勉強会に出席した。引退された方が多いが、ジャーナリスト、外交官、公務員、商社マン、大学教授、企業経営者・・と様々な分野で活躍された方々が揃い、毎回、興味深いお話を聞くことができる。

会員の中に元フルブライト留学生がおられる。イリノイ大学院に学び、帰国後はジャーナリストとして活躍。小説家、企業経営者という顔もお持ちという多才な方だ。私より二回り年上だから、悠に80才を超えておられるが、一昨年、プロの落語家に弟子入りして皆を驚かされた。


既に何度か高座にも上がっておられるから大したものだが、今回の勉強会でも見事なオチを披露され、拍手喝采となった。きっかけは私の発言だ。「トヨタ自動車は裾野市の工場跡地にスマートシティを作ります。この変身は見事です。車ではなく街を作るんですから。これに対し、日産は大丈夫ですかね? どうするんですかね?」

「そんなの簡単だよ。音響資材を入れる箱をたくさん作れば良いんだ」(爆笑と拍手) おあとがよろしいようで。
日産の次はトヨタ自動車だ。今年の12月末に閉鎖される裾野市の東富士工場の跡地に、人とあらゆるものをインターネットでつなぐという新しい街を作るのだとか。2000名が実際に暮らすということだから、いろんな試みや実験を繰返し、未来の街を模索するのだろうか。トヨタは自動車メーカーだと思っていたが、街まで作るとは・・。

ニュースが伝えるところでは、カナダのトロント市が同じような試みをしようと、グーグルと準備を進めてきたらしい。ところが、地元住民がプライバシー侵害の恐れありと反対運動を起こし、事業が縮小されたらしい。その直後にトヨタの豊田社長がこの計画を発表されているし、中心になって事業を進める子会社のCEOカフナー氏はグーグルに居られたようだから、トヨタは用意周到に準備し、絶妙のタイミングで発表したということか。

又、この街は「Woven City」と名付けられているらしいが、直訳すれば「織り込まれた街」になるのだろうか。インターネットが人とあらゆるものを縦横に結ぶという意味では良くできた名前だが、トヨタの発祥が豊田自動織機であることを思うと、変身は重ね続けるが原点は忘れず、と説明できるから、なかなかの命名だと思う。

こちらの騒がしさは、映画の予告編を見せられたようで、ちょっとワクワクする。トロント市のように、心配の声や問題の指摘も出てくるのだろうが、変化のエネルギーを感じさせる話だ。
カルロス・ゴーンさんの逃亡にも驚いた。


以前、プレイリーという日産の車に乗っていたことがある。たまたまエンジンの調子が悪くて近くのショールームを訪れたら、ちゃんと話を聞いてもらえず、買い替え時期でしょう、という素っ気ない対応を受けた。大事に乗っていた車だったので、その対応に失望し、2度と日産の車には乗らないと決めた。

そんな経験から、日産には関心がなくなり、業績が悪いのも当然だろう位に考えていたから、ゴーンさんがやって来て日産を立て直したことには正直驚いた。凄まじいコストカットがあったのだろうが、出ていくお金を抑えても入ってくるお金が増えないと業績は良くならない。すなわち、日産が甦ったのは売れる車が出てきたからだし、ゴーンさんがそういう力を日産から引き出したのだと思う。

そういうゴーンさんには、是非、日本の法廷で思う存分主張し、戦って欲しいと願っていたが、経営哲学のみならず人生哲学も一般の日本人とは異なるものをお持ちだったということか。平穏な人生を歩んできた私だから偉そうには言えないが、何か試合放棄のような後味の悪さを感じている。

一方の日産だが、これからどうなるんだろう。自動車業界も二極化が進み、稀少価値のある高級車メーカーと、大量生産される大衆車メーカーに分かれてきたように見える。そういう意味では、日産は大衆車メーカーだと思うし、量産によるコストダウンや開発費をシェアできる同業との合併やグループ化を考えるのは当然のように思う。

個人も法人も、決断し行動したことがその後の人生や歴史を作っていくのだと思うから、裁判の結果なんかより両者の今後に興味がある。