映画「マッチポイント」(原題:Match Point)は2005年イギリス製作、ウッディ・アレン監督/脚本のラブ・サスペンス作品である。
出演は、ジョナサン・リース=マイヤーズとスカーレット・ヨハンソン。
元プロテニス・プレイヤーのクリスは貧しい家庭の出身だったが、テニスコーチとしてロンドンの上流家庭と親交を深めて、そこの娘と結婚する。
基本的には、結婚後に浮気した相手が妊娠して結婚を迫られるという不倫話である。
冒頭でテニスコートのネットを挟んでいったりきたりするボールを映しながら、こういうセリフが流れる。
テニスの試合でもボールがネットの上に当たり、
その後、どちらのサイドに落ちるかはまさしく運だ。
運よく相手側に落ちれば自分の勝ち、
こちらに落ちれば負けだ。
運不運があるのも当然だし、人生がそれに左右されることも往々にしてあることだ。
だからテーマは、人生が運不運に左右されるという前提でどう生きていくかということである。
このテーマについてのウッディ・アレン監督の一つの答えがこの作品の肝である。
脚本も担当しているウッディ・アレンはこの作品で、2006年のアカデミー賞脚本賞にノミネートされた。
不倫相手にスカーレット・ヨハンソンというキャスティングは、映画.com サイトにこんな記事があるくらいだからなかなか絶妙だったということだろう。
この作品が製作された2005年当時21歳である。
スカーレット・ヨハンソンが印象的だった出演作品を観ていたはずだと思って確認したところ、「真珠の耳飾りの少女」(2003年)だった。
魔性だ!
この作品の原作小説を書いた作家トレイシー・シュヴァリエの記事はこちら。
---以下、ネタばれあり注意---
さて、そろそろ本題のネタばれありの感想に入ろう。
話は無駄のない展開と描写で進み、ストーリーテラーとしてツボを心得ている感じである。
そして運に翻弄される人生の現実をじわじわ描くのがウッディ・アレン監督らしく感じられた。
浮気相手を殺し、偽装のために婆さんまで殺した主人公。
偽装のためについでに殺した婆さんの指輪を川に投げるシーンでは、指輪は柵に当たって手前に落ちた。
運は悪かった。
しかし、浮気相手の殺人現場付近で殺された麻薬中毒者がこの指輪を拾って持っていたために、浮気相手の殺人についての警察の見解は、この麻薬中毒者の犯行ということになった。
起死回生の逆転なのだろうか。
殺人犯として逮捕されなかったことを勝ちと言えなくもないだろうが、この主人公は自分の犯した殺人の罪悪感を生涯背負っていくことはできないだろうと予感させる。
運と背中合わせの勝負の世界に生きる人々がしばしば、
「勝って得るもの少なし。」
と言っているのが思い出された。