが瞬く間にさばかれ、行列が無くなると、いくつかレジが閉まって店員さんが消える。こういうのを臨機応変というのだろう。

更に、その光景を感心しながら見ていた私が余程手持ち無沙汰に見えたのか、一人の店員さんがやってきて、「ご用件をお伺いしていますか?」と丁寧な言葉遣いで私に聞いてきた。これにもビックリしたが、こういう目配りや心遣いはマニュアルや研修で教えられるレベルを超えているように思う。要は、一人ひとりの感受性や当事者意識、情熱が如何なく発揮されているということだろう。

ユニクロについて私があまりにも無知であっただけかも知れないが、ともかく、この日はユニクロの進化に衝撃を受け、その興奮を伝えようと取引先の方に早速思うところを話した。

ボル 「ユニクロ、凄いです」
取引先 「どうされました?」
ボル 「かくかくしかじかで・・」
取引先 「フムフム、確かに注目すべき進化ですね」
ボル 「進化の原動力は何でしょう?資金力?企画力?指導力?」
取引先 「いや、多分、宣言力、でしょう」
ボル 「宣言力?」
取引先 「はい、多分、うん、間違いない」

その方曰く、柳井社長が「売上を5兆円にする。世界一のアパレル企業にする」と宣言されたことが、社員の人たちには「実現できる」「実現してみたい」目標として自然に受け止められたのだろうとのこと。なるほど。 又、社員だけではなく、そういう宣言を聞いて共に大きく成長したいと望む取引先も出てくることだろう。そういう力が結集すると、虫眼鏡で太陽の光を集めた時のように、ものすごい熱量を持つに違いない。そう考えると、企業の成長に一番初めに必要となる力は、その未来を分かり易く言い切る「宣言力」なのかなと思えてきた。

私も進化したいなら、何か宣言した方が良さそうだ。
「誰とも違う。1ヶ月前の自分とも違う」というのはどうだろう?
3年前、ユニクロの柳井社長が「2020年に売上を5兆円にする」という目標を発表された。当時の年商は1兆円にも満たなかったので、ずいぶん思い切ったことをおっしゃるものだ、と驚いた記憶がある。しかし、その後、ユニクロは着々と拡大を続け、今年8月の決算予測では売上が1兆3700億円に達すると発表している。

この成長を牽引しているのは海外での新規出店で、中国、台湾、香港、韓国、欧州、米国、豪州と積極的な出店を重ねておられる。7月には偶然、パリでユニクロを見付けたが、工場の跡地に出来たお店らしく、中央に煙突がそびえ立っていた。そういうユニークな空間の中で、お洒落なお客さんが熱心に商品を見ていたように思う。

ユニクロパリ店

そのユニクロの渋谷店でジーンズを買ったときのことだ。目の前を通り掛かった店員さんに商品の場所を訊ねようとしたのだが、ちょうど接客中だったようで「申し訳ありません」と謝られてしまった。元よりユニクロで丁寧な接客など期待していない私は不愉快になることもなく、自分で商品を探し始めたのだが、突然、後ろから声を掛けられた。

「何をお探しですか?」

振り向くと、一人の店員さんが立っておられる。どうして?と思ったのだが、多分、先程すれ違った店員さんが別の店員さんに商品を探しているお客がいると連絡されたのだろう。まさか、ユニクロで気の利いた接客など受けられる訳がないと思っていた私にとり、この連携プレーは実に新鮮で、正直言うと驚いた。

(続く)