黒川伊保子さんという人工知能や脳科学の研究者が書かれた「妻のトリセツ」を読んだ。トリセツとは「取扱説明書」のことで、本の帯には「理不尽な妻との上手な付き合い方」、「妻は納得。夫は感謝!」、「35万部突破!」の文字が踊る。2018年10月に第1刷、2019年4月に第24刷発行とあるから、相当話題になり、売れた本なのだろう。



結論から言うと、「もっと早くに読んでいれば悩んだり失敗せずに済んだのに・・・」かなと一瞬思ったが、いやいや、いろんな場面で悩んだり失敗してきた今だから良~く理解できたのかな、と思うに至った。例えば、「名もなき家事が妻を追い詰めている」は、妻と日用品の買い出しに出掛けたり家事を手伝い始めて最近やっと分かったように思うし、心さえ肯定しておけば相反する選択をしても女性はOKという「心と事実、女の会話は2回線」は散々失敗してきた今の方が良く分かるように思う。

 

それでも尚、「夫が気付かない妻を絶望させるセリフ」は大いに参考になるし、「ちょっと手間のかかる夫が実は愛おしい」などと書いてあると、それで助かったこともあったんだろうなと気付かせてくれる。ただ、最後に書かれていることは非常にシビアで、心の支えとして第1位に妻を挙げる夫が全体の79%いるのに対し、妻の側は65%が第1位に子供を挙げている。男性脳や女性脳の違いがあったにせよ、これは男性として情けないことのように思う。

 

私が妻から高得点をもらえる優良な夫だったとはとても思えないが、妻が「ありがとう」と言ってくれる仕事がいつくかある。窓や網戸の掃除、風呂場の掃除、昔は玄関、今はベランダの掃除。たまたま私の担当になった掃除だと思ってきたが、妻はそこにオトコの力技と拘りを見たのかも知れない。相手が「助かった」と言ってくれることを探して実行する。それを互いに「ありがとう」と感謝し合う。昔から取扱説明書を読むのが苦手な私だから、サービス精神と感謝の気持ちで点数を稼いでみようと思う。

長年、同志社混声合唱団〈東京〉のピアノ伴奏をして下さっていた朴 令鈴(ぱくりんりん)さんがリヒャルト・シュトラウス作品集というCDを出しておられることを知り、購入した。最初に演奏されているのは歌劇「サロメ」に出てくる「七つのヴェールの踊り」だ。


解説を読むと、リヒャルト・シュトラウスは15本以上のオペラを書いているが、「サロメ」は3本目の作品で大ヒットしたものだとか。元になっているのはオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」で、次のような物語だ。

ユダヤの領主ヘロデが宴席で義娘サロメに踊りを所望する。望みのものを何でもやると言われたサロメは身に付けた7枚のヴェールを一枚ずつ剥ぎながら踊り、幽閉されていた預言者ヨハナーンの首を望む。やがて、銀の盆に載せられて出てきた生首に接吻するサロメ、その姿に狂気を覚えたヘロデがサロメを殺せと命じる。

そういう物語だと分かった上でりんりんさんの演奏を聴くと、サロメが見る人たちを少し焦らすように妖艶に踊って楽しませ、ヨハナーンの首が出てくるときには人々の恐怖や不安、緊張感が最高潮に達するのが分かる。そして、演奏は呆気なく終わってしまうが、それが幕の下りる瞬間なのだろう。

こんなに素晴らしい演奏をされるプロのピアニストが、昨年のクリスマスパーティーでは私の下手なバイオリンの伴奏をしてくださったのかと思うと、本当に申し訳なく、又、光栄に思う。りんりんさん、有難うございました!
昨日出社したら、「いよいよ東京がロックダウンされるらしい」と聞かされた。複数の友人が数日前からそんな事を言っていたから、いよいよかと覚悟を決めた。

午後4時になると、「6時から安部首相が記者会見をやるらしい」という情報、5時になると、「小池都知事が8時から何やら発表するらしい」との情報が流れ、テレワークの準備を始める人が増えてきた。

「ボルさんはどうするの?」とロックダウン前提で尋ねられ、「明日は出社しますが、明後日からはテレワークにします」とロックダウン前提で私も答えていたから、私もロックダウンになることを疑わず、そのときの関心は安部首相や小池都知事がどのように宣告されるのかに移っていたように思う。

(東大キャンパスも立ち入り禁止に)

が、結局、ロックダウンの発表はなく、これまで繰り返されてきた「密を避ける」に具体的な例を示し、少しだけ踏み込んだ形のものに留まった。だから、ロックダウンはいわゆる「ガセネタ」だった訳だが、この「ガセ」の語源は「お騒がせ」の「がせ」から来ているらしい。なるほど、お騒がせな情報だったに違いないが、少しずつでも私たちに覚悟をうながす効果はあったろうから、「うながす」の「がす」から「ガスネタ」ということにしようと思う。