出口治明さんが今に伝わる名言の数々を紹介されている本だが、出口さんご自身も「名言」を記しておられる。


「国語」で考えるな。「算数」で考えろ。


一つの例として「増税論議」を挙げておられる。2019年度の収支予算だから少し古い数字になるが、構造そのものは今も大きく変わっていないからそのまま紹介する。税収は約62兆円、歳出は約99兆円、不足する37兆円は国債、すなわち借金で穴埋めされることになっている。厳しい財政事情と言わざるを得ない。



これに対し、景気が良くなれば税収は増えると主張するエコノミストがいるが、税収62兆円の内、法人税は約13兆円なので、仮に倍になって13兆円増えたとしても、不足する37兆円を穴埋めするには及ばない。だから、好景気に伴い法人税が増えるというのは国語で考えれば正しいが、算数で考えれば問題の解決にはならないということか。


又、支出99兆円の内、無駄なものを削減しようという対策は国語で考えれば正しい。しかし、削ることの困難な過去の借金返済である「国債費」と地方への補助金である「地方交付税交付金」の合計約39兆円を差し引くと税収の残りは約23兆円になってしまう。これに対し、国民の生活や医療に欠かせない社会保障費だけで約34兆円あるのだから、「算数」で考えれば、増税反対と言うだけでは解決しないということだろう。


国語ではなく算数で考え、物事を正しく理解して対策を考える・・・素晴らしい名言だと思う。

著者は出口治明さんで、「古今東西の名作・名著の中から、頭に浮かんだ僕なりの名言を紹介したもの」と説明されている。又、名言とは、時間と空間を超えて多くの人たちに「これは面白い」「これは真実だ」「これは覚えておこう」と支持され、語り継がれてきたものだから、そういう名言から学べる「人類の知恵」がある筈とも説明されている。正にその通りで、「良い言葉に出合った」と手帳に書き移したくなる名言が次々に出てきた。



その一つ、シェイクスピアの『オセロー』に出てくる名言。


「過ぎてかえらぬ不幸を悔やむのは、さらに不幸を招く近道だ。」


これは、人生は二者択一の連続なのだから、戻れぬ過去を悔やんでも時間の浪費にしかならない。又、そんな愚痴をこぼそうものなら友まで失うぞ、という意味だと説明されている。その通りだと思うが、説明の中に「これこそ名言!」と心に響く出口さんの言葉があったので紹介しておきたい。


「年を取ることは可能性を捨てて行くことです。(中略) しかし、そのことは決して悲しむべきことではないし、むしろ、歓迎すべきことだと僕は思っています。なぜなら、自分の可能性が少なくなっていくことで『現実』がよりよく見えてくるようになるからです。もっといえば、今、自分が何をすべきかがより明確になっていく。」


その通りだ。漠然と感じていたことが明文化され、スッキリした。貴重な時間だけに、迷うことなく使いたいと思う。

福井県小浜市に住んでいるM柴をラグビー仲間で訪ねた。昨年11月に続き2度目の訪問だが、今回も落ち着いた町並みを歩いているとき、子供の頃にタイムスリップしたかのように感じた。私が生まれ育った京都の町中とどこか雰囲気が似ているのだろう。



この辺りは小浜西組地域と呼ばれ、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されているらしい。M柴の家の斜め向かいに「町並み保存資料館」という大正期に建てられた建物があったので覗いてみると、更に子供の頃にタイムスリップしてしまった。


 
間口が狭く奥行きのある「鰻の寝床」と言われる家屋。京都にも見られる「鰻の寝床」だが、間口を狭くしたのは節税対策だと教わった記憶がある。


大きなお釜の蓋を開けると、薪で炊き上げたご飯から真っ白な湯気が上がる。そんな様を想像した。火の用心のお札と神棚も懐かしかった。


外からは見えない、家族だけで楽しむ中庭。鰻の寝床に新鮮な空気や明るい光を取り入れる役割も果たしていたようだ。



卒業から48年。各々の人生を歩み、髪の毛も体型も変わり、「ほら、あの子」「誰や?」「水泳でオリンピックに出たあの子や。早う思い出せ」「あほ、お前が思い出せ」みたいな会話が当たり前の老境を迎えたが、友情だけは変わらない。「町並み保存資料館」の向こうを張り、「友情保存M柴館」と名付けるか(笑)


(注)オリンピックに出た水泳選手の「あの子」は池江璃花子さんでした。あほ、早う思い出せ(笑)