映画「私の頭の中の消しゴム」 | 日々是本日

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bookudakoji の本ブログ

 映画「私の頭の中の消しゴム」は2004年製作の韓国映画である。

 

 公開当時、日本でもかなりヒットした記憶がある。

 

 監督は、主演はソン・イェジンとチョン・ウソン。

 

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【ストーリー】
建設会社の社長令嬢のスジンは、天真爛漫なお嬢様。建築家志望のチョルスとコンビニで運命的な出会いをし、二人はすぐに恋におちてしまった。
温かい家族に囲まれて育ったスジンと違い、チョルスは孤独に生きてきた男だったが、スジンの献身的な愛に結婚することを決意。
二人は晴れて新婚生活を迎える。建築士の試験にも受かり、幸せいっぱいの二人だった。
しかし、スジンはある時から、物忘れがひどくなり、自分の家への道順すら忘れてしまうようになった。
病院で、スジンは若年性アルツハイマー症だと診断される・・・。

 

※上記バナーの Amazon 商品サイトより引用

 

 テレビ放送の録画で再見したのだが、観直したてみて思ったのは、ラブストーリーの周辺にあるヒューマンドラマの部分だった。

 

 基本的にはラブストーリーであり、この部分の作りはあまり日本人的ではないと感じたが、ヒューマンドラマの部分については今の日本映画にはないものがあった気がした。

 

 以下、この点を中心に感想を述べる。

 

 

---以下、ネタバレ注意!---

 


 主人公の女性スジンは若年性アルツハイマー症を患う。

 

 それ故に、人生における記憶の意味とは何かということが問われることになるが、ラブストーリーであることで、これは漠然とした問いかけではなく、近しい人間関係においての問いかけとなる。


 また、記憶の錯誤によってスジンの行動は一貫性がなくなっていくが、このエピソードからは人間の心の真実とは何か、という問いかけが伝わってきた。


 物語の終盤で夫のチョルスは、二人が初めて出会ったコンビニにスジンを連れていく。

 

 そこでスジンは自分と近しい人々の温かい眼差しに感動する。

 

 とはいえ、施設に戻ればまた今日の事も忘れてしまうのであり、恐らくそのまま最後を迎えるであろうという事実は変わらない。
 

 それなのに、治ったことに感動するのではなく、最後にもう一度、親しかった人たちを思い出せたところにカタルシスがあった。
 

 なぜだろうか。

 

 この作品では、ヒューマンドラマとしての部分で「人を許すということの大切さ」を描いていた。

 

 ラブストーリーを若年性アルツハイマー症の関連エピソードだけで描くこともできたはずである。

 

 なぜだろうか。

 

 それは、この作品が人生の納得感というものを問うているからだと思う。

 

 つまり、人生は何があるかわからない、若くしてアルツハイマー症を患うこともあるのだから、誰かを恨み続けながら生き続けてしまうよりも、早いうちに許して自分の人生として納得感のある人生をおくる方がいい、こういうことだ。

 

 このことは、「人を許す」ということに限ったことではない。

 

 突然降りかかってきた不幸、災難、未だに影響を及ばし続けている過去の出来事、自分を振り回しつづける現在の出来事、こうしたことも皆同じである。

 

 こうしたことの影響から早く脱して、納得感のある人生をおくるように生きること、これがヒューマンドラマの部分の核心的なメッセージであると感じた。

 

 

 尚、その他の関連作品を確認したところ日本版連続ドラマとしてリメイクされていた。

 

 2001年製作、主演は永作博美、緒形直人である。

 

 こちらについても、いずれ触れる機会があればと思っている。

 

 

 

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