明日は休みだ。 仕事もない。
早起きなんかしなくてもイイ!
そんなシェイクでブギーな胸騒ぎを感じながら、一人で飲みに行く。
飲み屋に行く前に、飲みながら読む本を古本屋で探す。
50円だったので、「新ゴーマニズム宣言」 を買う。
僕は 「ゴーマニズム宣言」 を一度も読んだことがないので、試しに買ってみた。
飲み屋に着き、カウンター席でビールを飲みながら 「新ゴーマニズム宣言」 を読み出すと、隣に座っていたオジサンに話し掛けられた。
話しを聞いていると、どうやら明日は浅草に 「神社巡りツアー」 に行くらしい。
更に話しを聞いてみる。
分かった事・・・
① 63歳、既婚者。 早稲田大学卒。 現在、東京モード学園で政経を教える臨時講師。 元商社マン。
② 奥さんは56歳。 オジサンが31歳の時に結婚。 姻戚関係。 お互いの親が義兄弟。 息子が二人、29歳と26歳。
③ 父は満州鉄道のエンジニア。 1946年7月7日、日本に帰還。 現在93歳、存命。
④ 高校、大学と久米宏の一年後輩。 久米宏は高校時代、卓球部だったとか。 大学の同級には吉永小百合がいたが、吉永小百合は夜間学級だったため会えず。 見に行ったが会えず。
⑤ 自論・・・女を選ぶポイントは 「容姿」 「知識」 「個性」 「相性」 の4点に分けられる。
オジサンにとって 「容姿」 という点で言えば、高校大学の同級生 『吉田さん』
吉田さんとは大学時代に演劇の舞台で “抱擁シーン” を演じた経験有り。 数年前に再会した際、吉田さんは 「バツイチ」 だったらしい。
「知識」 という点で言えば、なんと言っても高校の同級生 『麻生さん』
彼女の父親は、勲二等も受けた元防衛庁研究所所長。 麻生茂氏。
彼女自身、同級生の女子から唯一人、東大へ進学。
その後、学者と結婚するが、49歳の若さで急逝。
オジサンは当時、学歴の違いと、彼女の父親への畏怖から、身をわきまえて諦めたと言う・・・。
「個性」 という点では、大学の同級生 『トミちゃん』 だ。
彼女はとても可愛らしかったが、なにせ “馬鹿” だった為(とはいえ早大生だが) 「自分とは吊り合わない」 と思ったらしい。
数年前に再会した際にはトミちゃんもまた 「バツイチ」 だったらしい・・・。
そして、「なんだかんだ言って相性だ」 とオジサンは言った。
僕は、「そうですね」 と答え、「じゃあ、やっぱり奥様が相性が一番良かったんですね?」 と聞いた。
答えは 「 NO 」
「相性」 が一番だったのは、 『鈴木さん』 らしい。
数年前に再会した際に、「バツイチ」 ではなかったので、「やっぱり鈴木さんだな」 と思ったらしい。
「奥様は?」 と聞くと、 「アレは馬鹿だ」 と答えた。
しかし、その言葉には愛が溢れていたように僕には聞こえた。
オジサンは僕の耳元に近づくと、 「No.2が吉永小百合だ」 とボソっと言った。
「え? じゃあ、奥様が一番ですか?」 と僕は聞き返した。
オジサンは「またまた~」といった感じで笑いながら僕の肩を小突くと、さらに小さな声で 「No.3だ」 と言った。
「じゃあ、一番は?」 何故か僕も小さな声で聞いた。
飲み屋のカウンターで、35歳も年の離れた僕とオジサンが肩を合わせて密談していた。
「どうしても聞きたいか?」 オジサンが言った。
「え・・? ええ、まあ・・・。」 僕が答えた。
「No.1は・・・・・、 “竹下恵子” だ」
「キ・・、キレイですもんね・・・」
その後、オジサンは 「“キレイ” ってだけじゃないんだよ! 竹下恵子の魅力は~・・・」 とウダウダ話し出したが、脈絡が無さ過ぎてついて行けないので、酔っ払っていた僕は軽く流した。
この一連の流れの話しを繰り返し10回くらい聞いていると、いつの間にか11時を過ぎていた。
オジサンは明日、「浅草神社巡りツアー」 なので6時半起きだ。
「もう帰った方がイイっすよ」 と言って、お開きにした。
お店の人に会計を頼むと、
オジサン・・・・¥1350
僕・・・・¥3350
「ええっぇ・・・!!?」
どうやら、途中からオジサンの注文も僕に付けられていたようだ。
オジサンも、「コレはおかしい、間違っているな」 と言う。
「じゃあ、オジサン、千円ください」 と僕は言った。
すると、オジサンは、
「イヤ、そんな金は無い。 オレは知らない。」
と言い切った。
「えええっっ・・・!!?」
しかし僕は、それがあまりにも可笑しかったので、 「じゃあ、いいっす」 と言って多く払った。
そして、 「じゃあ、もし次に会ったらオジサンのオゴリで」 と約束してオジサンと別れた。
一人で飲みに行く楽しみがまた一つ増えた素晴らしい夜だった。
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