同志社混声合唱団の練習再開が決まった頃、長らくピアニストを務めて下さっていた朴令鈴からコンサートのご案内を頂いた。3名のオペラ歌手と令鈴さんのピアノでオペラ「リゴレット」から「女心の歌」、「ファウスト」から「宝石の歌」、「ドン・ジョヴァンニ」から「お手をどうぞ」、「カルメン」から「闘牛士の歌」や「喧嘩の二重奏」を演奏されるとある。時節柄、コンサートそのものがソーシャル・ディスタンスへの挑戦だが、物語に登場するドン・ジョバンニと女性たちや、カルメンを巡って喧嘩する男二人にとってもソーシャル・ディスタンスへの挑戦が求められる。着眼点が面白いし、何より、令鈴さんには下手なバイオリンの伴奏をして頂いた借りがある。直ぐに同級生のA山さんを誘い、チケットを2枚申し込んだ。
会場のムジカーザは小さなホールだったが、入場者を制限されたのか、非常にゆったりした席の配置になっていた。観客はマスク着用が求められ、ステージの直ぐ前2列の観客にはフェイスシールドも配られるなど三密への対策もきちんと行われていた。又、ステージには透明のパーテーションが置かれ、「お手をどうぞ」や「喧嘩の二重唱」では男女間の壁として使われるなど、三密対策にかこつけて様々な人間関係を表現するという、なかなか心憎い演出だったように思う。
演奏された曲はオペラに詳しくない私でも知っている有名な曲ばかりだし、そういう意味で、肩肘張らずにリラックスして楽しめるコンサートだった。又、オペラ歌手の歌声を間近に聞く機会などないから、その声量の豊かさには驚いた。特にテノールの樋口達哉さんの歌声には私の回りの空気が振動しているのを感じた。
どの曲も素晴らしかったが、令鈴さんがピアノで弾かれた P.マスカーニ作曲「カヴァレリア・ルスティカーナ」の「間奏曲」が特に良かった。物語は恋人がいるのに人妻に恋をしてしまった男性がその夫から申し込まれた決闘で殺されるという、実際にイタリア・シチリア島で起きた実話が元になっているとのこと。そんな激しい内容にも拘わらず、「間奏曲」は実に美しい調べで、心が癒された。この間奏曲があったから、この物語は今日まで語り継がれて来たのかなと思った。
緊急事態宣言の発令以来、自粛していた音楽活動だが、バイオリンは6月から再びレッスンに通い始め、現在、10月の発表会に向け練習中。
一方、所属する3つの合唱団は練習再開の目処が立たないまま夏を迎えたが、合唱は三密の最たるものだし、致し方なかったと思う。ただ、「メサイア全曲」を歌う予定だった11月の同志社混声合唱団のコンサートが延期と決まった際はがっくり肩を落とした。
しかし、その後も新型コロナウィルスは終息しそうにないし、それでも私たちはこの社会で生きていかねばならないから、どこかでコロナウィルスとも共存、共生していくことを覚悟すべきではないか。そんな声が同志社混声合唱団から出始め、何度か話し合いが行われた結果、最終的には8月22日から練習が再開されることとなった。
但し、参加者は団員の1/6に当たる13名程度に限定され、練習時間も半分に短縮することで交代制とした。更には歌うときもマスク着用が条件で、練習後のお喋りや飲食も禁止という規制だらけの練習となった。それでも、久し振りに声を出して歌い、ときどきはキレイになるハーモニーに苦笑いしながら、楽しいひとときを過ごすことができた。歌は身体が楽器と言われるが、出番を得た身体が喜んでいるのが良く分かった。


