早いもので、もうクリスマスである。
今年はどんな映画の記事にしようかと、月曜日から考え始めていた。
去年はラブロマンス物の映画「トーマス・クラウン・アフェアー」だった。
「トーマス・クラウン・アフェアー」は1999年製作、ジョン・マクティアナン監督のアメリカ映画で、主演はピアース・ブロスナンとレネ・ルッソである。
録画のストックを確認していたら、この作品にな~んとなくピンと来るものがあった。
映画「ターミナル」は2004年製作、スティーブン・スピルバーグ監督のアメリカ映画である。
主演はトム・ハンクス、共演女優は、キャサリン・ゼタ=ジョーンズである。
スピルバーグ監督でトム・ハンクス主演だったらハズレ作品ではないというのは想定通りで、
観ながら思い出されたのがやはりトム・ハンクス主演の映画「キャスト・アウェイ」だった。
ということで今年のクリスマスは、「キャスト・アウェイ」との比較を交えながら「ターミナル」を紹介したい。
【ストーリー】
ニューヨークJFK国際空港に降り立った東欧のクラコウジア人、ビクター・ナボルスキー。
彼の祖国はクーデターによって事実上消滅し、パスポートも無効になってしまったため、帰国することも、アメリカに入国することも禁止されてしまう。
行き場を失い、宛のない空港ターミナルでの生活を始めるが、
彼はかけがえのない、果たすべきひとつの約束を抱えていた。※上記バナーの Amazon 商品サイトより引用
▼映画「ターミナル」予告編
---以下、ネタバレ注意!---
トム・ハンクス演じる主人公・ビクターは東欧のクラコウジアという国からやって来たのだが、移動中にクラコウジアでクーデターが起こった為にパスポートが無効になってしまう。
アメリカに入国はできないが、かといってクーデターの真っ最中であるクラコウジアに帰れる便がある筈もない。
税関で足止めされたビクターは状況を説明されて、乗り継ぎロビーで待機することになる。
状況の説明はされたが英語がわからないビクターがロビーで呆然としていると、テレビでクラコウジアのクーデターのニュースが流れて事態を理解する。
しかし、事態を理解しても状況が変わるわけではない。
自分の国を出てみると、母国が大事、言葉が大事ということがよくわかる。
中盤までのところは、ビクターの正直な人柄を描くことに重きが置かれているようであった。
このビクターの正直な人柄が、空港で働く人々との様々な交流を生んでいく。
トム・ハンクスの演技も良いが、この辺の脚本の作りもなかなか上手い。
ここでのもう一つのポイントは、ビクターにはどうしてもニューヨークに行きたい理由があったので、ロビーでの生活を諦めなかったことである。
改装中のエリアに寝床を見つけて、放置されているカートを集めて回収機から出てくる小銭を集め、本屋で買った本で英語を学び、ロビーの工事の仕事にありつくのである。
この間に、税関管理職のディクソンはクラコウジアへ戻るのが怖い理由を訴えて移民の申請をすれば入国できると提案するが、ビクターは「祖国は怖くない」と言って正当に入国することにこだわった。
そして、フードサービス担当のクルズ、掃除スタッフのグプタ、貨物担当のジョー達と親しくなっていく。
また、ロシア人の男性が無許可の薬物を持ち込もうとしたトラブルで通訳を頼まれると、機転を利かせた親身な対応で事態を収めて、ロビーで働く人たちにも知られることになった。
中盤からのキャビンアテンダントのアメリアと親しくなっていく展開も含めて、出来すぎではあるが不自然さを感じさせない上手さがあった。
この後、ビクターはアメリアがフライトに出ている間に準備をして、戻ってきたアメリアをディナーに誘う。
そして、ビクターとアメリアが食事をしている場面で、アメリアのポケベルに不倫相手からの連絡がくる。
アメリアは7年越しの不倫で自分はいつも連絡を待ってばかりだと言うのだった。
ビクターはここで、自分が67番ゲートで住んでいることを明かし、呼ぶまで待てと言われて待っていると言ってポケベルを見せる。
アメリアは「いい考えがある」と言ってビクターをテラスに誘い、二人はポケベルを投げ捨てた。
アメリアの心の動きが唐突な印象だったが、これまで鬱積していたものの大きさを意味しているということであるようにも思われた。
そして終盤である。
アメリアが次のフライトから戻ってくるのを、ビクターはプレゼントを用意して待っていたが、アメリアはゲートに現れなかった。
その頃、アメリアは税関管理職のディクソンに呼び出されてビクターとの関係について訊かれていた。
ビクターが67番ゲートで住んでいるという話を信じていなかったアメリアは、ここでようやくビクターが言っていたことが本当だったことを知る。
ビクターのところを訪れたアメリアは、そこでビクターがニューヨークに来た目的を聞くのだった。
それは父親が生前に貰えなかった、ジャズクラブの演奏家であるベニー・ゴルソンのサインを自分が代わりに貰うという約束を果たすためだった。
ここから事態は急展開していく。
程なくして、クラコウジアで反乱軍が降伏してクーデターが終わったというニュースが入る。
アメリアは別れた不倫相手とヨリを戻し、その男のツテで手に入れた一日だけ有効の緊急用のビザをビクターに渡した。
そして、アメリアは運命だと言って不倫相手の男と去っていった。
ビクターが一日だけ有効のビザで出国しようとすると、税関管理職であるディクソンのサインが必要だという。
ここから終幕までの約10分のドラマは圧巻であった。
帰国せずにニューヨークに行くと言うビクターにディクソンは、ロビーで知り合った仲間たちを解雇できるネタをつかんでいることを明かして、帰国しなければ彼らは解雇されるだろうと告げる。
ニューヨークに行かず帰国するという話はロビーのスタッフにすぐに広まり、ロビーには激震が走る。
そして、ディクソンとのやり取りの場面に同席していた警備員から、ビクターが帰国することにした本当の理由が仲間たちに伝わる。
仲間たちの無茶な行動によってビクターは、なんとか出国ゲートを出ることができた。
すると、ちょうど空港に戻ってきたアメリアがタクシーから降りたところでビクターと目が合った。
視線を合わせながら頷き合う二人、そこに言葉はなかった。
追いかけてきたディクソンが出国ゲートに着いた頃には、ビクターの乗ったタクシーはもう見えなくなっていた。
ディクソンはもうビクターを追わせようとはしなかった。
ビクターはジャズクラブでベニー・ゴルソンのサインを貰い、帰りのタクシーに乗った。
最後のセリフは、
「もうウチに帰る。」(I am going home. )
だった。
90日に及んだ空港のロビー暮らしを10分で総決算する結末に、胸を打つ人情話の余韻が残る作品であった。
皆さまにも、幸運と待ち人が訪れますように。
ということで、ここからは「キャスト・アウェイ」との比較を交えながらこの作品を振り返ってみたい。
みたいのであるが、いつものことながら長くなったので明日の記事に続く。