バイオリンの発表会が終わった。

同級生のA山さんが約束通り聞きに来てくれた。私の出番を待つ間に「あのさ、みんな本番やと緊張し過ぎるのか大人しくなってるからさ、ボルさんは最初からガツンと行ってよ」と励まされた。なるほど、これもラグビーと似ている。最初の5分は全力で走れ、思い切り敵と当たれと言うもんね。よし、その通りやってみようと思った。


演奏は5分と少しで終わった。最初からガツンと行ったつもりだ。いくつもミスがあったけど、練習通りにできたところもたくさんあって、あぁ、練習しておいて良かった、と思いながら弾き終えた。悔しい思いもあったし、もちろん、先生のように上手には弾けないけれど、大きな解放感と達成感を味わうことができた。

そのA山さんからメールが届いた。友情から来るお世辞だろうが、褒められるのはこの歳になっても嬉しいものだ。そのまま載せる。

「チャールダッシュ、素晴らしい演奏だったと思います。細かいところはわかりませんが、今回は特別な編曲が少なかったようでした。高音がむせび泣いていました。何よりもたたずまいが素晴らしかったです。以前は浅草の大道芸人風な感じでしたが、今回はクラシック演奏者の雰囲気が漂っていました。かっこよかったです。

特別な編曲とは、楽譜通りに弾けなかったミスのことだ。上手いこと言う(笑) A山さん、ありがとう!
バイオリンの発表会が4日後に迫った。我ながら果敢な挑戦だと思うが、「チャルダーシュ」を弾く。


さまざまな感情が込められた曲で、まるで喜怒哀楽が順番に踊り出すような気配を感じるが、だからこそ多くの演奏家がその人にしか表現できないチャルダーシュを弾いておられるのだろう。

そうと分かればしめたもの、今年も発表会に来てくれる同級生のA山さんに、「演奏家によりいろんなチャルダーシュがあるんや。せやから、僕だけのチャルダーシュにするわ」と話したら、「ま、ええけどさ、ぜひ原曲は留めてくれる? チャルダーシュやと分かる範囲の編曲にしといてね」と釘を刺された。

それから1ヶ月、朝の練習に夜の練習を加え、ラグビー合宿のような2部練習に切り換えたが、さて、成果の程は如何?
9月に亡くなられたオペラ歌手、佐藤しのぶさんの「お別れの会」のご案内を頂き、今日、参列してきた。正面にたくさんの花に囲まれた佐藤しのぶさんの遺影があり、あぁ、本当に亡くなられたんだと思った。


たまたま同じ勉強会で知り合い、その後は都内で催されたコンサートには必ずお邪魔するようにしていたが、美しく伸びやかな声に豊かな愛情や優しいお人柄が感じられ、いつも温かな気持ちにさせて頂いた。客席には涙を拭っておられる方も見受けられたから、多くの人に感動を与えてこられたのだろう。

お別れの会では、ご主人で指揮者の現田茂夫さんが「久しぶりにしのぶちゃんにラブレターを書いて来ました」と挨拶され、メッセージを読まれたが、家庭でも優しく頼りになる妻であり母であった佐藤しのぶさんを偲ばせる内容で目頭が熱くなった。

合掌